その名
うーん家に来た訳だが、家デッカ。俺の作った家とかゴミその物じゃん。その辺の浮浪者が作ったダンボールハウスの方が言えって呼べる代物とは言え、流石にデカすぎんだろ。
しかも部屋多すぎじゃない?マップくれよ。迷うよこんなの。実際迷ってる奴いるしって福音じゃねぇか!お前も迷うのか……。ねぇ大丈夫?この家本当に大丈夫?
「という訳で、今日から福音の護衛に付くことになった」
「あ、ありがとうです……。ところで、お名前、聞いていませんでした」
「あー。そうだったな。俺の名前は『安達太良瑠莉奈』だ。安達太良と呼べ」
「そ、そうですか!ルリナさん、いい名前ですね!」
「……そうか?」
「はい!」
初めてだな、この名前が良い名前だって言われたの。基本的に男のくせに女っぽい名前とか、書きにくいんだよとか、可哀そうだとか。散々言われたけど、福音だけが俺の名前をいい名前だって言ってくれた。
「でも、アダタラさんって呼ばないといけないんですか……?」
「いや、……ルリナと呼んでくれ。それでいい」
「で、では今日からよろしくお願いします、ルリナさん!」
しかし、どうしてこんなにも厳重な家に入れてるんだろうな?そんなに厳しいんだろうかね?多分こいつは能力者なんだろうけど、よっぽど強い能力なんだろうな、これだけ厳重って事は。
「ところで福音は能力者なのか?」
「あ、はい。なんだか凄い力らしいです!」
「ふーん」
……まぁいいか。そんな気にする事でもないだろうし。それよりもう一人……えーっと、『
「お嬢様、お体を洗いますのでこちらに」
「あ、はい!ではお風呂に行きますので、失礼します!」
さてと、こっからはあいつに聞かれるわけにはいかないよなぁ。生々しい話だし。
「んで金よ金。いくら出るの?」
「その前に、一つだけ」
「なんだ?」
「お嬢様の護衛になろうとする者は沢山います。ですが雑魚がお嬢様の護衛に付くことは問題になるのです」
そりゃそうよな。強いだけで護衛になれるなら、誰だって護衛になれるもんな。と言う事はやっぱそれ以外の何かが必要って感じか。強さはとりあえず問題ないしな。
「あぁ、そうだな。何か試験でもあるって事か?」
「以前お嬢様を救っていただいたとき、その時に実力は見せてもらっています。……確かめたいのはお嬢様の能力を聞いても裏切らないと言う事です」
「やっぱ強い能力持ってるのか」
まぁそんな問題になるほどヤバい能力じゃ無さそうだが。あんな戦闘本能が頭から抜けてるような、カカポ以下の強さの奴がまともに使える能力を持ってるわけがない。まぁせいぜい固定砲台になれる能力とかだろ。
「お嬢様の能力は完全回復です」
「……ん-?」
「完全回復です」
ワァ!聞いたことあるよぉ!確かクッソヤバい能力じゃねぇかおい!確か昔この能力を得るために国と国がぶつかって共倒れしたって逸話があるあの!?えっそんなクソヤバ能力をあんなカカポに持たせていいの!?
「やべぇじゃん」
「はい。我々としてはなぜお嬢様にこのような強すぎる能力が発現してしまったのか、分からないのです。本来であれば蝶よ花よと育てられるはずはずなのですが、能力を持ってしまったせいでこの屋敷に半分幽閉されている……という訳です」
「……俺とは真逆だな」
「へ?」
「いや、なんでもねぇ気にするな」
俺の能力は明らかにクッソヤバい能力だ。マジで何でも作れるしなんでも出来る。だからこそ俺でなく両親が狙われた。父親はどっかに行ってたんで狙われることは無かったが、母さんは俺を操るために攫われ殺されかけた。
俺は迷わず両親との縁を切った。もう母さんに迷惑をかけたくないから。そこからは適当な場所に家モドキを作って、逃げながら過ごしてきた。学費?ほらその辺は能力でちょちょいとね。
「……そうだったのか」
あいつと俺は、まるで違う癖に似た者同士なのだ。だからこそ引き合ったんだろう。守る動機もこれで出来た。……実質妹みたいなものだ。あいつと俺は。能力が強すぎてそれに振り回されている同志。
「それで賃金の方なのですが」
「賃金はいらん。この家で生活させてくれ」
「は、はぁ……それでもかまいませんが。ご両親などは……」
「俺は両親とは既に縁を切っている」
「……」
何だその顔は。俺を憐れむんじゃねぇ。確かに俺は満足しちゃいねぇけど、それでも公開は一切してねぇんだよ。俺は。
「だからいいだろ?」
「えぇ、お嬢様もあなたの事はお気に入りのようですし」
「福音が?」
「えぇ。まるで兄のように気に入っているのです」
そうか……。俺兄弟いねぇからよく分かんねぇけど、やっぱ憧れるのかねぇ兄弟に。
「そう言えばあいつ何歳?」
「今年で十六歳になります」
「そうか……」
てことは俺と二歳しか変わらないんだな、明らかにそれ以下の年齢に見えるんだけど。ぶっちゃけ一桁台だと思ったからな?逆に十六歳でそれはちょっとヤバいんじゃねぇの?
「教育とかしないの?」
「したいのですが、まともに勉強を教えられる者が少ないのです」
「そりゃそうか」
……じゃあ俺が教えても問題ないって事だよな?
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