第19話 姫騎士の更なる地獄

 晒したエルサリアの肉体に、ハモリトが手を叩いて褒めたたえる。

 白い肌の中で綺麗なピンク色に染まった割れ目に顔を寄せて、ハモリトは犬のように匂いを嗅いで満面の笑みを浮かべた。


「なんておいしそうぅ……この身体でヤリたいことが多すぎてたまらなイイ!」


 姫でありながらも自らも騎士として戦いに身を投じることもあったエルサリアだが、その肌には傷一つなく、それでいて無駄な筋肉があるわけではなく女性特有の柔らかさを感じさせる肌や胸、そして誰も侵略したことのないものである。

 それを目の当たりにしただけで、ハモリトは涎と興奮が止まらない。


「姫様が初めて身体を晒した相手が僕ということもあるからあ、お返しに僕もお見せてあげるよお」

「ッ!」

「これが僕の身体だよお。今日から四六時中、姫様と一つになるんだよぉ~」


 身に纏っていた衣服を素早く脱ぎ、己の汚く、そして太った醜い身体を嬉々として見せるハモリト。

 最低限の性的な知識はあるものの、実際の経験も皆無のエルサリアにとって、それは悍ましい物体にほかならず、思わず嗚咽と吐き気が沸き起こってきた。


「い、や……いやああ、あ、いや、いやああああ!」

「むはははは、逃がさなあい! 照れなくてもいいよお」


 耐え切れずに泣き叫びながら床を這って逃げようとするエルサリアの足を掴み、広げた。


「な、いやあ、なに、離して! 何だこれは! こんな態勢いやあ! 離せ! 離せええ!」


 ジタバタと暴れるエルサリアを抑えつけるハモリト。

 悍ましくて、悪寒がして、そして恥辱の極みともいうべき態勢を強いられたエルサリアが暴れるも逃げられない。

 そんなエルサリアにハモリトはニッコリと微笑んで……


「これはねえ、姫さまあ、『恥ずかし固め』だよお?」

「い、いやああ、そんなのどうでもいい! お願い、はなし、てえ! 離してえ! 誰かァ! 誰かああ!」

「ダメだよぉ、恥ずかし固めされちゃった女は夫婦の誓いをしたも同然で、子作りしまくらないとダメって決まりなんだなあ!」


 そんな決まりがあるはずはないのだが、もう、エルサリアは発狂してどうにか逃げようと叫んでジタバタするしかなかった。

 そしてついに……


「じゃあ、結婚の誓いのキスだよお。嗚呼、この日をどれだけ待ったことか! もう、僕は死んでも悔いはないよお!」


 ハモリトが泣きじゃくるエルサリアの唇を目がけて――――――


「ぶひゃーっはっはっはっは! 死んでも悔いはないか……じゃあ、死ね♪」

「へっ……?」


 しかし、その時だった。


「えっ……」


 ハモリトが何かに殴り飛ばされ、廊下を二転三転した。

 明らかに骨が砕け散った音が聞こえ、ハモリトの呻き声が上がる。

 予想外の事態に言葉を失うエルサリア。

 するとそこには……


「ぶく、ぷぷぷぷ、はーっはっはっは、本当にバカな坊ちゃんだ! 本当にお前のようなクズとの取引に応じると思っていたのか?」


 そこには、エルサリアの近衛兵たちを皆殺しにした猪の獣人がゲラゲラと笑っていた。


「がっ、かは……な……ど、どういう……がは……こ、こと……『イベリ千人隊長』……」


 手足があり得ぬ方向にねじ曲がり、立つことすらできず、ただただ廊下にうつ伏せになって苦しむハモリトが、朦朧としながら猪の獣人……イベリに言うと、イベリもまた、ハモリトと同様の醜悪の笑みを浮かべた。



「まだ、アルテリア覇王軍の本軍との戦も終わってねーのに、俺らチャシュー魔王国からかなり離れたこんな辺境の国なんて、最初からいらねーよ。この国を襲ったのは、ただ、国境を越えるにあたって、背後から突かれないようにするためと、兵糧の補充に他ならねえ」


「そ、そん、……ふぐっ……ぼくがあ……ひ、めさまのに……」


「だがな、感謝もしているんだぜ? お前のようなゴミクズのおかげで砦の攻略が楽に済み、更に……この田舎姫も予想以上に上玉だったからな!」



 イベリはゲラゲラと笑いながら、呆然として腰を抜かしているエルサリアに近寄り、エルサリアを持ち上げて、倒れるハモリトの前で小躍りした。



「だからよ、褒美にお前の犯したがっていたこの女は、俺が犯しまくってやる! 死ぬほど犯しまくってやる! くくくくく、他人が頑張って脱がせて、大喜びした瞬間、その女を奪って犯してやる……クセになりそうだぜ!」



 一瞬惚けたが、エルサリアは助けられたのではない。更なる苦痛と地獄が待ち構えていただけだった。

 そのことを自覚した瞬間、エルサリアはただただ泣き叫び、イベリの腕から逃れようと懸命に体を捩るが、それは返ってイベリを興奮させるだけだった。


「いや、やあああ、絶対にいや! いや、オークとだなんて、いや、いやああ! 誰か、助けて! 誰か、いや、いやああああ!」


 姫騎士として戦う心を完全に折られてしまい、最早どうすることもできないエルサリア。

 するとイベリは窓の外を見て……



「よし、一頻り砦内も制圧したことだし……いっそのこと、愛すべき民たちの前で、公開プレイと行くかァ!」


「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」


「くくくく、気分がいいぜ。ヴァンパイアの姫を攫っただけでなく、何だかんだで、あの目の上のタンコブだった、バークシャ副将も戦死したことだし、俺は間違いなくその後釜……千人隊長から一気に将軍だ! 田舎姫、お前は次期将軍に孕まされたと思って、幸運に思うんだな!」



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