現人神の言う通り

エルサリ

序章1

       過去の記憶が存在します。


       記憶を消去してゲームを開始します。


       → OK ←




 静かな。


 とても静かな空間。


 今、僕は夢を見ているのだろうか。


 頭がふわふわとする。


 そのふわふわとした感覚のまま――


 ――僕は目を覚ました。


 濫立する木々の中、土を下に眠っていたようだ。


 深々とした緑の中、頭を抱えながら起き上がる。


 空を見上げると、三日月が出ている。月明かりのおかげでかろうじて周りを見渡せた。


 どうやら森の中にいるようだ。だけど、なぜここにいるのかが思い出せない。


 記憶を呼び起こそうとすると、頭がズキズキ痛む。


 僕は一体何を――。


 問いかけても返答はない。ただ静寂が続くだけであった・


 しかしその時、いや、静寂な空間だからこそ、奇妙な音が響き渡った。


「グググググググ」


 その音は鮮明に僕の耳を叩く。どこから発せられたかはわからない。それでも確実にその奇妙な音はした。


 この音は、まるで――




       → ドラゴンの鳴き声みたいだ ←




 ――ドラゴンの鳴き声みたいだ。なぜそう思ったのかはわからない。だけど、僕にはさっきの音が、遠くでドラゴンが叫んでいる声のように聞こえたのだ。


 まさか――。


 ドラゴンなんているはずがない。それでも好奇心というものは恐ろしい。僕は声のした方向へと歩き出した。心のどこかではドラゴンを見てみたいと期待していたのだ。


 木々を抜けると、そこには――


 ――ドラゴンがいた。全長10メートルは超すであろう真っ赤な大きな体だ。肌は硬い鱗に覆われており、翼に爪、牙に、そして鋭い眼光。その目は高いところから僕をまっすぐと見ていた。


 見つかっている――。


 僕は、本能的に危機を悟った。あの目は獲物を見る目だ。ここから逃げなければならない。


 そう思った。


 そう思ったが


 脚が動かない。


 腰が抜け、ドシンと尻もちをついてしまう。


 ドラゴンが襲い掛かってくる。


 もう、おしまいだ。


 そう思ったとき――




 ――僕はそのまま、ドラゴンに食べられてしまった。




       GAME OVER

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