第16話 第五章 会議室での出来事 

 二日後アリアは事情を家族に話した。アルタイル星人が日本政府にコンタクトを取ったが未だに政府は信じられないようだ。彼女が直接出向くと伝えた為、何処の誰かさえも分からない。いや宇宙人なのかも知れない。ともかく今日来る予定だと聞き政府関係者は不安と期待が入り交じっているようだ。万が一の為に文部科学省周辺に機動隊が待機している。但し目立たないように近くのビルに潜んでいるようだ。マリアは会社の面接に行くようなスーツを着込んで来た。ラフな格好では失礼と思ったのだろう。マリアは文部科学省に向かった。何故か警察官あちこちに見られる。それもそのはず右側に警視庁、左側には検察庁がある。マリアは受付に来た。住所氏名と身分証明書、行き先、要件を記入して申請する。その手続きが面倒だ。マリアは受付嬢に言った。


「あの文部科学大臣にお会いしたいのですが、お取次ぎ願いますか。そう言えば分かると思います」

「ハァ~? 取り敢えず其処に記入し身分証明を示しものを提示して下さい。それと文部科学大臣など簡単に会えませんよ」

 受付嬢は呆れた顔で睨みつけた。

「とにかく、そう伝えて下さい。でないと帰りますよ」

 なんか揉めていると見たのか警備員が寄って来た。其処に慌てて誰か走り寄って来た。

「大変失礼致しました。もしかして貴女が例の方でしょうか」

「あっ、はいそうです。私もこういう場所は馴れないもので」

「いいえ、いいえどうぞ。大臣がお待ちしております」

 これには受付嬢も警備員も口をアングリ開けて驚いている。若い娘が直接大臣に会うなんて前代未聞だ。マリアは丁重に案内されて七階にある立派な会議室に通された。既に文部科学大臣の中曽根幸三とお偉方五人にスタッフ十数名が待っていた。其処に入って来たのがマリアだ。なんと何処かの女優かモデルのような容姿をしている。しかしあまりにも若いので周りは驚いている。こんな小娘を宇宙人は使者として送ったのか。特殊能力の持ち主と言うが一体何者? とは言え大事なお客様である。全員笑顔で出迎えた。


「よくいらしてくれました。私が文部科学大臣の中曽根幸三です。どうぞお座り下さい」

 会議室に入ると関係者が十七名ほど一斉にマリアを見た。第一印象が誰かがモデルを呼んだという感じ。そして若い若すぎる。マリアは設けられた壇上に立った。

「初めまして東野真理亜です。早速ですが疑問から説明しましょう。ある日、私は八ヶ岳連峰の蓼科で宇宙人と遭遇しまして……とは言っても笑うでしょうね。まぁ笑わず聞いて下さい。私が生まれる前ですがETという映画あったそうですね。私はその映画を見ました。そう映画の冒頭シーンのような感じでした。蓼科の上空が暗くなり空を見上げたら流れ星かと思ったら急激に大きくなりあっという間に宇宙船は着地したのです。その宇宙船は音もなく横扉が開き一人の人間がバックを持って出で来ました。暫くするとその人間を一人残して宇宙船は飛び去りました。どうやら弱っていて宇宙人と疑わず解放というか薬を飲ませたのです。それで簡単に治ってしまいました。その宇宙人は地球の細菌にやられてようです。その細菌は風邪の菌でした。笑うかも知れませんが人間には軽い病気でも宇宙人には免疫がなく瀕死の重傷だったのでしょう。暫く休ませておくと夕方になり、流れ星かと思ったら宇宙船だったのです。ただ母体ではなく母体から放出した小型宇宙船が下りて来てその宇宙船に乗って帰って行きました。だからそれ以外の宇宙人と接触していません。それから何故か私はアルタイル星と交信出来る能力を得ました。それだけじゃなく彼らは私を通して地球と接触を図りたいようです。それから暫くしてアルタイル星人が私を蓼科へ登るように連絡が来ました。すると上空からカプセルが降りて来て御礼の贈り物だというのです。それがこれです」 


 マリアは母佐希子と父ドリューンが初めて会った時の話を、母から自分に置き換えて説明した。これでドリューンが疑われずに済む。


つづく


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