56『面倒事はいつだって唐突にやってくる』
『――と、いったところで今回の配信はここまでかな。
『ん、こちらこそいろいろと話せて嬉しかった』
『お二人とも子育てトークが弾んでましたもんね!』
¥3,000
【子育てトークで草】
¥5,000
【あの子に友達が出来て良かったとか二人して話してたからな…】
【宵の言ってた通り百々ちゃといざなは相性良かったね】
¥1,000
【母親コンビすき】
『この後は…誰の配信があるんだったかな? はい、あかりさん!』
『えっ!? あ、えと…と、
『正解! というわけで、この後ある永遠さんと桜の配信も是非見てね』
『お、お二人からはお知らせが…じゅっ! 重大発表があるそうなので、み、見てください…!』
『それじゃああかりさん、それに獣王さん、終わりのじゃなーを!』
『も、
『ん、じゃなー』
¥10,000
【自分の配信予定より他人の配信予定に詳しい女】
【推しの配信スケジュールだけは忘れない男】
¥800
【この貴重な百々ちゃのじゃなーが俺を狂わせる…】
【重大発表??】
【なんだなんだ】
¥2,000
【番宣できてえらいぞ因幡】
【このメンバーでもっと絡んでいけ】
【定期開催頼む】
【じゃなー!】
◇
【再戦!?】いち、にっ、さんっ期生コラボ!【#オンライブ】
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オンライブ公式チャンネル✓
チャンネル登録者数 54.5万人
33,249 人が視聴中・0分前にライブ配信開始
オンライブのライバー達がカプセルトイに登場!
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◇
…なんとか二度目の先輩達とのコラボも乗り切ることができた。百々ちゃがいれば前よりはずっと楽だろうと思っていたのだが、実際には悪ノリする人が
今週は…いや今週「も」か…? …はもう本当に疲れた。なぜかいきなり本社にも呼び出されたしな! 蓋を開けてみたらモーションキャプチャの体験会みたいなもので、まぁまぁ楽しかったというか、舞台裏を見られたようではえ~って感じだったが。その場にいた
『…桜、もしかしてちょっと太った? 膝枕の弾力が少し変わった気がする』
『ふとっ…!? …え、えへへ…よく分かるねハル…じ、実はちょっとだけ…』
『膝枕ソムリエの資格は伊達じゃない。それはそれとして前の膝枕とはまた違う味わいで
などと考えながら永遠さんと桜ちゃんの配信を見てモリモリと元気をチャージしていると、いきなりスマホから通話の通知音が鳴った。最近は意外とこういう事が増えてきたので慣れてきた…なんてこともなく絶賛焦っている。え、えと、ちなみに誰からだ…?
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au 4G 15:19 ➤95% ▆
神無月 志姫
携帯電話
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■ スライドして応答
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恐る恐る確認してみれば、表示されている名前は今さっきちょうど思い浮かべていた人物…神無月さんだった。
『やぁ、お疲れ様、
「あっ、は、はい…お、お疲れ様です…」
通話に出ると、神無月さんはいつもの調子でここ最近の配信の内容を褒めてくれたり、何か困ってることはない? 等々聞いてくる。マネージャーさんはよく怒るが、そういえば神無月さんに怒られたことは一度もない気がするな。
初回のTS暴露の時も大笑いしてたくらいだし、その他諸々のやらかしでもそれは同じだった。普段からいろいろやってる身としては本当にそれでいいんだろうか…と思わなくもないが、怒る役割はあくまでもマネージャーさんが、ということなのだろうか。
まぁそんなことは置いておいて…。
「そ、それで…きょ、今日はどんなご用が…?」
『あかりさんとお話がしたくって』
「えっ」
予想外の返答に呆気に取られていると神無月さんが「半分くらいは冗談」と笑った。…ついさっきまでコラボしていたからそう思うだけかもしれないけど、なんか神無月さんってこういうところ幽世先輩と似てる感じがするな?
