55『無自覚に薪を焚べるようなお話』

『みんなこんばんは! オンライブ三期生、よいあかりだよ! 今日はこんな遅い時間にごめんね』


 その夜私は――


『こんよいよい? いいよー、こんよいよいっ! えへへ、どうかな? …か、かわいい? えっと、あ、ありがと! …顔あっついや、慣れていかないとダメだーって思ってるんだけどなー…』


 ――確かに、もう一つの太陽を見た。



 脳を焼かれる、というのはまさにあの瞬間のようなことを言うのだろう。あかりちゃんの例のボイス配信から一日が経ち、私はようやく落ち着いて思考を巡らすことができるようになった。


 ボイスを聴き、さらに彼女の配信で生であの・・あかりちゃんを体験した時には本当にどうなってしまうことかと…深夜だというのにゆいなや百々ももにこの感動を即通話をしてお裾分けしたくらいだ。二人からはもう寝ようと何度も言われたけれど、あかりちゃんが寝るのを見届けてから寝るつもりだったので、彼女が寝落ちしてしまう所もしっかり見ていた。

 百々も私に付き合って起きていたせいで寝落ちしてすぐに百々からあかりちゃんのお母様に連絡が行き、楽しみにしていた二度目の寝息ASMRはキャンセルになっちゃったけど…まぁそれは仕方ないかな。


 それはそれとして、そろそろあかりちゃん本人にも今回のボイスや、プロトあかりちゃんについての感想を伝えよう。でないと後々、彼女とコラボした時なんかに爆発してしまいかねない。それでなくてもキャラが崩れてると言われる機会が最近増えつつあるし、あかりちゃんがそんな姿を見たらガッカリしてしまうかもしれない。は?? あかりちゃんは優しいからそんなことでガッカリなんてしないんですが?? むしろ新しい一面って言って喜んでくれるまである…良い子すぎ…。

 …まずいまずい、ちょっと私と私が解釈違いで喧嘩をしてしまった。一旦深呼吸して落ち着こう…そういえばあかりちゃんの深呼吸ASMRとかにならないかな…。すっごい需要あると思うんだけど…。よし、落ち着いた。


 前はあかりちゃんと通話するのにそこまで緊張なんてしなかったのに、ここ最近はちょっと緊張するようになってしまった。それはそれであかりちゃんと話が合う部分もあって嬉しいんだけど、我ながららしくないなぁ、とも思う。

 普段のようにあかりちゃんへ通話していい? とメッセージを送ると、「大丈夫」とやや時間を置いて返信が来た。とっさにスクショを撮る。また一つ、あかりちゃんの敬語じゃないコレクションが増えてしまった。このちょっと時間置いてるのも葛藤が感じられてすごい好き…は?? 推しを葛藤させるな。


 あかりちゃんから許可も取れたし、さっそく通話する。スタンバイしてくれていたらしく(そういう所も好き)、彼女はすぐに通話に出てくれた。


『お、お疲れ様…』

「うん、お疲れ様あかりちゃん!」


 努めて緊張が伝わらないように、お疲れ様を返す。そしてあかりちゃんのタメ語に急に限界オタクになってしまわないように細心の注意を払いつつ、まずは勧めてもらっていたVtuberの話や、あかりちゃんに教えてもらいながらやっている、最近彼女がハマっているソシャゲの話なんかを振っていき、お互いの緊張をほぐしていく。


『あー、あのキャラは確かにちょっと性能に癖ある…でもクッッソかわいいから使ってるけど…』

「ねー! そのうち別衣装も来るかなぁ」


 あかりちゃんがすらすらと詰まる事なく友達感覚で話してくれることに感動を覚えつつ、それを今は私一人が独占しているのだということを噛み締めながら…キリの良い所で次のフェイズへ。


「そうそう! あかりちゃんのボイス聴いたよー! プロトあかりちゃんすっっごい良かった…」

『ほ、ほんと…? え、えへへ…』


 本命であるボイスの話を振り、落ち着いて自分が思うボイスの魅力をいや可愛すぎか?? えへへってやばくない!?!? いややばい(確信)。私の中の冷静な部分が一瞬で消し飛ばされそうになった。もう声がすっごい嬉しそうなのも反則でしょ…それ私じゃなかったらすごいことになってたよあかりちゃん。


『ん、ん゛ん…褒めてくれてありがとっ! ちょっと照れちゃうけど、嬉しい…!』

「ぁっ…」


 それはもう反則とかってレベルじゃなくない!?!? 急にプロトあかりちゃんの声! 演技! え、なんでそんなにノリいいの?? そんなにサービスしてくれるの?? もしかしてあかりちゃん私のこと好き??


