第3話 王様、牢の中


 連れてこられた先はこれまたよくわからない建造物だった。


「ついてこい。」


 中に入り、


「所持品を全てだせ。」


「お主、本当に俺が誰かわからないのか?」


「いいから早く出せ!!!」


 と男が怒鳴る。いかにも屈強そうな、美男子だ。しかも、ナルシストが入ってそうだ。うむ、ただの偏見だが。


「ひっ、、、。出します!だしますぅぅ〜〜。」


 と情けない声。もちろん声の主は俺だ。


(隙を見て逃げよう。うん。ここにいてはいけないやつだ。なんとなくだが。)


 俺は身につけている鎧やら、王冠とにかく全てを剥いでいく。


「よくもまぁこれだけ凝ったコスプレをするもんだな。」


 また"コスプレ"とやらがでてきた。疑問は口に出ていたようだ。



「コスプレってなんじゃ?」


 もはや俺のキャラはぶれぶれだ。


「お前みたいな格好の奴のことだよ。」


 さっぱりわからん。新しい文化なのだろう。というか、答えてくれるんだ。今ならいけるかも、、、。


「はっ。」


 と、掛け声と共に鞘で男を狙う。そう、男の急所めがけてだ。


 ボンッ。


(よっしゃ。当たった。)


「ぎゃっ、っ〜〜〜〜う。」


 声にならない声を出し、股間を押さえている。


「ぶはっ!ひひひ、はーっはっは!」


 あかん、思わずふきだしてもた。だって、あのだっさい男の姿。自分以外のイケメンなんぞ滅びろ!クズで結構!クズ最高!!まぁ、なにはともあれ今のうちに逃げるぞ!


「〜〜〜〜〜♪」


 軽く口ずさみながら俺は駆けていく。


 ——そんなに上手く行くはずはなかった。


 扉を開けたところには男が2人、女が1人。


「我に力を。インストーム・メア!」


 と手を振りかざす。すまんが、手荒に行くぞ。


 ・・・。


 ってまたかい!?何も起こらん!


「い〜〜やぁ〜だーー!!」


 俺はまたグルグルに体に縄を巻きつけられ元の部屋に戻されるのだった。クソ、魔法さえ使えればこんな奴ら。


 先ほどの警官がものすごい形相でこちらを見据えていた。


 ゾクリ。背筋が凍る。


「いやぁ!すいませんでした!これをやるんでまぁ収めてくださいよ旦那ぁ。」


 と、俺はユイの上半身裸の写真を出す。俺の秘蔵写真、男ならば誰もが欲しがるだろう。


 チラリ。男が食いついた。


(こいつ変態だな。)


 と、冷めた視線を送ってやる。自分の事を棚に上げるのは得意中の得意だ。


 写真を手に取り、


「コスプレ少女の写真まで盗撮とは、どれだけ余罪があるんだ。来い!」


 などと言いながら、ちゃっかり胸ポケットにしまいよったぞコイツ!!


「お、おい。受け取ったんだから許せよな、、、。」


 容赦なく連れて行かれた先は牢の中だった。


(アイツの事は今後むっつり変態と呼んでやろう。)


 牢の中に入る前に着ているもの全てを脱がされ、変な着物を着せられた。ジャージというらしい。全て見たことないものばかりだ。


 女が近づいてくる。おんな、女。女、女、おんなぁ!!


 女に飢えていた。チヤホヤされたい。モテたい。触りたい。


「おい、お前、近くに寄れ。」


「・・・。」


「おまえだよ、お前。悪いようにはしないぞ。」


 まるで悪役だ。


「聞こえてるわ、気色悪い。変態。」


 変態はお前の仲間だろうが。などと思いつつ変だと思う。この町の女は皆俺になびかない。なぜだ?とある仮説が思い付く。


「無駄口たたいてると刑期が伸びるわよ。」


「心配してくれるんだね。君、優しいね。」


 キリッ。


「ちっ。くたばれや。」


 ん?なんか舌打ち聞こえた?気のせいだろう。このゴミを見るような目も気のせいだろう。


 何事もなかったかのように俺は用を足す。

 ジャーーーッ。ブリッブリブリッ。


 女が振り返る。見るのはマナー違反であろうが。


 女はガン見していた。そう、俺の下半身、そして床を。


「きゃーーーーーっ、高成さん!高成さーん!!」


 と叫び、むっつり変態がやってくる。


「何だよ、むっつり変態。」


 ムッと少し顔をしかめるが、


「何をしている。」


「みりゃわかんだろ。お○○○とおな○だろ。」


 ………。沈黙、、、。なに?変なことしたか?隠れる草木がねぇんだから仕方ねーだろ。


「トイレがあるだろ。」


 トイレ?また新しい言葉。うんざりしてきた。


 何はともあれ、ある可能性を考え始めていた。そう、俺はどこか異空間に飛ばされたのではないか?と。あの聞いたこともない魔法詠唱によって。


 さもなければ説明がつかない。こんな状況は。


 必ず突き止めてやる。俺をこんな目に合わせた奴を。


 ……、取り合えず冷めた飯とピンクと緑、白の謎の団子でも食おう。


その前に服を着て。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る