法律もクソもない


「一言で言えば俺の両親は車に轢かれて死んだ」


「うっわちょっと待っていきなり暗い過去が出てきた」


「更に言えば妹はその事故で俺の両足を失った」


「なんかもうごめん」


気楽に聞いてごめんよホント。だってこうなるとは思わないじゃないか。いくら何でもそれは……。それは……。


「お前能力はその時に?」


「大体その通りだ。俺もまた死にかけていたが、この能力で何とか回復した。……だが、妹の足は既に……死んでいた」


「……」


ほら、盾我すら俯いちゃってるよ!ちょっと暗すぎないか?!なんかもう可哀そうだよ、ホントかは分からんが。


「で、妹はどこに?」


「病院だ。……どうなんだ?」


「か、かわいそうです!なおしてあげましょう!」


「そうか福音……。よし、福音が直すって言ったんだ、俺たちはそれに従うだけ!だが!お前が何か福音に害をなそうとしたらその時点でこの契約は破棄するからな!よし連れていけ」


福音が直すと言ったのなら、俺らは従うだけだ。一応盾我の盾は回収した後向かうがな。俺はともかく、盾我は今の話を聞いても普通に殴り倒せるだろうし。


「で、どこの病院だ?」


「……警察病院だ」


えっ?


「あっあいつプナだぞ!おい囲め囲め!」


「ワァ警察!何やったのお前!?」


「脱走してきた」


「お前結構アグレッシブなバカだな!?」


そもそも何の罪で捕まってたんだよお前!?あっあいつ知ってる。骸じゃん久しぶりに出会うな。出会いたくなかったけど。


「おい早くマスク持ってこい……ってか安達太良か?なんでいるんだ?」


「まぁ関係者だ。でこいつ何の罪で捕まったんだ?」


「え?そいつ?確かどっかのギャングと一緒にいたって奴だ。何かを探してたらしい」


……もしかして、お前福音を探してたのか?いろんな場所を渡り歩いて?


「お前どこで福音の事を知った?」


「こいつ」


「おい骸くぅん?」


トラブルメーカーの骸くぅん?一回ボコボコにされてんのにまだやるかい?


「俺ちゃんはそんな事言ってねぇよ?!と言うか何!?誰?!」


「彼女は福音。なんでも直せる」


「あっ言ってたわ」


「殺そうかなこいつ」


やっぱどっかで死なないとダメだわ。殺そう。


「おい骸。やはりお前が原因か」


「やはりって何!?ねぇ!もしかして今回の脱走俺のせいだって思われてる!?」


「あぁ。すまない、このバカが毎回毎回」


あっ葛城かつらぎさんだ。こっちは警察の光の方だから、普通に大丈夫。と言うより骸が異常なの。あいつのせいで事件件数二倍になってる可能性あるし。


「ところでプナ。貴様が今回脱走したそうだな」


「あぁ。どのような処罰でも受けるつもりだ。妹が助かるのであれば俺はどうでもいい」


「ねーねー葛城ー、そいつにも事情あるんじゃね?聞いてあげたらー?」


うわ骸がウザがらみしてる。あれじゃキレるぞ葛城。


「黙れ」


「ぴぃ!?」


「おっと目に悪い」


「おい首切られたぞ!」


骸に関しちゃ大丈夫。こいつの能力は『不老不死』。単純明快でクッソヤバい能力だ。だからどうせ死んでも生き返る。ほらもう生えてきた。


「でぇい!」


「生えたぁ!?」


「もう気にするな、どうせ復活する」


「あぁ。流石に首が転がって来たときは恐怖した」


「分かるかプナ。こいつ面倒なんだ」


ホントこいつ問題行動しかしないよなぁ……。ブッ殺してやりてぇなぁ……。一回ボコボコにされても何度でも復活するからなぁ……。っと、このアホと付き合ってると思考が暴力一辺倒になる。


「あの!前が見えません!」


「すまないお嬢様。今見せられない光景があった」


「何がですか!?」


うーん、と言うかなんで俺警察来たんだっけ?