「もしかしてあかりちゃん私のこと好き??」


 あっ、声に…声に出ちゃった…!?


『え』


 やっちゃった…絶対今あかりちゃんフリーズしてるよ…我ながら今のはなかなかキモかったもん…うわぁ…もしかしたら当分通話してくれなくなるかな…信頼が崩れるのは一瞬って言うけど本当に一瞬じゃん…。


「ご、ごめんあかりちゃん今のは――」

『い、いろいろVの話とか、ゲームの話とかできて! た、楽しいし…は、初めてできた友達みたいで…だ、だからその……す、うぅ…』

「え」


 え。


『あっ、ご、ごめんなさい…と、友達…じゃなくて、し、仕事仲間…? とかなのかな…わ、分からないけど…』

「あっ、違う違う! うん、そうだよね! 私達は友達だよ! 仕事仲間でもあるけど友達!」

『と、友達…えへへ…』


 嘘…あかりちゃんってもしかして聖女か何かなのでは…? 「私のこと好き?」とかいう面倒くさい質問にめっちゃ必死にしっかり考えて答え返してくれたんだけど。推すしかないじゃん。推してたわ。

 しかも友達って言葉にもすごい喜んでくれてる。…学校の子達はいったいこんな良い子を放っておいて何してるんだろうか。私が同学年だったら保護して…いや、もしかしたらこの純粋さを損なわないよう遠巻きに保護してるのかもしれない。俗世に触れさせたくないなってなるもん。私もたぶん理性が保つ限りはそうするだろうし。


『あっ、そ、そういえば…ほのかちゃんのボイス聴いたんだけど、す、すっごく良かった…』

「ほ、ほんと!? ありがとうあかりちゃん!」


 そんなやり取りの次は流れるように暁仄のボイスを褒めてくれるあかりちゃん。こういうところが本当にもう…(絶句)。


(…なんかちょっと友達って言葉にチクって来た気がするけど気のせい気のせい!)


 少なくとも今はこれでいい。今のこの一歩ずつ進んでいくような関係性もすっごく好きで、楽しいものだから。

 あかりちゃんの純粋さに触れてちょっと浄化された気がする私だった。


 まぁそれはそれとして――


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    オンライブ公式✓

    @ON_HoNoKa_Akatuki                …


 プロトあかりちゃんこと、宵あかり(プロトver)のボイスが発売

 され(こちらから購入できますhttps:~...)、ほんの少しだけ私が

 思ったことを書かせてください。

 プロトあかりちゃんのボイスを初めて聴いた時、私は全身を丸ごと

 あかりちゃんという太陽に包み込まれているように感じました。

 あかりちゃんが思う、「太陽にだって負けないくらいに輝く子」が

 一切の曇りもなく、直接伝わってくるんです。そこにいるんだと、

 存在しているんだと思わせてくれて、実在性がプロトあかりちゃんに

 は確かにありました。配信で実際に、その姿を見せてくれたことも

 これを後押ししているんだと思います。プロトあかりちゃんは生きて

 いるんです。そして日々楽しく配信をしているんです。

 

 ただこれだけは絶対に知っていてほしいのですが、プロトあかりちゃん

 の魅力は普段のあかりちゃんが存在するからこそ無限の輝きを放っている

 のであって、それなくしてはそもそも成り立たないんです。あかりちゃん

 あってこそのプロトあかりちゃん。これを忘れないでください。


 私も絶対に忘れません。 


午前0:39 · 20XX年9月26日·1.1万件の表示

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  o〇 33     ↺ 2917     ♡ 8025      □ 2    ↑

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    返信をポスト                  返信

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    キリノさん@xxxxxxx・2分              …

    ええ…

    o〇          ↺        ♡ 2      ↑

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    ひの@xxxxxxx・2分                 …

    仄ちゃん…?

    o〇          ↺        ♡ 4      ↑

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    サラダ犬@xxxxxxx・3分               …

    私 も 絶 対 忘 れ ま せ ん

    o〇          ↺        ♡ 15      ↑

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    平熱39度@xxxxxxx・4分               …

    ちょっと狂気を感じるけど言いたいことは分かるよ仄ちゃん…

    o〇          ↺        ♡ 1      ↑

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    何も分からん@xxxxxxx・4分             …

    深夜にこれがスイっと出てくるのすごいな…

    o〇          ↺        ♡ 7      ↑

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    柚月ゆいな✓@ON_YuI_YuzuKi・7分         …

    大丈夫???

    o〇 5         ↺ 509       ♡ 2211   ↑

────────────────────────

    獣王百々✓@ON_Momo_shishio・8分         …

    ダメそう

    o〇 7         ↺ 498       ♡ 2087   ↑

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 結局、この後盛大に爆発はした。

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