第14話 おっぱ枕

 一刻も早くという想いからも、これが最善であるためにブリシェールは迷いはなかった。それに、先ほどまでのまぐわいに比べれば、この程度など最早取るに足らないものだとすら感じていた。

 しかし、レパルトにとっては、そうやって簡単に割り切れぬほどのこと。

 ブリシェールの腕の中で、顔を真っ赤にして硬直してしまった。


「ん? なんだ? そのように頬を染めて……まさか……まだ、わらわの乳房が欲しいか?」

「へっ? ち、ちがいま!? そ、そんなことな、ないです!」

「やれやれ……この助平め……正直、それほどデカくはあるまい? 国にも他種族にも、わらわ以上の乳房をぶら下げている女子は腐るほどおるぞ? それこそ妹のセレスはすごいぞ? ウヌが見たときは鎧で潰しておったが、アレの胸のでかさはメロンという果実のようで……さらにその形の美しさと柔らかさときたら―――――」


 その瞬間、ブリシェールの自嘲気味な言葉に、今の今まで固まっていたレパルトは上半身をガバッと起こした。


「姫様は、とても素敵な方です! 他の人がどうとかじゃなくて、俺、姫様だから、姫様のものだからあんなに我を忘れてしまったんです!」

「ん? お、お……お?」

「俺、小さい頃に初めて姫様をこの目に見たときのことを今でも覚えています。俺たちみたいな汚い奴らに比べて、比べられないほど綺麗で真っ白い肌で、キラキラと輝いているのに、微笑んでくださった時は一瞬で心が温かくなって……そんな姫様のだから、俺、あんな風になったんです!」


 他の女など知らない。だが、そもそも大きいとか小さいとかそういうものではない。

 ブリシェールの乳房だからこそ、自分はあんなに興奮したのだと主張した。

 流石に何の駆け引きも無く正面からそのように強く強調されてしまえば、ブリシェールもうろたえる。

 ましてや、これまで数え切れぬほどの男たちと出会ってきたが、これほどの距離でそのようなことを言う男等皆無だった。


「わ、分かった、分かった、か、顔が近いぞ……接吻でもする気か? いっぱいしたであろう?」

「は、はううっ! す、すみませんでした、姫様ア!」


 慌てて首を離すレパルト。ブリシェールは顔をソッポ向かせた。

 夜とはいえ、互いに顔が赤くなっているのは一目瞭然だが、二人とも顔を背けたためにそのことに気づかなかった。


(ふう……こやつめ、少々心臓に悪い童だの……気を引き締めねば。正式に眷属にした以上、これから永久に近い日々をずっとこやつと過ごさねばならぬのだからな……)


 動揺した心を落ち着けようと深呼吸するブリシェール。しかし、その時、ブリシェールはあることに気づいた?


(ん? ま、待てよ? これから永久に近い日々をこやつと……?)


 レパルトは自分の眷属になった。さらに、既に人間ではなくヴァンパイアの眷属とした以上、自分と同じように不老の肉体となった。

 そんな男をこれからずっと傍に置くと思った瞬間、山小屋の中での一部始終がブリシェールの頭の中に過ぎった。


(とと、当然、眷属にした以上、ほほ、褒美や報酬はくれてやらぬと……こやつはわらわとの、え、えっちっちが非常に気に入ったようだし、そ、それを報酬にした場合……あ、あのようなか、快楽を、これからも、え、永久? ……むむむむむ、無理じゃ! わらわ、壊れちゃう! あんなの、あんなのもう一回してしまえば……ちゅ、中毒になってしまう! 結婚なんてできぬ! もう、こやつ以外無理になってしまうのだ!)


 レパルトを抱えながら山林を高速で移動しながら、徐々にブリシェールはレパルトとの行為を思い返しては、内股になって股をモジモジさせた。


(え、えっちっちを報酬にするにしても……せめて一年に一回……いや、それでは少なすぎてこやつには不憫……ならば、一月に……一週間に? いや、違う! ひ、日払い制にして……)


 もし、毎日あんなに絶頂する交わりをしてしまえば? 想像しただけで、息が荒くなる。

 そんな妄想を繰り広げているとき、同じくソッポ向いていたレパルトがボソッと呟いた。


「俺……地下に戻ったら、みんなになんて言えば……」

「……は?」


 地下に戻った場合……聞違いではなく、レパルトは確かにそう言った。

 ブリシェールはその言葉の意味が分からなかった。

 なぜなら、レパルトは既に自分の正式な眷属にした以上、これからずっと傍に置いておく存在だと考えていたからだ。


「ど、どういうことだ? 童よ」

「えっ? だ、だって、いえ、その……セレスティン姫を奪還したら、当然、俺は……」


 レパルトの認識。それは、ブリシェールの眷属になったが、それはセレスティン奪還までの話であり、問題が解決すればまた地下での生活に戻ると考えていた。

 その両者の認識の隔たりにブリシェールが気づいた時、とにかく慌てた。


(ちょ、待て! ウヌはこれからずっとわらわの傍で仕えて、え、えっちっちするのであろう? も、戻るだと? 何を言うておる! わらわの体が不満か? 普通なら戻りたくないって言うはずであろう! いや、別にこのような童に恋慕などはないが、ほ、褒美のえっちっちぐらい、わらわも望むとこ……やぶさかではないというのに!)


 そんな混乱状態になったブリシェールが、僅かな時間で導き出した解決策は? ブリシェールは慌てながら……


「だ、ダメだぞ、童!」

「は、い?」

「う、ウヌは、ま、まだ眷属になりたてて、その、肉体が不安定である! ゆ、ゆえに、その肉体を安定させるためには、これから毎日、わ、わらわとえっちっちする必要があるのだ!」

「………えええええええええええええええええええ!?」


 ブリシェールの案。それは口からでまかせであった。


「そ、そんな! でも、そんなのダメです! それだったら、俺なんかのために姫様が! そんなの俺、もう耐えられません! 姫様がこれ以上苦しむだなんて!」

「たわけえ! ウヌの祖父にわらわは約束したのだ! ウヌのことは責任持つと! わらわの体もやわではない! 奴隷の童ごときがわらわを気遣うなど百万年早い!」

「そ、そんなこと、お、おっしゃられても……」

「ええい、この臆病ものめ! わらわに惚れておるのなら、役得と思ってえっちっちだ! この乳房がいいのであろう? よし、移動の間はこの胸を枕に寝ているとよい! ほれ、顔を埋めよ」


 暴走したブリシェールは、己の胸をレパルトの眼前に突き出した。


「ウヌのスキルは此度以外のことでも、今後あらゆる面で切り札になる。その眷属たるウヌに対する褒美を拒否して受け取らぬなど、ウヌはわらわに恥をかかせるつもりか! それこそ、わらわへの侮辱と知れ! だから、えっちっちだ!」

「ひ、姫様……あの……」

「枕にせよ馬鹿者オオ!」


 ブリシェールは自分で何を言ってるか分からなかった。

 レパルトも何を言われてるのかが全く分からなかった。

 互いにどうしてこんな状況になっているのか分からなかった。

 だが、とりあえず、殺気を滲ませながら「枕にしろ」と晒されたブリシェールの胸を前に……


「……あ、う……し、失礼します……はふぅ♥」

「ああん♪」


 とりあえず、レパルトは命令に従って胸に頬をつけて枕にした。



 ブリシェールは、レパルトを抱きかかえ、胸を枕にされながら、夜の山を越えていった。





――あとがき――


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