「そう言えばこいつの妹はどうした?」


「……あっ」


完全に忘れてたよねぇ!いやちょっとメンツが濃すぎるせいで完全に見失ってたよね!うんそろそろやる事やらないとプナが可哀そうだからね!


「で、これが妹か」


「あぁ」


「では直します!危険なので触らないでくださいね!」


「頼む……」


おぉみるみるうちに足が生えていく。これやっぱ冷静に考えておかしいって、なんで無くなった足生えてくるんだよ?そう言う物って言えば仕方が無いが、そう言う事じゃねぇよな?


「ど、どうですか!?」


「ん……ここは……?」


「ラス!俺が分かるか?」


「お……お兄ちゃん……?」


「あぁ……ッ!目が覚めたんだなラス!」


おー。仲睦まじい兄妹の再開はいつ見てもいいものだ。


「さて、俺のやるべきことは終わった。もう捕まっても構わない。今回の一件で刑期は増えたんだろう?」


「あぁ」


「あー。あの、ちょっといいですか?」


「なんだ?」


「いやね、その。俺が口を出す必要無いとは思うんですけど。別にこっちは気にしてないんですよ」


あいつ、福音に対してやたら紳士的だったからな。……完全に俺のエゴだが、救ってやりたい。仮に行動が問題だとしても、俺個人として救ってやりたい。


「どうだ福音?」


「その……連れ去られた時は怖かったです。でも、そんなに被害は出てないと思うんです!」


「そうだよぉ?そいつ一人で出てって帰って来たし、脱獄って言っても別に問題じゃ無くねぇ~?」


「黙れ。……だが、今回の事件で被害者はさほどいないと言う事が分かった。ならば情状酌量の余地はあると言う事だ」


「……ちなみに元々の刑期は?」


「一か月だ」


短い!いや短いなぁおい!


「ちなみにガッツリ司法取引してまーす!こいつが関わったグループ一網打尽でーす!」


ヤバいよこいつ!やっぱヤバいって!


「その結果が一か月だ。とは言え……ほぼ刑期は終了していたようなものだ、あと二日経っていれば出所出来たはずだが?」


「あぁ。だが妹を回復出来ると知ったんでな。一日も惜しかった」


「……警察として、脱獄は罪だ。だが俺個人としてはお前が犯罪者とは思えない。だから今回の事件で一番被害にあったお嬢ちゃんに決めてもらおう」


「……えっ私ですか!?」


「あぁ。好きに言え」


うーん一体どんなことを言うんだ福音……。


「その、あなたがしたことは、ダメだと思います!」


「あぁ」


「ですから!瑠莉奈さんと一緒に私を守ってもらいます!いいですよね!」


「了解した。俺はあなたの……いえ、福音様の元に付く」


ん-……?えっどういう事?護衛追加?


「それでいいですよね!」


「あぁ、俺ちゃんとしては問題なーし」


「俺もだ。だがしっかり一か月、ここで暮らしてもらう」


「あぁ。……迷惑をかけてすまなかった」


なんか話がまとまってきてる!いや確かにこいつをこっち側に引き入れる事が出来るってんなら凄いヤバいよ!?


「俺らは気にするな。それよりいいのか?」


「……あぁ。妹を頼めるか?」


「しょうがねぇなぁ。んじゃ妹はこっちで預かっておく」


「あぁ。……ラス。このお兄ちゃんの言う事を聞くんだぞ?」


「かえってくる?」


「あぁ。お兄ちゃんが一度でも約束を破ったことがあるか?」


「ない!だいじょうぶだよね!」


「あぁ。……必ず」


と、言う訳で福音誘拐事件はこれにて閉幕だな!いやー無事に終わってよかった!


「そう言えばお前あのへんな奴はどうした?」


「変な奴?」


「あぁ、ほらあの毒手使いの……」


「……あ」


ま、いっか!

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