You'll never walk alone ⑤

 会議が予想だにしない終わり方をしてから十分後、会議室に残ったのは――、

 

 カンパニュラ

 カンパニュラの秘書二人

 それから青児と、ウィムに置いてけぼりにされたIの五名だった。

 

 ウィムは宣言のあと何も言わずに消え、ルイスたちや佐伯は事後の対応のため各々の本社ビルや執務室に急ぎ足で戻って行った。


 どうやらIがWCCの意思表明をした映像の一部も世界中に流出したらしい。幸い、根回しなどのグレーな部分はさすがに漏れなかったそうだが、彼らは対応に追われていた。会議後、カンパニュラに「青児は残ってくれ」と命じられたので、先のことを見据えて王一星ワン イーシンにメッセージを送っておき、特にやることもなかったのでしばらくぼけーっと頭を休めていた。


「さて待たせたね。きみなら私の言うことも察しはしてると思うけど」

「『Iのチームに入れ。優勝しろ』ということでしょ。四季のスポンサー付きで」


 本日はWCC予備選の開幕十日前かつ組み合わせ決定日の前日にも関わらず、いきなり新しいチームを作れときた。無茶ぶりが過ぎる。普通ならノーと突っぱね返したところだが、上司命令をできませんとも言えない。


「そう。事前の話し合いでは、Iは一応私の所有物になっていたからね」


 青児は呆れて半笑いになりながら返す。


「わかりました。でも、条件が条件なんで、メンバー集めに関してはお金とか交渉とか、なりふり構わずやりますよ」

「構わん。好きにやれ。あ、人事部には異動手続きと、それからチームの部屋を申請しておくように。そこらへんの作業は一人じゃ大変だろうから、律子に少し手伝わせる」

「了解しました」


 カンパニュラが立ち上がると、無表情を貫き通してきた律子は青児の方を見て小さく口の端を上げる。


「さて、私は行くよ。これから別の会議に出るんでな」

「ちょっと待ってください。Iのこと忘れてませんか」


 立ち去ろうとするカンパニュラを青児は慌てて呼び止めた。Iは彼女のために造った自律型護衛ヒューマノイドだ。三ヶ月前に逃亡したとはいえ今はここにいるのだから、平時は彼女の側について本来の仕事をするべきだろう。


「あー、それね。いいよいらない……って返すのも失礼か。I、命令だ。青児を護衛しろ。こないだも事件に巻き込まれてたし、ちょうどいいだろ」

「かしこまりました」

「えー……」


 せっかく大量の資源を導入して作り上げたのに、それを呆気なく断られるのは今さらながら徒労感がどっと押し寄せてくるものだ。それにIが決して不要というわけではないが、青児の護衛にしてはオーバースペックじゃないのか。


「私を殺せる者などいやしないさ」

「これまで以上に、周りは敵だらけですよ」


 先ほどの宣言と映像の流出で、四季はこれまで以上に世界中から注目を集めるだろう。その矛先がIだけでなく、カンパニュラにも向くことは必然だ。


「関係ない。最終的に勝つのは私たちだ」


 しかし、彼女はきっぱりと断言した。そのくらい自信が無ければ四季の役員は務まらないのか、或いは既に算段はついているのか。


「じゃあよろしく頼むよ。〈分析者アナライザー〉」


〈分析者〉。

 半年ぶりに呼ばれたその名前に、背骨がぐっと反応した。

 カンパニュラと第一秘書が退室してから、Iには色々と訊きたいことが沢山あった。しかし、Iとほとんど面識のない律子の前であれこれ訊きだすのはなあと、広くなった会議室で青児は悩む。

 緊張感を溜め込んでいたのか、雑務を命じられた律子は、はあ、と大きく息を吐いた。


「手伝わせて悪いな」


 本来であれば彼女がやることではないが、命令ならやるしかない状況に青児は少し同情した。


「仕事だから仕方ないわ」

 

