第18話 姫騎士恥辱
ハモリトという男の家は、辺境の小国であるミルフィ国において、アルテリア覇王国との商取引を取り仕切る商会として国にとってはなくてはならぬ存在であり、エルサリアも幼いころから、その商会長の息子であるハモリトのことは知っていた。
正直、典型的な七光りの息子ということと、時折自分をいやらしい目で見てきたこともあり、エルサリアはあまりハモリトに良い印象は抱いていなかった。
そして今、ハモリトはこれまで以上に不気味で品のない笑みを浮かべ、その口から発せられる言葉や考えがまるで理解できずに、エルサリアは混乱する。
するとハモリトは……
「取引だよお」
「取引……だと?」
「うん。僕は自分だけ亡命してご褒美もらえれば良かったんだけど、この千人隊長がミルフィ国をアルテリア覇王国じゃなくて、魔王アギューの傘下にするってさ……むふふふふ、後は分かる? 分かるよねえ?」
「……な……何を言って……何を言っているのだ……お前は……」
ハモリトの予想もしていなかった言葉に耳を疑い呆然とするエルサリア。しかしその時、ハモリトのいやらしく歪んだ目と、だらしなく垂らす涎を見て、エルサリアはハッとなる。
「ま、まさか……ハモリト……西門を開けたのは……」
「むふふふふ。そうだよお、姫さまあ。砦の守備兵に、家族の安全と、この田舎砦の守備兵なんかじゃ手に出来ないほどのお金あげちゃったあ」
その瞬間、エルサリアの中で何かが激しくキレた。
エルサリアはハモリトの胸倉を掴み上げた。
「き、貴様ァ!」
「うわあ、なにしちゃうのお、エルサリア姫~! 暴力暴力ゥ!」
「ふざけるな! なんという愚かなことを! 貴様の愚かな選択が、この国を、民を、どれだけ……ッ、見てみろ! 民が! 愛すべき民のこの悲鳴を!」
「むふ。そうだねえ。だったらさ、早く降伏するでしょお? そうすれば、後は僕が全部やるよお」
「なん……で……なぜだ! お前の父は、この国にどれだけの貢献を……それなのに、息子のお前が、何故だ! 何故!」
ここに来て、ハモリトの裏切りに怒りが収まらぬエルサリアであったが、そんなエルサリアの反応にハモリトはニタニタと醜悪な笑みを浮かべた。
「僕も国に貢献するよお? 僕が王様になるんだあ。で、この国は僕がもらって、エルサリア姫には僕の妻になってもうらうよお」
何の冗談だと、言葉を失ったエルサリアだが、次の瞬間、呆然としていたエルサリアの纏っていた戦乙女のドレスの胸元を掴み、ハモリトは強引に引き千切った。
「な、ん、な、なにをする、無礼者!」
ドレスの下に纏っていた胸の下着ごと剥ぎ取られ、慌てて顔を真っ赤にして胸を両手で隠そうとするも、エルサリアの両腕をハモリトは掴み取って、隠させない。
「ひひひひひひ、ひ、姫様の、お、おっぱあい、ぱんつうう! ずっと夢見てたよお。僕と姫様でぇ子作りいすることをぉ! い~~~~~ぱい、ナメナメしてからハメハメえ!」
「ッッ!!??」
「姫様、わ、分かるでしょお? 無垢な姫様には分からない? 子供いっぱい作っちゃうでしょお……ふふふ、もう僕は興奮してきてたまらないよぉ!」
「ふざけるな! 誰がお前のものになるものか! お前の子供等、死んでも生まぬ!」
「イイネじゃないよッ! イイネじゃないよだよお、姫様、分からない? 見せしめの民や、セレスティン姫様がどうなるか……」
「うぐっ……ひ、卑怯な……」
ハモリトの囁きに、抵抗の力が徐々に緩まるエルサリア。本来であれば、今すぐ剣を抜いてハモリトの首を刎ねたいと思っていた。
しかし、国を、民の命を、そしてセレスティンの命を使って脅されてしまえば、彼女に抗うことなどできなかった。
