第2話 謎のメモの持ち主探し
〈あらすじ〉
花野陽菜と、青葉和樹は、水曜の放課後担当の図書委員である。前に一度、謎を解いたことがある2人はまたもや謎を見つけてしまう。謎の言葉が書かれたメモは誰のものなのか?
暇すぎる図書委員2人の謎解きが始まります!
「リンゴの枝とタンポポ」
「お、『り』から始まる物語、答えられるようになったんですね?『ぽ』だから『ほ』ですよね?…星の王子さま」
「ま?マッチうりの少女」
「よだかの星」
「し、し、少女パレアナ」
「ナルニア国物語」
「り、またり⁉︎り…りぃ…こ、降参です」
暇な図書委員2人、俺、青葉和樹と、花野陽菜は物語しりとりをしていた。
「なんとか返しても、コンマ1秒もせずに返されるとさすがに俺でも心が折れそうだ…」
「青葉くんはもう少し『り』の物語を調べてください。はい、これで私の10連勝ですね。もう一回しますか?」
ニコリと微笑む花野の後ろに悪魔が見えた気がしたのは気のせいだろうか?
「も、もう十分だ…」
10回も勝負をしたし、もう花野も満足したかと思ったがそうではないらしい。
週のど真ん中の放課後、ということもあり、図書館は閑散としている。この前の週は一年生が校外学習をしたせいで人数が少ないのかと思ったが、あまり先週より増えたという感じはしない。
「もう少し、この学校は読書に力を入れた方がいいんじゃないか?」
「蔵書数自体は問題ありませんから、多分みなさん忙しくて図書室に来られないのでしょう。運動系はほとんどもうすぐ試合ですし、文化系も、演劇部はもうすぐ公演、美術部は演劇で使うもの作り、あとは…」
「囲碁将棋愛好会は試合、天文愛好会もレポート提出が迫っているらしい。どこも休む暇なんてないくらい大変だろうな」
それに対して図書室はゆったりとした空気が漂っている。
「私たちもそろそろ仕事しましょう」
「まずは本の中チェックか…」
この前もあったように栞が挟まっていたりすることがよくあるのだ。まずはカウンター当番中に返された本の中をチェックだ。
一冊目をぴらぴらとめくると…。
「あ、一冊目から中身あり」
「何が入ってましたか?…ん?これは…メモですかね?」
ノートの端を破って書いたようなメモが入っていた。
「えーっと…桜→PZ 木→BZ 灰→GI 犬→WI&BI…って何ですかね、これ」
紙には、
『桜→PZ
木→BZ
灰→GI
犬→WI &BI
金→YI』
というふうに沢山の言葉と英語が書かれている。
「謎だな…桜、木、灰、犬、なんの関連もなくないか?」
すると花野は何かを考え込むように黙り込む。何か思いついたんだろうか?
「これ、全部花咲か爺さんに出てきませんか?」
「花咲か爺さん?」
言われていれば、全て花咲か爺さんに出てくるものだ。だが、なんでそんなものを書いたのか謎が深まるだけである。
「なんで、花咲か爺さんなんかメモしてるんだ?相当な暇人なのか?」
「なんか、私、花咲か爺さんを最近どこかで聞いた気がするんですよね…」
「本当か⁉︎ちょっと、考えてみてくれ!」
花野がどこで聞いたかを思い出している間に俺は英語の意味を考える。全て、英語の2文字目はIかZになっている。これにも何か意味があるのか?というか、そもそも文字が急いで書いたせいなのか汚すぎて読みづらい…。まずは1文字目を考えよう。P、B、G、W、B、Y…。わからん…。
「なぁ、花野、これを返しにきた人ってどんなやつだったか覚えてるか?」
「えーっと…体育着を着た女子だったと思いますよ?ほら、私たちの学校って基本制服で過ごさなきゃいけないじゃないですか?だから覚えてました」
俺たちの学校では、体育着を着ているのは体育の授業前後か、放課後の部活前後だけという決まりがある。
「つまり、返したのは運動部、ということになるか…」
ほとんどの運動部はもうすぐ試合である。そんな時に本を返しにくるとは考えづらい。つまり、もうすぐ試合がない運動部の人が返しにきた、ということだろうか?
