第10話 第三章 特殊能力
マリアはその日の夜、アルタイル星からの贈り物を調べる事にした。カプセルから取り出した二個の箱は愛車のワンボックスカーに隠してある。父母が営んで居る民宿の駐車場がある。お客様用と兼用で十台ほど停まれるスペースの奥に停めてある。マリアが車に近づいて行くと異変に気付いた。後ろのガラスドアが壊されていた。マリアはアルタイル星人から贈られた箱二個が無くなっているのに気づいた。マリアは囁いた。
『やってくれたな。でも盗る車の相手を見誤ったようね』
アルタイル星人から贈られた貴重な物だ。絶対に取り返させねばならない。
マリアは車の周辺を調べた。バイクのタイヤの跡が沢山残されていた。マリアは車の他にバイクも持っている。オフロード用バイクでヤマハTW二百五十だ。ヘルメットを被ると迷うことなく青梅市へ向かった。青梅市を中心に暴れまわっている青梅連合で間違いないと読んだ。奴らの溜まり場は多摩川添えにある青梅リバーサイドパーク周辺にたむろしている。時刻は夜の八時を過ぎたころだ。河川敷に降りると暴走族が二十人ほどいて騒いでいる。
「おいサトル早く開けろよ。きっとお宝が入って居るぞ」
「それがさあ一向に開かないんだよ」
「じゃあハンマーでやって見な」
一人がハンマーで箱を叩いた。ガーンと鈍い音がしたもののビクともしない。マリアは川の上の方にバイクを停めて歩いて来た。服装は皮ジャンにジーンズだ。マリアは大人になって何故か瞳の色が黒から変わった。マリアは父のドリューンの血を引いているのか目はやや薄い青。髪は黒ではなく少し栗毛色。身長は百七十センチと大きい。運動神経も優れていてサッカーやテニスも都大会に出るほどだ。それだけじゃなくあらゆるスポーツに対して優れていて大学に入ってからは空手も始めた。マリアは大声で叫んだ。
「こら~泥棒ども人の物を盗んだあげくに壊す気か」
「なんだオメイ。お前のだという証拠はどこにある。邪魔だから消えろ」
だがマリアは怖じ気づくどころか平気で河川敷に降りて来た。すると暴走族は一斉にマリアを取り囲んだ。二十対一余りにも無謀過ぎる。
「いい根性しているな、ネイちゃん。まさに飛んで火にいる夏の虫だな。調子に乗るなよ。素っ裸にして廻してやるぞ」
「ほう出来るのかな。いまのうちよ、謝ってその金属の箱を返すなら許してあげない事もない」
すると暴走族の連中は腹を抱えて笑いだした。そしてすぐ一人が真顔になりマリアを後ろから羽交い締めにしようとした。だがマリアは其処には居なかった。もはや人間とは思えない、まるで瞬間移動するかのように動いていた。世界で一番早く走る動物ランキングではチーターが時速百十五キロ、海ではバショウカズキ百八キロ、空ではハヤブサ三百八十七キロ。因みに人間は三十三キロだそうだ。一瞬マリアが消えたと思ったらリーダー格の男を見つけると物凄い勢いで跳躍して飛び蹴りを喰らわせた。リーダー格の男はフイを突かれてもんどり打って倒れた。すかさずマリアは男のアゴを強烈に蹴った。男は泡を吹いて伸びてしまった。暴走族達は唖然とする。女だと思って舐めて掛かったのが間違いだった。暴走族達は真剣な表情になりチェーンや木刀を持ち出した。そしてジリジリとマリアを追いつめる。
つづく
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