序章2

 ――僕は目を覚ました


 濫立する木々の中、土を下に眠っていたようだ


 深々とした緑の中、頭を抱えながら起き上がる


 空を見上げると、三日月が出ている。月明かりのおかげでかろうじて周りを見渡せた。


 どうやら森の中にいるようだ


 だけど、なぜここにいるのかが思い出せない


 記憶を呼び起こそうとすると、頭がズキズキ痛む


 僕は一体何を――


 問いかけても返答はない。ただ静寂が続くだけであった


 しかしその時、いや、静寂な空間だからこそ、奇妙な音が響き渡った


「グググググググ」


 その音は鮮明に僕の耳を叩く。どこから発せられたかはわからない。それでも確実にその奇妙な音はした。


 この音は、まるで――




       ドラゴンの鳴き声みたいだ


       → 洋館の扉が開いているのか ←




 鈍い音が響き渡る。さび付いた重いものが動く音、まるで洋館の扉が開いている音だ。


 音がした方向に行くことにした。もしかしたら誰かに出会えるかもしれない。ここから出る方法を教わる、あるいは、一晩泊めてもらえられれば助かるのだ。


 希望的観測ではあったが、僕は強く願った。


 木々を抜けると、そこには――


 ――洋館が建っていた。朽ち果てた見た目をしており、いかにも森の中にある奇妙な館だ。怪しげなオーラは館全体を包んでおり、どこの窓を見ても固く閉ざされており、灯りも漏れていない。それでも、扉だけが開け放たれている。


 この館に入ってもいいものか。そもそも、誰かここに住んでいるのだろうか。あまりにも不気味な気配だ。


 しかし、暗い森の中を当てもなく歩くことも、野外で一夜を明かすこともためらわれた。


 逡巡の末、僕は扉をくぐり、声をあげることにした。


 誰かいますか。


 僕が尋ねても、返答はない。


 ここにはだれも住んでいないようだ。


 落胆したが、次にここに泊まるかどうかを思案した。人がいないと言っても、勝手に館で寝るのは褒められた行動ではないだろう。


 しかしその時、ふと1つの疑問が浮かび上がった。


 この館には人が住んでいない。


 だとすると、この館の扉を開けたのは一体誰なのだろうか。


 背筋が凍る思いをして、館の扉のほうへと駆け出した。


 ここにいてはいけない。


 早く出なくては。


 しかし、扉の前にたどりつく前に――


「ギギギギギギギ」


 ――再び、鈍い音が響いてくる。


 僕が扉につく頃には完全に閉まっていた。


 扉を力強く押してもびくともしない。何者かによって閉ざされてしまっている。


 そして何者かとは、おそらく人ではない存在。


 僕は絶望して腰を落とした。


 すると、どこからか声が聞こえてくる。甲高い少女のような声だ。


「ねえ、遊ぼ」


 気が付くと目の前には少女が立っていた。


 いや、立っているというよりは浮いているようだ。


 僕は恐怖のあまり、目を閉じて、耳をふさぐ。


 それでも少女の姿は、声は何一つ変わりなく見える、聞こえる。


 どうして。


「最初はかくれんぼがいいな。私が隠れるから。探してね」


「見つけられるまで、帰っちゃだめだからね」


 そういうと、フッと少女は消えた。


 目を開けて、あたりを見渡しても、そこには誰もいない。


 探さなくては。


 見つけられないと帰られない。


 僕は館中を探し回った。


 しかし、少女が見つかることはなかった――。




 ――そして、僕は一生、館から出ることはできなかった。




       GAME OVER

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