第12話 アルタイル星との交信

 数日前からマリアは両親に頼み離れにある倉庫を改造して自分の部屋にしたいと頼んであった。両親も年頃の娘だしプライバシーも必要だろうと快諾し近くの業者に頼み現在工事中である。マリアは八王子まで買い物に出た。此処には日本だけじゃなく世界中から集めた沢山の種を売っている。マリアは果物の種や野菜などを買いそろえた。種だから大して量にならない。その他に頼まれもしない水を何種類か揃える事にした。井戸水、海水、川の水などを揃えた。それから一週間が過ぎ離れ部屋が完成した。早速マリアはアルタイル星人が送って来た金属の箱から試験管のような物にマリアの血液を採取して入れ、他の管には各種の水を入れた。これで約束の物は揃った。そして楽しみにしていた金属の箱を開けた。ひとつは例のパソコンのような物。もうひとつは金属なのか石なのか分からないが二種類入っているだけだ。マリアは少しガッカリして呟いた。


『私は科学者じゃないのよ。鉱石かただの石か何か分からない物を分析しろと言うの。まさか売って金に替えろというんじゃないでしょうね。もし宇宙からの石として何処で手に入れたと追及されるだけよ』

 苦笑いを浮かべてマリアはパソコンのような物を取り出した。十インチほどの画面だがキーボードは付いていない。電気コードもない。初めて手にするのに慣れた手つきでマリアは画面の上に手を当てた。すると丸い円の輪づくの光が浮かび上がった。なんと其処には立体の画面になっていて空間に日本語と奇妙な絵が浮かび上がった。

 『ようこそマリア。私を仮にドレーンと呼んでくれ。君の疑問はここで説明出来る。その鉱石が二個あるはずだが。最初に赤みがかった鉱石はエネルギーを半永久的に産み出す。地球では電気を作る為に石油や原子力発電を使うそうだが石油は無限にある物ではない。原子力発電はある程度無限だが危険が伴う。この鉱石を使って電気を作れば燃料は不要だ。これ一個で火力発電所に匹敵する電気を作り出せる。地球にない鉱石だが地球にある三つの鉱石を組合わせる事でほぼ同じ物を作れるはずだ。つまりこれで地球は無限の電力を作り出せる。あとは科学者達で研究すればよい。いずれ無限のエネルギーを得られるだろう』

 文字は其処で終わって居る。マリアは空間に浮かぶ文字を払うと次の文字が浮かび上がった。


 「なんと凄い贈り物だ。地球に無限のエネルギーが出来る。素晴らしい」

『次の青みがかった鉱石はバクテリアを破壊する強烈な光が一点を攻撃し死滅されるものだ。特に人間にとって癌は治らないと言われているが、この石にはそれを死滅させる効力が含まれている。皮肉だが我々には強力過ぎて身体がもたない。人間なら有効と思う』


 更にマリアは画面を払った。すると同じように文字が浮かび上がる。

『最後にあとはどう使うか地球上の学者と相談し活用方法を研究することだ』

 確かに素晴らしい贈り物だ。使い方によっては地球のエネルギー問題、地球の汚染浄化、そして医学会にとって正に画期的な代物だ。ただ宇宙からの贈り物だと言って誰も信じないだろう。どう説明しても分って貰えない。出所が何処だろうと無限のエネルギーが得られるなら世界中の学者が集まって考えることだ。余計な詮索するより人類の発展のために世界がひとつになることだ。

「ありがとう。それと貴方達が要望していた私の血液と沢山の種が揃いました。それと地球の水も入れました。何かの役に立てれば」

「ご苦労様、約束を守ってくれてありがとう。それでは数日後、以前と同じ場所にカプセルを届けよう」

 翌日の夕方マリアはまた蓼科山に登った。いや正確には車で行ける所まで行き其処から少し歩けば例の場所に辿り着けるのだ。勿論人気がない場所だ。もし他の人が見ても流れ星だろうと思うだろう。暫くすると東の方から流れ星のような物が流れて来る。また例のカプセルが音もなく着地した。ただ前回の物より倍の大きさがあった。マリアはカプセルの上に手を差し出した。するとスーとカプセルの上部が開いた。そこにマリアは血液と水と沢山の種の入った金属の箱を入れた。暫くするとカプセルの上部が閉じられ音もなく浮かび横に流れるよう滑って母船の中に吸い込まれていった。


 しばらくすると母船が光帯びた。離陸の準備をしているのだろう。母船が輝きを増して強烈な光と共に上空を登って行き見えなくなった。マリアは溜め息をついた。夢の世界じゃないの? 

 私は本当に宇宙人と交信していたのか不思議な気持ちだ。それにしてもあの石はとんでもない代物だ。問題は誰にどうやって伝えよう。アルタイル星人からの贈り物だと言ったら笑われてしまう。本当だと言ったら精神鑑定を受けろと言われるに決まっている。信じさせるには私はアルタイル星人二世と言ったら更に気が狂っていると言うだろう。やっと父のドリューンが地球の人間として生きているのに平和な家庭が崩壊し宇宙人と分かってしまう。

 こうなったら家の下に埋めてしまおうかとまで思った。あの石の効力は地球を救うことが出来るのに歯痒い話だ。出来るならアルタイル星人が直接来て説明してくれれば良いものを。勿論、記憶を消す事は出来るが相手にもよる。暴走族なら訳はないが、それに国の機関に石を提供し政府用人の記憶を消したとしても宇宙からの贈り物の鉱石の記憶まで消えては意味がない。


つづく

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る