UFO襲来:盾我視点


「ここが九階か」


何も無いだだっ広い部屋だな。だが少なくとも目の前に誰かはいる。どうやらこの前俺を攫った奴だろう。


「お前名前は?」


「『烏有うゆうほう、では死んでくれ」


コイツの能力は知っている。UFOをこいつの自由に飛ばす事が出来ると言う能力だ。この前の戦いでは背後を取られ気絶させられたが、もう二度とそんなことはさせない。


「防げるのか」


「あいにく、なんでも防げる盾なんだ」


そして盾を投げつける。こっちもこっちで盾をアップデートさせてやった。多少コントロールが効くようになったのだ。今までは正面にしか投げられなかったが、今回のアプデでまともに飛ぶようになった。


「どうやら当たるのはまずそうだ」


「その通り」


UFOを盾にしてかわしたな。だがそれは悪手だろう。何度でも言うが、俺の盾はなんでも弾く、つまり近くで盾にした物だって吹っ飛ぶって訳だ。


「ぬッ」


「不可視化したのが仇になったな」


ようやくUFOの姿がお披露目か。そんなに格好良くないな。アダムスキー系のUFOって感じなのだろうか?攻撃性能は高そうだな。


「なるほど、甘く見ていた」


「当然、俺だって成長する」


「理解した。なら戦法を変えよう」


ん、UFOがさらに加速しやがった。光で軌道は見えるが中々厄介だ。


「かなりの速度だな」


「あぁ」


また背後か、なら防げば……いや、いきなり動きやがった。


「ぐぅ……ッ!」


背後からと見せかけて正面を攻撃してくるとは……!中々ふざけたことをしてきやがる。今ので骨が折れたんじゃねぇのか?いや間違いなく折れてるな。


「中々……やるなお前」


「盾以外普通の人間が勝てると思っているのか?」


「確かにな。その辺は認めよう。……だが、お前も結局ただの人間だろ?」


「何?……ッ!」


盾の形とUFOの形が似ててよかった。攻撃を食らった時点で、俺は盾を手放してた。そしてお前の後ろに浮かせてたんだよ。


「ぎぃっ……ッ!」


「いてぇよな?それで御相子だ」


これでダメージは五分、いや奴のが上か。そしてついでに言えば、二度とお前に攻撃のチャンスは戻ってこない。


「UFOが乱れてんぞ」


「ぐっ……がぁっ!」


そりゃ、UFOが使えなくなったらお前は接近戦をするしかねぇよな。だがまだ俺は盾を戻してねぇんだ。その意味が分かるだろ?


「戻ってこい」


「何ッ!?」


戻ってくる盾のスピードは結構速いからな。……安達太良の奴には殺すなと言われているが、こいつは生かしておく方が問題になる奴だ。


「ク……アアアァァァァァ!」


「じゃあな」


戻ってきた盾に合わせ腹にパンチ。全体重をかけたからかなり痛いだろうな。そして戻ってきた盾に肉体が弾かれて真っ二つだ。


「お前に恨みがある訳じゃ無い。……ただ、死んでくれ」


そもそもお嬢様に危害を加えた時点で許す気はない。そしてこいつよりもお嬢様の方が心配だ。あのボスと名乗っていた男は相当強い。恐らく安達太良の奴がマジで殺しあってようやく勝てるだろうってくらいの強さだ。


「ぐ……。流石に、このまま行くのは無理か」


折れた骨じゃ安達太良の助けにもなりやしねぇ。それならまだ、ここで帰ってくるのを待ってた方がいいかもしれねぇ。……けど、そんな訳にはいかない。


「安達太良の奴がしくじるとは思えねぇし、負けるとも思ってねぇ。だがアレは強い」


せめて盾だけでも貸すべきだろう。今の俺に出来る事はこの程度だけだ。だから上るだけだ。


「……最上階にいるのか」


「死ねぇ!」


上から声が……っ、お嬢様が上から落ちてきやがった!?急いで飛び降りなければ!


「お嬢様!」


「盾我!?そこはヤバいぞ!」


何?な……落ちない!?なんだ!?浮いてるぞ!?


「すまないがしばらくそこで漂っていてくれ!」


「盾我!掴まれ!」


なっ、何がどうなって……いや考えてる暇はない!掴むぞ安達太良!


「よし!追うぞ!」


「なんだあいつは?」


「アレが本当のボスだ!今まさに福音が連れていかれた!であいつはなんか知らんがヤバい能力を持ってる!いきなり動きが遅くなったり、気づいたときには後ろを向いていたりと何が何だか分からん!」


なんだそれは……?だが少なくとも俺が出会った方はじゃねぇのは確か、何もわからない以上一緒に行った方がまだいい!


「俺も一緒に行くぞ」


「そうか!とりあえず死ぬなよ!」


しかしこの先には……確か廃工場があったはずだ、もう使われてないが……。恐らく武器は大量、奴のホームグラウンドと言った所か。


「おい廃工場に入るぞ!」


「俺らも行くぞ!」


お嬢様は無事なのだろうか?……とりあえず盾を投げてけん制するか。


「おっ投げるのか」


「あぁ。何かあったら頼む」


普通なら真っすぐ飛ぶはずだ。……普通なら。


「おい落ちたぞ!」


「いや、今のは全力で投げた。……なのに明らかに異常な場所で落ちた」


「つまり……、どういうことだ?」


「恐らく、この中では既に奴の能力が発動されていると言う事だ」


「……なるほど」


恐らく俺はここでリタイアだ。さっきから足が言う事を聞かない。


「安達太良。……後は頼む」

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