第20  第六章  エスパーマリア

  マリアはちょっとやり過ぎたかなと反省していた。

「私も挑発に乗りムキになったよううね。大人げない事をした」

 それから文部科学省では地質学者、宇宙研究学者、医学博士などを結集させてアルタイル星から贈られた鉱石を分析していた。見た目はなんの変哲のない石のようだが、ひとつは何故か熱を帯びて来た。やはり中で強いエネルギーが働いているようだ。もうひとつの石は簡単に割れた。その一部を電子顕微鏡で見ると細かい粒子がある事が分かった。これまでも粒子治療が行われて来た。この鉱石の粒子は微粒子同士の衝突で光を帯びている。まるで生命が蠢いているような。やはり地球上に存在しないエネルギーがある。確かに医学界に大きな進展を見せるかも知れない。

 マリアが言っていた。同じ鉱石を地球上にある三つの鉱石を組み合わせれば似たように鉱石を作り出せると。これが成功すれば地球上で多く鉱石を作り出せる。但しその方法はアルタイル星人しか知らない。つまりこれからもアルタイル星人と友好関係を結び知識を得るしかない。


それから各医学界の施設に鉱石を五個に分けて送られたが、もう一個は国で保管している。貴重な鉱石だから。

 だが横浜医科国立病院に送られるはずの鉱石が何者かに奪われた。医学界にとって貴重な鉱石だ。早速警察が捜査に乗り出した。分散した鉱石の大きさはマウス程度の小さな物をジュラルミンケースに入れて輸送中だった。人通りの少ない道路を走行中に前の黒いワンボックスカーが急停車すると後ろから同じく黒いワンボックスカーが停止し拳銃で脅され三人の乗組員は縛られジュラルミンケースを奪い逃走したという。これは計画的に行われ大きな組織が裏に存在すると見たが。犯人達は覆面を被り三人の被害者は目隠しされ、まったく犯人の手掛かりがつかめない。これは一大事だ。万が一国外にでも流れたら大変な事になる。総務大臣から依頼を受けた政務次官がマリアに連絡して来た。


「東野真理亜さんですか。誠に申し訳ありません。貴女が届けてくれた青っぽい鉱石の一部が横浜医科国立病院へ移送途中何者かに奪われてしまいしまた。我々も必死に捜査しておりますが未だに手掛かりが掴めません。貴女の力をお貸し願いませんか」

「え~奪われたとは穏やかじゃありませんね。しかし何故、そんな鉱石を輸送していると気づいたのでしょう。文部科学省に潜んでいるスパイとか」

「迂闊でした。そうかもしれません。確かに現金輸送車でもないのに、その鉱石が価値あると知っての犯行だと思います」

「取り敢えず電話では詳しい事が分からないので、そちらに伺います」

「助かります。何なら迎えの車を行かせましょうか。

「いいえ、バイクの方が早いですから何方か文部科学省正面で待って居てください。面倒な手続きを省きたいので」

 間もなくマリアはバイクで文部科学省玄関に到着した。すると足早に駆け寄って来て一人がバイクを預かり、もう一人が中に案内した。政務次官と数人の役人が待っていた。一通り状況を聞いたマリアは持ってきたコミポートを取り出した。今ではこのコミポートの使い方を覚え、色んなデーターを詰めこんである。その中には例の鉱石も入って居る。マリアか手かざすと、青白く淡い輪づくが浮き上がる。暫く操作しているとマリアが声を上げた。

「いた! たいへん横浜埠頭よ。此処から外国に持ち出すつもりのようよ」

「なんだって、船名は分りますか」

「KEUM YANG Ⅶとなっています」

「それは韓国の貨物船ですよ。すぐ横浜の海上保安局に連絡させ出向停止させましょう」

 それが分かりマリアと政務次官他三名が向かった。処が犯人たちは停船させられたと知り車で逃走した。パトカー五台で追跡したが、なんと彼らは韓国横浜領事館に逃げ込んだ。このまま領事館に乗り込めば国際問題になる。しかし犯人たち間違いなくこの中に逃げ込んだ。領事館の門の前で押し問答が繰り広げられた。

「貴方達は犯人を庇うのですか、相手は犯罪者ですよ」

「ですから知りません。どうしてもと言うなら本国に連絡して国際問題に持ち込みますよ」

 その押し問答を見ていた政務次官は苦り切った顔をしてマリアを見た。まるでマリアに助けを求めているようだった。この政務次官はマリアの能力を認めている。あの会議室で出来事、一部記憶は消し去られたが微かに眼が光ったのを覚えていた。あれは普通の人間ではない彼女ならやってくれる。政務次官の眼で哀願しているように映った。マリアは仕方ないと小さく頷いた。そしてその場から何処かに消えって行った。


つづく

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