第9話 アルタイル星人からの贈り物

「宅急便? 地球はそんな宇宙船があるのか。我々の宇宙船は一光年を十二時間つまり一日を二光年移動する。だから約八日間で地球に行ける」

「えっそんなに早いの。人類にはとても無理」

「君にお願いがある。出来るなら君の血液を少し欲しい。それで人間の細胞を調べたい」

「止めてよ。私の血を吸い取るつもり」

「そうじゃない。試験管一本分だけだ。その血液で人間のような身体が何千年先か作れるのが夢だ。他に地球の植物のあらゆる種類の種が欲しい。なんとか我々の星で育てられないか研究する。成功すれば我々は樹木や野菜、果物など手に入れる事が出来る。それに花を育てられたら地球みたいな楽園が出来る。これから送るカプセルに入れてくれ」

「えっだって貴方達は食べる事が出来るの?」

「いや最初はエキスにして放出させそれを吸収する。その後は更に研究して君が送ってくれる血液を調べ人間と同じように食べられるような身体を作りたい。地球は食べる楽しみというものがあるらしいね。羨ましい限りだ」

「信用していいのね」

「勿論だ。君は我々の細胞も受けついて居る。我々の星人であるドリューンを悲しませたくないからな。なお君の血液とあらゆる種類の種が準備出来たら知らせてくれ。そのときまたカプセルを送る。カプセルの中に入れたら後は自動的に我々の宇宙船まで戻ってくる仕組みだ」


 そんな交信が暫く続いた。やがて八ヶ岳連峰の上空に光る物があった。宇宙船から更に小型無人船で放出されたカプセルだろう。幸い周りには誰も居ない。怪しまれる事はないだろう。いやそれを計算して放出しのだろうか。そのカプセルは上空から降って来るように落ちて来た。そのまま落下すると思った急速にスピードを緩めフワリとマリアの目の前に着地した。直径一メートル程の球体があった。この球体はどうやって開けるのかと思ったら無意識にマリアの手で触ると上の部分が開いた。四角い金属の箱が二つ入っている。そのうちの一つを開けると、その中からパソコンのような物を取り出した。マリアは見た事ないが父のドリューンが持っている物と似ている。他に注射器のような物と鉄の試験管のような物が入って居る。たぶん血液をこの注射器で取り出し試験管に入れろと言う事だろう。もう一つの箱は帰ってから見る事にした。マリアは近くに停めてあるワンボックスカーに乗って持ち帰った。しかしこのまま家に持って帰れば、それは何かと追及される仕方なくワンボックカーの中に隠してある。頼まれた植物の種はあとで買いに行く予定だ。揃ったらアルタイル星に交信して約束の血液と植物の種を送るつもりだ。家に帰ると母の佐希子が訪ねた。


「お帰りマリア。蓼科山どうだった天気も良くいい写真撮れた」

「うんいい写真撮れたよ。お客さん多いの、手伝おうか」

マリアの両親は祖父母の後を継いで民宿を営んでいる。

「丁度良かった。今から奥多摩駅に三人連れお客さんを迎えに行ってくれる」

 奥多摩駅の一日の利用者は八百人に満たない駅だ。その為に平均一時間に一本から三本しか電車が来ない。だから圧倒的に奥多摩に観光に来る人は車が多い。奥多摩の観光と言えば奥多摩湖、日原鍾乳洞、鳩ノ巣渓谷、氷川渓谷、鳩ノ巣渓谷、白丸調整池ダムなどがある。特に夏から秋にかけて観光客が多いが、冬は流石に殆ど観光客が来ない。正月を除き冬場は民宿を休む。

 両親はそれを利用して旅行に出かける。とにかく二人は旅行好きだ。二人が知り合ったのも北海道だと聞いている。たが未だに母の佐希子は父のドリューンはイタリア人だと言っている。マリアは父がイタリア人じゃない事を知っていた。マリアに父が宇宙人と聞いたらショックを受けるだろうと気を使っているのは分る。だから当分は父の出生の秘密には触れない事している。


つづく


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