「むふふ、ようやく素直になったねえ、愛し合う僕の前に隠し事だめえだよ。こっちも脱ぎ脱ぎ♪」
「ッ!? ちょ、な、いやああ、何を、は、いやあ!」
ハモリトはエルサリアの様子に興奮を抑えきれず、俯くエルサリアの膝上までの丈しかないスカートを剥ぎ取る。
その瞬間、桃色の下着を剥ぎ取った。
取り乱して思わず尻餅をついて廊下に転んでしまうエルサリア。
衣服を、ショーツとブーツ以外の全てを奪われたことで、騎士としての勇ましさは失せ、一人の女として涙を潤ませて懸命に露出した肌を隠そうとする。
そんな怯えるエルサリアの前で、今、エルサリアから剥ぎ取ったスカートを手にもってニヤつくハモリトは、ソレを自身の顔までもっていき。
「ヒッ!?」
「くんくん、もふ~~~~、はあああ、匂うう匂ううう、姫様! イイネな匂い~!」
ハモリトはエルサリアから剥ぎ取ったスカートの匂いを嗅ぎ、広げて被り、鼻を擦る。
あまりにも悍まし姿にエルサリアの全身の鳥肌が立った。
更に……
「ひっ、な、にを、やっ……ひいっ!」
「クンクン、ほうほう……ちょっと味見を。ジュブリジュブリ!」
「うぷっ!?」
「プハ、姫様のスカートおいし~~~! もうこれもイイネをあげちゃうよお! スカートでこれなら、ぐひひ、ぱぱ、ぱんつ、食べたら、ぐひひ、どうなっちゃうかなぁ?」
今の今まで自分が履いていたスカートを、ハモリトは舌で舐めて美味しそうに堪能している。
最早、寒気どころではない。吐き気が催して、エルサリアは嗚咽してしまった。
しかし、ハモリトの所業はまだ終わらない。
「おっと……姫様……そのまま、自分から、胸を隠しているその両腕を上げ、そして閉じている足を開いてよお」
「ッ!?」
「さあ、愛する僕のために子作りするために開いてよお!」
「ば、ばかな! そんなこと、できるはずが!」
ありえない命令。ふざけるなと叫びたかった。しかし、エルサリアにはもう分かっていた。ハモリトの目が全てを物語っていたからだ。
断ったらどうなるのかと……
「ッ……ぐ、……そん……なこと……」
「そうなのお? じゃあ、凌辱をするなら、やはりセレスティン姫を―――――」
「ま、ッて……ま、待てェ! ゆ、いうとおりに……するから……」
逆らえるはずがない。卑怯者だとどれだけ叫ぼうとも、この男は毛ほどにも思わない。
辺境の国の姫として、国の存続のためにも、いつかは自分も誰かと……ということはエルサリアも考えてはいた。
十代の半ばを過ぎて、日に日に女としての体つきが目立つ中、いつかこの身体と心を誰かに捧げる日が来るのだろうと、乙女のような想像をしたこともあった。
しかし、初めて自分の肌の全てを晒す相手が、目の前にいる男になるなどとは、微塵も考えたことはなかった。
「さあ、姫様! 姫さまあ! 遅すぎだよお、イイネじゃないよッ!」
ハモリトは鼻息荒くして、エルアリアの目の前で四つん這いになり、エルサリアの全てが露わになるその瞬間を待っている。
(ぐっ、き、気持ち悪い……ひっぐ、だ、誰か……誰か……)
いっそのこと、舌を噛み切って死ぬことが出来たらどれほど楽だったか。
しかし、自分がここで死んだところで、民のことを思うのであれば、その決断を実行することが出来ず、エルサリアは……
「ぐっ!」
「お、おおおお、おおおおおおおおお!」
全てを曝け出すしかなかった。
「イイネえええ! イイネだよお、姫さまあ! イイネええ! うん! うん! これが全部僕のものお! これを自由にできる日をどれだけ待ち望んだんだよお!」
決して嬉しくない賛美の言葉が、醜悪な男から告げられた。
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