原因不明

入院7日目

左足の動きが少し悪い感じがあったが、早い段階からリハビリも入っていたおかげで徐々にスムーズに動かせるようになった。

食事も自力で摂れる。

「ここの食事美味しいと思う。」と食べることに興味がない息子が言う。

移動は、転ぶこともなく、トイレに行くこともできている。

寝たきりや麻痺が残るかも、と言われていたけれど、その心配もないようだった。


数名いる男性看護師が、夜勤に入る前に顔を見に来てくれる。

「今晩泊りだからよろしくな!」と顔を出してくれる。それに笑顔で会釈する息子。

こんなやりとりが見られるのがうれしかった。


主治医から、

「ヘルペス脳炎の症状がでていたので、その治療をしていましたが

ヘルペス脳炎ではないようです。もし、それなら、こんな風に動くことはできないので・・・原因は今のところ不明です。あと2~3日様子を見て変化がなければ退院としましょう。」と説明があった。


先生からの説明を息子に伝えると、あと少しで帰れると喜んだ。


読みたいマンガを部屋から持ってきてと言われて、毎日数冊交換して持って来た。

本を読むのに時間がかかる息子だが、それ以上に暇な時間がありすぎて、数回読んでしまうと。時間があってよかったねぇ、ゆっくり読めたねぇと話すと、そんなことがしたいわけじゃない、自分はただ帰りたいだけと切々と訴えていた。

同室の人たちの声にも慣れてきて、怖くない、夜の大声も気にならない。

でも、早く帰りたいと。


息子の病院嫌いに、さらに拍車がかかった。

「病院も入院も嫌いだ。」「毎日地獄だ。」

何を言っても、何をしても、私にはかわいく見える。


精神科の先生の診察があると説明があり、診察を受けていた。

私が面会に来る前に終わっていたようで、その日の午後に説明があった。


精神科の先生から

「年齢的に統合失調症の発症時期が重なるので、それも含めて診察しましたが

会話内容はまとまりと統一性があり、精神疾患を疑う症状は全く見られません。発症時の支離滅裂の言動だけを見るとウイルス性脳炎や精神疾患の可能性がありましたが、現在この2つの病気は否定できます。

お母さん、医療って進んでいるようでまだまだ分からないことがたくさんあります。

今回もそのわからない部分に入ります。そうなると、我々医師は、『ストレス』としか言えなくなるんです・・・。今回は、原因不明で、今後は『過剰なストレス』を避けて療養してください、としか言えない。」


このような形で優しく説明をしてくださった。


内科の先生も精神科の先生も首をかしげておられた。

「あの状態から麻痺もなく戻っているのは奇跡だよ。」


その言葉を聞いて 守られた と確信した。


「先生方、スタッフの皆様のおかげです!ありがとうございました。」

感謝しかない。

そして心の中で、おじいちゃんやおばあちゃんやすべての神様仏さまに感謝した。


内科の先生は、退院後1か月は学校を休み、その後登校して良いと。

スポーツも登校後はいつも通りにしてよいと言われ、待ちに待った退院日を迎えた。


学校へ連絡し、1か月学校を休むこと、その間は自宅へ帰る事、その後学校へ戻ったらいつも通りに過ごしてよいと説明を受けたことを伝えた。


 退院日はそのまま自宅へ帰ることにした。飛行機の席も2人分取れた。

バスと電車と飛行機での移動。

帰れるとニコニコしていた息子だったが、かなり疲れていた。

途中、何度も座れる場所を見つけては休み休み移動した。


自宅へ帰って来て息子はホッとしていた。

万が一、また具合が悪くなった時のためにリビングで休むことにした。息子の部屋で具合が悪くなって、私が気づかないということがないように。


息子は

「最高だねぇ。リビングで寝るなんて。」とニッコニコ。

入院の不便さを経験すると自宅は天国だと。学校も休めるし。ご機嫌で過ごした。


天国の1か月を過ごして、学校へ戻った。

体調が悪くなったらすぐに周囲へ伝えること、我慢しないこと。

約束して学校生活へ戻った。

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