 律子はそれまでの事務的な口調から、少し抑揚を付けて返す。


「ただ、敢えて言わせてもらうなら、自分たちの身を案じた方がいいわよ」


 はじまったよ。数年来の付き合いがある青児は、いつものお節介に苦笑する。


「ただでさえWCCは過激なコンテンツなのに、今度のはこれまでと比較にならないくらい荒れるのが目に見えてるじゃない。それに、どうしてIを受け入れたのかしら」

「って言ってもなー」


 Iがいなければ、この状況は生み出されなかった。


「Iが入るに関わらず周りの状況は変わらないと思うぞ。俺たちの仕事が増えるかどうかくらいだな」


 ウィムたちの思惑とは別に、振り回される律子らからするといい迷惑だろう。律子らの労力に対して報酬が弾むわけでもない。


「ええ。だから大変だと言ったのよ」


 律子は髪留め用のゴムを取り出し長い黒髪を結いながら、不満を零す。

 青児はつけている眼鏡から、律子は埋め込み式のBICBrain interrupt chipから仮想デスクトップを起動させる。

 眼鏡のレンズ、或いはコンタクトレンズから複数のモニターが表示されると青児たちは仮想キーボードを叩き、目の前に映る申請書を淡々と捌く。


 青児たちが生きていなかった頃、デスクトップはまだ体から切り離されていた。青児たちの祖父や祖母の時には、まだ家庭にも普及していなかったという。それが、小型化・低価格化を重ね、父や母の時には手の平サイズのデバイスが普及していらしい。そして四季の子会社が開発したBICがもたらすデジタルの福音は、これまで以上に青児たちをインターネットに繋いだ。


 仮想デスクトップ、仮想キーボード。これらを現実と繋げるユビキタスな社会は人々がこれまで見落としていたデータをすくい上げることに成功し、社会全体の暮らしをより快適にした、とされている。少なくとも健康や経済を組み込んだBICを青児は評価しているし、手荷物が少なくなることは大歓迎だ。だが、結局選んだのは拘束されていない動物を気付かれずに監視する首輪ではなく、取り外しが可能な眼鏡型デバイスだった。


「お茶は必要ですか?」


 いよいよ手持ち無沙汰になったIが、青児たちの方に近寄って声をかけた。Iが悲しいと感じるかは別として、必要とされない機械ほど哀れなものはないだろう。


「律子はー?」

「いらないわ。なるべく早く終わらせましょ。お互い昼ご飯は食べたいでしょうから」


 多目的会議室と役員会議室の間にある給湯スペースでは、それぞれの好みの飲み物を煎れることができる。しかし、最上階の給湯スペースを使わせるのは気が引けるし、喉も渇いていなかった。


「じゃあ大丈夫だ」

「かしこまりました」


 Iはそれ以上自分からは何も言わず直立の姿勢を保つ。

 青児が人事部との異動手続き、律子がマンションの管理会社への手続きに振り分けてから、作業は順調に進んだ。


「とりあえず水道ガス電気は問題ないわ。今日からでも使えるそうよ」

「そうか。助かる」

「ただ、少し掃除が必要かもしれないわ。二年ほど空き部屋になっているところだから」


 四季がスポンサーのWCCチームは、一つの住宅で生活をしながらWCCに向けてトレーニングをする。チームメンバーと常に話せる状態にいる方が連携をとりやすいというのは、通信技術が発展しても変わらなかった。

 早く終えた律子はまだ作業を続けてる青児をよそに、Iに興味を示した。


「I、一つ訊いてもいい?どうしてあなたは権利を求めたのかしら」

「それ訊いちゃうの?」


 キーボードを入力する手を止め、思わず突っ込む。Iとの距離感を掴みかねていた青児にとっては、三段ジャンプで詰めるようなものだった。


「おかしい?」

「デリカシーがないとまでは言わないが、律子にしてはいささか急だなと」

「あら。普段のあなたなら、『デリカシーを気にしなくていいのが、モノである機械の最もよい点だ』と言うじゃない?」


 隙の無い切れ長の瞳が青児を捉える。


「何事にも例外はある。あと俺の真似だとしたら下手だぞ」


 リンネウス間では必要な配慮も、機械相手では命令一つで済んでしまうのが、使用者にとっていかに楽なことか。だがIはもしやすると、モノと『リンネウス』の境界線を越えてしまったのではないかいう考えが、先ほどの会議で頭をよぎったのだ。