「あ、そういえばその人すごく急いでるみたいでした。多分、試合の近い人なんじゃないんですか?」
試合の近い?なら、なんで今日返しに…。貸し出し日の日付を見ると二週間前の金曜日に借りている。つまり、返すのは明後日でも問題はないはずだ。
「なんで、今日?誰がどうして…」
明日と明後日に外せない用事でもあったのだろうか?
「明日と明後日って、何かあったっけ?」
「明日と明後日ですか?えーっと…確か演劇部の公演が…あっ‼︎花咲か爺さん!」
花咲か爺さん?
「そうですよ、演劇部ぐ花咲か爺さんをするらしいんです!」
「じゃあ、このメモは演劇部の誰かが?」
いや、待て。なら、なんで体育着なんかを?
「演劇部なら、役者の衣装を着るんじゃないのか?それに、このメモの英語の意味もわからない」
メモを本から取り出してパタリと本を閉じる。
「あーっ‼︎」
突然、花野が叫び思わず俺はビクリと震える。
「ここは図書室だぞ⁉︎声の音量考えろ!」
「え、いや、だってこの本…私、謎が解けたかもしれません!」
そう言われて本のタイトルを見る。
『演劇美術のコツ』
「多分、これは演劇部に協力してる美術部の人が返しにきたんじゃないんですかね?最初から本のタイトルをみればわかったじゃないですか!もう!」
いや、俺に怒られても…。
でも確かにその通りだ。このタイトルをみればすぐにわかったはずだ。
「確かに、演劇美術ならインクで汚れないように体育着をきていたのも納得だな」
「インク‼︎」
またもや大きい声を上げた花野に思わず俺は怒鳴る。
「だから、ここは図書室だって言ってるだろ!静かに!」
そんな俺の言葉を聞いているのかいないのか、花野は話を続ける。
「この英語は色てすよ!ほら、見てください」
『桜→PZ
木→BZ
灰→GI
犬→WI &BI
金→YI』
「桜はピンク、木はブラウン、灰はグレイ、犬はホワイトとブラウン、金は…イエローですよ!」
っ‼︎確かにそう考えれば辻褄が合う。
「あ、でもその後のZとかIとかはわからないですよね…」
「なぁ、もしかして、これ英語じゃないんじゃないか?」
へ?と不思議そうに俺を見る花野に告げる。
「Zは2、Iは 1なんじゃないか?字が汚いからそう見えるだけで…ほら、こことかZの上の部分が2みたいに丸くなってるだろ?」
「本当ですね!」
つまり、桜→PZは、桜→ピンクのインク2つということじゃないのでは?
「じゃあ、このメモを挟んだのは美術部で演劇で使うものを作っている人か。多分、このメモは美術部の人が発注するインクを書いたメモなんじゃないのか?」
納得したように花野は頷く。
「で、これからどうするんだ?」
まぁ、なんとなくはわかるけど。
「じゃあ、この推理があってるか、確かめに行きましょう!」
もちろん建前は、このメモを返しにいくということだ。
結論を言おう。
俺たちの推理は大正解だった。メモを渡した先輩にはこれを、探していたんだ!と、感謝され花野は満足そうである。
「なんだかんだでまた謎解きをしちゃったなぁ」
「まぁ、楽しかったですけどね!」
それには俺も同意する。
「俺たち、結構探偵に向いてるかもな」
冗談でそういうと花野はニコリと微笑んで告げる。
「まぁ、実際はただの暇な図書委員ですけどね」
その言葉を境に謎解きムードは消え、俺たちはまたカウンター当番や、物語しりとりを始める。
俺たちの暇な水曜日の放課後はまだまだ続いていく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます