ラブコメ×恋人ルート 遊園地

「わー」

Gyutto Partyの遊園地につくと人でにぎわっていた。

人気アトラクションは行列を作り、どこもかしこも人でいっぱいだ。

こんなに混雑するとは。

「ね、ね、見てよ。遠くで見るよりすっごく大きい観覧車」

「ジェットコースターもあんなに高くまでいくの」

「お化け屋敷も臨場感あって怖そう」

「メリーゴーランドのお馬さんもかわいいね」

いつになくテンションが高い。

とはいえ、遊園地に来たんだ。思いっきりはしゃいだほうがいいだろう。

そういう僕も心躍る思いがどこかにあった。

「ねえ、どこから行く?」

さて、どうしようかな。


      ジェットコースター

      観覧車

      お化け屋敷

      → メリーゴーランド ←


「残念!今回は選択肢はありません」

「私の行きたいところについてきてもらいます」

「さあさあ、ジェットコースターに行きましょう。楽しみは最初にゲットしておくべきよ」


徐々に上昇していくジェットコースターの中、僕は恐怖していた。

こんなに高く上がるのか。

下から見たときよりもさらに高く感じる。

「見て見て。ここからだと遊園地全体が一望できるよ」

隣の彼女が無邪気に言う。

でも、僕はそっちを見るつもりはなかった。

だって、下を見るってことだろ。怖いじゃないか。

そうして、僕はレールの行く末だけをずっと見ていた。

だが、レールが視界から消える。僕たちは頂上に達したのだ。

次の瞬間ゴゴゴーっと風を切りながら、急降下する。

ほのかな爽快感と凄まじい恐怖感を感じていた。

「――」

何か言っているが、聞き取ることもできない。

……。

僕は必死に安全バーをつかみながら、終着するまで耐えていた。


「楽しかったね」

まあ、楽しくはあったが。

僕はすでにへとへとだった。

「じゃあ、次のジェットコースターは――」


      → ちょっと待て ←


「ん?」


      → 次もジェットコースターなのか ←


このまま連続してジェットコースターに乗ると、僕の体がもたない。

「んー」

「わかったよ」

「疲れているなら、メリーゴーランドで落ち着こうか」


ゆっくりと上下する馬に揺られながら一息つく

「どう?気分は落ち着いてきた?」


      → ありがとう ←


「いえいえ」

「派手なアトラクションばかりが遊園地ではないからね」

「こういうのは緩急が大事なのよ」

ジェットコースターに連続で乗ろうとしていた人の言う言葉ではないと思った。

「次はお化け屋敷行かない?」

「ここのお化け屋敷は結構怖いらしいわ」

その割にはウキウキとしている。

お化け屋敷か。

苦手ではないが、好んで入ることはないな。

いい機会だから、行ってみてもいいかもしれない。

「ふふふ、いい根性ね」

「あなたが、怖がるところ見せてもらうわよ」

なんだか妙な期待をされてしまっている。


「きゃああああああああああああ」

彼女の叫び声が屋敷中に響き渡る。

僕のほうはというと、隣で叫んでいる彼女のおかげで逆に平静を保てていた。

「へあ、わ、私浮いてるよ。何で」

ここのお化け屋敷は一風変わった作りになっていた。

部屋には絨毯のような床があり、壁から天井は全てモニターになっている。

周りの映像に合わせて、床が揺れたり風が吹いたりして、3D体験できる仕組みだ。

最近のお化け屋敷はだいぶ近代的なんだな。

「嫌だ、嫌だ、だってこれもう閉じ込められてるよ。もう帰れなくなっちゃってるって」

それにしてもここまで、怖がるものなのか。

仕方ないな。

僕は彼女の手の上にそっと手を乗せた。

「ひいいいいいいいい」

彼女は僕の手を振り払い、涙目になりながらこっちを見た。

「あ、ご、ごめん」

「そんなつもりはなかったの、だから」

「私の手、しっかりと握っていてくれる?」

彼女はそのままずっと手を握りながら叫び続けていた。


「……」

「……」


      → 大丈夫か ←


「うん、大丈夫」

「……」

「……」

相当疲れているようだ。

ベンチで茫然と座っている。


      → 今日はそろそろ帰ろうか ←


「待って、あと1個だけ」

「最後に観覧車に乗りたいんだけど、ダメかな」


      → わかった ←


「ありがと」

「じゃあ、さっそく行きましょう」

「おっとっと」

よろめきながら立ち上がる彼女を支えながら観覧車へと向かった。


「ふう」

「乗ってしまえば、あとはゆっくりとできるね」

2人で乗り込んだ観覧車は頂上を目指してゆっくりとあがっていく。


      → 今日はありがと ←


「なに言っているの。そんなのお互い様よ」

「私のほうがあなたより楽しんでいた自信もあるわ」

それは間違いなくそうだろうな。

「ねえ」

「私がなんで観覧車に乗りたかったかわかる」

少し考えてみたが、ピンとくるものはなかった。

観覧車は頂上付近に差し掛かっている。

外を見渡そうとしたが、高そうなので躊躇った。


      → 高いところが好きなのか ←


「ふふ、当たり」

「まだ、頂上じゃないのに町はすべて見渡せるでしょ」

「この辺で最も高い場所がこの観覧車なのよ」

「そう、ここが」

「ここが最も天界に近い場所」

「私たちはもっと高いところから、この世界を見渡していたわ」

「だけど今は」

「あなたと一緒にこの町を見渡してみたいって思っちゃったの」

観覧車は頂上に到達した。

今が天界に最も近いとき。

僕は意を決して、外を見る。

夕暮れに街がぼんやりと照らされていた。

その中には雑多な人が生きている。

これが彼女の見ていた光景。

これが彼女の見せたかった光景か。


      → きれいだな ←


「でしょ?私はいつもこの光景に憧れていたの」

「人間はなんて美しいんだって」

「だから、人間界に遊びにきて、あなたに会えて」

「本当に楽しいわ」

「本当にありがと」


僕たちは遊園地を出て、帰路についた。

彼女は疲れているのか、しばらく黙り込んでいた。

しばらくして、ふと彼女が口を開いた。

「ねえ」

「私のことどう思う?」

彼女の言葉にたじろいでしまう。

たしかに遊園地でいい雰囲気になったが。

彼女の気持ちに応えるべきだろうか。


      → 僕は―― ←


「答えなくていいよ」

「だって――」

そう言って、言い淀む。

彼女なりにも僕に対して言いたいことがあるのだろうか。

「今日の私、おかしかったよね?」

え?

「今日の私おかしかったでしょ?」

「恥ずかしいところいっぱい見せちゃってない?恥ずかしいこといっぱい言っちゃったよね?」

「むぐぐ、今日のことは忘れて!遊園地で浮かれていただけだから」

彼女は顔を赤くさせて言った。

そういうことか。

まあ、確かに今日の彼女は浮かれているような様子を見せていたが。


      確かに浮かれていた

      → 楽しそうだった ←


「答えなくていいから!」

「ああ、恥ずかしい」

「もう今日は帰るわ。ああ、あと楽しかったわよ」

彼女はどんよりと沈んだまま、帰っていった。

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