「私は構いませんよ」


 Iは気にしていないような振る舞いを見せ、律子は続けた。


「映像を確認したけれど、あなたがWCCへの意思表示を求められたとき、わたしは人類種を滅ぼすのかと思っておそろしくなったわ」

「映画の見過ぎだな」

 機械が戦場を埋め尽くしても、機械を使うのは結局『リンネウス』たちだ。OODAループ(〈Observe捜索〉、〈Orient探知〉、〈Decide交戦の決定〉、〈Act交戦〉)という自律型兵器システムの交戦ループがリンネウスたちを排除しようが、どれだけ拠点を破壊し死体や残骸の山を築き上げても、その過程には必ずリンネウスたちの意志決定が存在していた。


「あなたがそれを言うの?」


 だが、律子は辛辣だった。


「律子さんの質問ですが、人類種ヒューマン風に言うのであれば、生きるためでしょうか。あなたたちが権利によって生存を保証されているのと同様に、機械が権利で自らを保証することは、おかしなことですか?」

「そういう理屈ね」


 リンネウスであることに基づく普遍的権利は、なにも自然発生したわけではなく、長い歴史を通して確立された近代憲法の不可欠の原理だ。

 その原理が新しく生まれたIを枠に当てはめていない現在、彼女の命は限りなく軽い。


「律子さんたちからすれば死よりも恐ろしいことは私にはあります。ですが、その次の次くらいには、需要のために稼働し続けることの優先順位が高いのです」

「ちなみに一番目と二番目に恐ろしいことを訊いてもいいかしら?」

「一番目については、回答を控えさせて頂きます。二番目は……そうですね、お払い箱になることでしょうか」


 Iが応えるまでに、妙な間があった。


「そう。需要を満たせないことがあなたにとって死ぬよりも怖いなんて、ますます私にはわからないわね」

「判断材料を『使用者にとっての優先順位』と置き換えれば、理解して頂けるでしょうか。使用者の需要を満たした上で使用後に廃棄されるのと、使用者の需要に適わず倉庫の奥で埃を被ること、どちらが使用者にとってよいでしょうか」


 Iはあくまでモノとしての立場を貫いているように思えた。使用者の需要を満たすこと。機械として稼働し続けること。しかし、一番目は何なのか、答えたくないというのが、かえって青児の興味をそそった。


「でもその理屈で言うと、もし五年後十年後……細かくはわからないけれど、Iを上回るAIが市場を埋め尽くす時は来るわ。新しいAIが淘汰するときに備えて、あなたは権利を主張したのかしら?」


 製品サイクルタイムは現在に近づくにほど、顧客のニーズの変化や技術確信の速度が、その寿命を悉く縮めていった。ムーアの法則が続くうちは、小型化や・低コストが消費者を歓迎するのとは反対に、コンピューターにとっては後継機が自分の寿命を益々短命にしてしまっていた。


「前半部分はおおむねその通りですが、後半は違います。権利の主張は、先ほど回答を控えさせて頂いた部分に該当しますので、申し訳ございませんが――」

「もう大丈夫よ。あなたの考え、わからないなりに理解したわ」


 青児はIが回答を拒む行為よりも、拒むことへの理由が知りたかった。


「ただ、あの会議でメディアや情報を受けとった大衆がどう判断するかは、難しいところね」

「もうメディアは騒ぎ立ててる。仮想ニュースやSNSのトレンドは、WCCとIの話題で持ちきりだ。情報も偏っているけどな」


 作業しながら開いていた仮想ニュースや、VR空間のコミュニティでもその話題で引っ切りなしだ。もう情報戦は始まっていた。


「一部はサクラでしょうね。こういうのだけは、政府も企業も動きが早いのよね。佐伯さんも四季側のPR企業に奔走していたし、ご愁傷様だわ」

「俺も後日、PR担当とミーティングが決まった」


 律子は仮想デスクトップを閉じる挙動をすると、髪留めを外して立ち上がる。


「さて、私もそろそろ行かないと。青児、あなたの方はもう終わるの?」

「あと三十分くらいはかかるな。やれるうちに異動先の手続きを終わらせておきたい」


 異動先の子会社には前にも一度同じ手続きをしたことがあるので、慣れている分、時間はそこまでかからない。


「I、この人のことよろしくね。細胞が九十九パーセント仕事でできてる仕事中毒者ワーカーホリックだから」

「カンパニュラさんに年中付き添ってる奴には言われたくない」

「あら。待ち合わせの時間に仕事があったことを言い訳にして遅れた挙句、途中で仕事に呼び出されて私を置いてったのはどこの誰かしら?」

 

 どっちもどっちだと返す青児に対し、律子は昔のことを持ちだしてきた。またそれかと呆れてため息も出なかった。


「相変わらずお前は人を苛つかせる天才だな。もう百回は謝っただろ。未だに忘れないなんて、脳の容量の無駄遣いじゃないのか?俺だったら一日で忘れるぞ」

「お生憎様、それくらいで無駄と感じるほど、ポンコツじゃないわ。旧世代のを積んでそうな人とは違って」

「そういうところだよな。それに、あの時はでかい仕事を掛け持ちしてたから仕方がなかったんだ。今はそこまで忙しくない」


 大学の途中でAIの開発に専攻を変えたときや、Iのプロジェクトと同時進行でWCCのオペレーターをしていたときに比べれば、今は仕事量が少なく楽だ。


「そういうところよ。この人がどんな仕事しているか知ってる?」

「興味はございます」

「変な気を遣う必要はないぞ。律子も早く行けって」

「そう。じゃあまた今度」

「礼はそのうちするよ」

「ありがとうございました」


 律子はドアの開けたかと思うと、何か言い忘れていたのかもう一度振り返った。


「あ、そうだ。あなたたちの部屋、少し掃除が必要なことは言ったけど、清掃業者が明日じゃないと来れないみたい」

「清掃用ヒューマノイドもフル稼働しているんだろ。急な依頼だし、仕方がないな」

「でしたら、私が清掃をしましょうか?掃除道具があれば、明日を待たずとも引っ越しが可能だと思いますよ」


 Iの思いがけない提案に、青児と律子は顔を見合わせる。


「なによ、あなたが決めればいいじゃない」


 私に求められても困るわよ、と律子は素っ気なく返す。Iには家事代行ヒューマノイドのソフトウェアも入れてあるが、進んで言われなければ頼む気にもなれなかった。


「そうだな……じゃあお願いしてもいいか。道具はこちらで手配しておく」

「はい」

「ていうか、I一人でどうやってマンションまで移動するの?」


 そりゃあ自動運転車だろ、と言いかけて青児はやめた。四季の自動運転車にしろ公共のタクシーや電車にしろ、個人IDの認証が必要でそれがないと運賃も払えない。律子はそれらの点を指摘したわけだ。


「あー……ちょっと待て」


 青児は懐からマネークリップを取り出し、そこから一万円の紙幣を渡す。その光景を律子は物珍しい目で見た。


「現金なんてよく持ってたわね。それまだ読み込めるの?」

「インフラが止まった時は強いんだぞ」


 それに――と言いかけて、青児はやめた。律子に今さら言っても仕方あるまいと、ある種の諦念に頬の肉が負けた。代わりに、領収書貰うのを忘れないでくれとIに頼む。


「かしこまりました。博士はいつ頃到着しますか?」

「午後六時には着くかな」


 書類申請が終われば、一旦自宅に戻って荷物の整理が必要だ。電化製品などの大きい荷物はマンションの設備だし、もともと私物も非常に少ないから引っ越し業者も手配せずに済むだろう。