それはそれとして、どう返したらいいか分からない冗談はやめてほしい。
『そう、それで…実は今日は話したいことがあってね。「オンライブフェス」というイベントを10月の終わり頃に予定しているんだけど…ああ、ちなみに今やっている
『ここでみんなにお知らせがありますっ! なんと今月末に、オンライブでは初めてのリアルイベントが開催予定だよ!』
『私達二人の3Dライブはもちろん、なんと同期の
『できないからね!?』
『…と、ちょうど二人がその話をしてくれているみたいだね。少し補足しながら私からも説明しようか』
オレが流していた二人の配信が聞こえていたのだろう、そう言いながら、つらつらと、何でもないさっきまでの会話と何ら変わらないテンポと口調で神無月さんがイベントの説明をしてくれる。曰く、オンライブも三期生までデビューして人もそれなりに多くなった。なのでここらで大きなリアルイベントを開催することにした…と、そんな話だ。
さて…久しぶりに死ぬほど嫌な予感がする。こういう悪い方面の勘だけはよく当たるのがオレという人間なのだ。いや分かってるよ、オレもそのイベントに出るっていうのは! 当事者意識? がないとかよく言われるけど、さすがに話の流れでそれはもう分かる。でもなんかもっととんでもないことを言われそうな気がするというか…。
『…で、あかりさん。君にお願いしたいことがあってね』
ほら来た!!
「え、あ…えと…それはどういう…?」
『うん。君には一期生、二期生のみんなと一緒にステージに上がってもらおうと思って』
「え」
『具体的なメンバーは一期生からは春乃桜さん、永遠遥歌さん。二期生からはミラ・エインズワースさんと
少しだけ勿体付けるように、お茶目さを滲ませながら神無月さんは告げる。
『君だ、宵あかりさん』
「――ぁ…っ!? な、なんで! なんでオレなんですか!?」
一瞬あまりのショックに意識が遠のいてしまったが、何とか立て直して叫ぶように聞く。
『まず一番は、君が今一番三期生の中で勢いのある人だから。二つ目に、勢いがある人達を集めたらとても面白そうだから。最後に、私の妹が君がいいと言っていたから、かな』
つまり深い理由なんかなくてただ面白そうだから集めたメンバーってことじゃん!? てか妹…??
『ああ、さっきまでコラボしていた幽世誘さんは私の妹なんだ。それで、コラボした時の様子なんかを私に教えてくれてね』
オレの訝しむような反応を電話口から感じ取ったらしく、先回りして説明してくれる神無月さん。……えっ!? 幽世先輩って神無月さんの妹だったの!? …もしや幽世先輩に対して話しやすいって感じていたのは、幽世先輩の手厚い会話サポートの効果だけじゃなく、既に遭遇して何度も話したことのあるタイプだったからなのか…?
いや、今はそんなことはどうでもいい! と、とにかくオレには無理です死んじゃいますということを何としてでも伝えなくては!
そう思い、口を開こうとするが…。
『君が面接に来た日、宵あかりとしてデビューした日、日々の配信に、オンライブ夏祭りや歌祭り…全部、君はちゃんと乗り切って、最高のパフォーマンスを見せてくれた。そんな君ならきっとできるよ』
「あ…ぅ…」
何かいろいろと言おうと思っていたのに、言葉が出てこなくなってしまった。
『だから、少しだけ考えてみてほしい。もしその上で本当にダメだって、無理だって思ったのなら…その時はきっぱり、この話はなかったことにしよう!』
配信後で疲れているだろうに、こんな話をしてしまってごめんね、と言って一旦この話はおしまい、と神無月さんは話題を変えた。
…今までは気が付けば全部が決まっていて逃げ道なんて用意されてなかったのに、なんで今回ばかりオレに選ばせようとするんだよぉ…。というか姉妹揃って絶対オレを困らせるのを楽しんでるだろ!!
文句はいくらでも湧き上がれど言葉には出ず。つまりは結局のところ選択肢などあってないようなものだった。
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