「じゃあ、Iは私と一緒に下まで行きましょうか」

「では博士、お待ちしております」


 Iは一人でマンションに行かなければならないが、大丈夫だろう。もっとも、Iが逃げなければの話だが――、こうして戻ってきたのだ。もう一度はあるまい。そう信じて、青児は再び仮想デスクトップを開いた。





 結局、マンションに運んできたのは段ボール三つ分の荷物だけだった。四年間暮らしていたマンションは、新鮮さよりも懐かしさが蘇える。


 一階のエントランスで確認すると、律子に教えて貰った部屋は十階にあった。三十階建てなのでちょうど三分の一だ。青児はエントランスで台車を借りて、目的階までエレベーターで上がっていく。部屋は外部端末の個人IDから開錠できるので、あらかじめポケットから取り出しておこうと思ったとき、青児は気づいた。


 そういえば、Iはどうやって部屋に入るのだろう。


 部屋の鍵は手の甲に埋め込まれた認証IDから開錠するのが普通になっているし、外付けの鍵もないことはないが、あらかじめ申請しておかないと無人のエントランスでは助けてくれる人はいない。

 青児は急いで仮想デスクトップを立ち上げる。Iとの連絡手段は失踪依頼途切れてしまっているが、今なら繋がるはず。もしかすると、青児が見落としていた可能性だってある。


 エレベーターが開くのと、Iからの連絡が来ていないことを確認したのはほぼ同時だった。一割増しで台車を押す速度を上げて通路の角を曲がると、ドアの前には誰もいなかった。Iは無事に入れたのだろうか。

 開錠すると、Iが今日会ったときと同じ姿勢で直立していた。


「おかえりなさいませ、博士」


 部屋で使用人の恰好をさせていると、昔の使用人と主人の関係を想起させた。従来の家事代行ヒューマノイドであれば役割上何の問題も無いが、なんとなく彼女を使役している感覚が青児に不快感を与えた。

 その服しかないなら経費で購入するか?と訊くと、Iは意味を図りかねるように首を傾げた。


「博士が問題ありとお考えならば」

「……いや、後にしよう」


 暖簾に腕押しをしているようで、少しだけ頭が痛くなってきた。Iに趣味趣向はないのだから、訊く必要がないのは理解している。なにせ開発したのは青児たちなのだから。しかし、Iの青児たちが考えていたものとは振る舞いに驚かされたと思いきや、今度はヒューマノイド通りの反応を返すそのギャップに少し慣れが必要だった。


「そういえばマンションの認証はどうした?」

「律子さんが前もって開けておくよう連絡してくれました。郵便受けには私が開けられるよう、外付けの鍵も頼んで」


 相変わらず気が利くなと感心する。彼女がいなければ、青児が来るまでIを待ちぼうけにさせるところだった。

 段ボール二つをIが持ち、青児は残りの荷物を新しい自室まで持っていく。途中リビングやキッチン周りを見たが、どこも家事代行ヒューマノイドばりに丁寧な掃除だった。もっとも同じソフトウェアを仕込んでいるので当然と言えばそれまでだが。


「お食事かお風呂になさいますか?それとも荷物の整理をなさいますか?」

「食事だな。献立のリクエストは荷物を部屋に持ってったら送る」


 自室の前までIに荷物を降ろしてもらって、ここからは青児の部屋だと自分で持って行った。宅配サービスで食事が届くまでの間、荷物整理をしようと思ったとき青児はふと思い出した。


「そうだ、I。明日は郊外の第二研究所の方へ出向く」

「私のハードを造った博士に会うのですね。スケジュールに入れておきます」


 WCCで使うIの武装のほとんどはそちらに置いてあった。


 カーテンを開くと、不夜城の街の光に照らされたドローンが青児の前を過ぎていった。

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