48『【オンライブ】先輩達と初コラボする枠【宵あかり視点】part1』

【オンライブ】先輩達と初コラボする枠【宵あかり視点】

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宵 あかり

チャンネル登録者数 25.1万人

21,361 人が視聴中・0分前にライブ配信開始

#アカリウム #オンライブ

宵あかり視点です。なんか公式視点があるらしい→(@ONLive)



『やあやあ、みんな! オンライブ一期生、幽世かくりよいざなだよ』

『オンライブ二期生の夜闇よやみメアです! こんにちは!』

『い、因幡いなば白兎はくとです…』


 先輩達との孤独なコラボ配信が遂に始まってしまった。…今回は完璧にオレの自業自得だって? まぁそうだね…。

 何にしても、百々ちゃやマネージャーさんにあんな風に言ってしまった以上、今回は喋れそうなタイミングを見計らって何とか喋っていかなくてはならないだろう。あと失言というか、ヤバそうなことは言わないように気をつけなくては。…正直これについてはオレだけが悪いわけじゃないと思うし、何なら八割くらいはコメントの連中のせいだと思うけど!


『今朝告知していた通り、今回は獣王ししおう百々ももさんは体調不良でお休みだよ。五人での配信を楽しみにしてくれていたリスナーのみんなはごめんね』


 既に公式アカウントからも告知していたからだろう、コメントでもちらほらと話題に上がっていた、百々ちゃの件について幽世先輩が触れた。


【百々ちゃ大丈夫なん?】

【ただの風邪とは言ってたけど心配すぎる】

【前日の配信でもちょっと違和感あったけどやっぱりか…】

【喉は仕事柄酷使しがちだもんなぁ】

【ゆっくり休んでもろて…】


 さすが百々ちゃのリスナーさん達は本人がそういうVtuberだからか優しい人が多いらしい。これがもしオレだったりしたら「仮病だろ出てこい!」とか言われてそうだもん。…しかし百々ちゃ、ちゃんと休めてるかな? 配信前に三期生のみんながメッセージくれてたけど、その中に百々ちゃはいなかったし今は寝てるんだと思うが…一人暮らしの風邪は身体以上に精神的にも来るものがあるって聞くし…お、お見舞いとか行った方がよかったかな…?

 と、そんなことを考えながらコメントを見ていると、ちらほらとオレについての話が混じり出した。


【百々ちゃも心配だけど宵は大丈夫か?】

【あかりちゃんくん絶望してそう】

【宵一人で先輩達と!?!?】

【宵が死んでしまう】

【今の所一言も喋ってないけど生きてるの宵】


『い、生きとるわい!』


 ちょっと考え事してたら挨拶し損ねたから黙ってただけじゃん!? いや確かにちょっとこのまま影に潜めないかな…とか思ったりもしたが!

 さっきまでの百々ちゃを心配する優しい声達はどこかへと去り、代わって【宵、挨拶】だの【今日は偽桜ちゃんで頼む】だの、挨拶のシチュを要求するコメントが現れ始めた。お前らさぁ…こんな先輩達やそのリスナーさんがいる中でそんなことできるわけないだろ! 何なら普通に挨拶するのすら難しいわ!!

 絶対何言ってんだこいつらって先輩達に思われてるぞ、まったく…内輪ネタは内輪だけで完結させないと…。


『じゃああかりさんには自己紹介を…せっかくだし桜の声真似のやつでやってもらおうかな?』

『あ、あの…私はできたらこんよいよいをお願いできたら…』

『え゛っ』


 ひ、拾ってくるのかよ!? ていうかそういうの好きそうな幽世先輩はともかくメアちゃん先輩まで!? しかしおずおずといった様子で言ってくるメアちゃん先輩はとてもかわいらしい。いやかわいいけどそういう問題じゃなくて…!


【メアちゃんからリクエストだぞよかったな宵!】

【こんよいよいは悪魔界でも絶対流行らせろ】

【初めに挨拶しなかった宵が悪いので諦めてはよ挨拶しろ】

【いけ宵!】


 い、因幡先輩は…ダメか、ごめんなさい…みたいな表情をしてらっしゃる。因幡先輩が初めにしっかりと挨拶をキメていたのはこういった無茶ぶりを避けるためだったのかもしれない…さすが先輩。オレより長く幽世先輩達と付き合ってないらしい。

 …もう分かったよ! やればいいんだろ、やれば!!


『はーいお待たせ! みんなの輝く一番星、オンライブ三期生のよいあかりだよ!! みんな、こんよいよいっ!』


【うるせぇ!!】

【このヤケクソ感すこすこ】

【冷静に聞いてみるとあんま似てないな…】

【こんよいよい感謝…】

【太陽みたいに輝いてみせるから!】

【草】

幽世誘✓ 【草】


『そこ草じゃないが??』


 なにしれっとコメントに混ざってんだこの人!!


【宵がツッコミ側なの新鮮すぎる】

【メアちゃんノックアウトされてて草】

【メアちゃんは可愛い物と小動物に弱いから】

【宵は実質小動物なのでドストライク】

【そういや前にハムスターのケージで飼われてましたね…】


『えっ、あ、あかりちゃん、ハムスターのケージで飼われてたの!?』

『あっ、いや、あれはリスナーさんが勝手に…』

『り、リスナーさんが勝手に…!? そ、そんなことが…』


【すごい勢いで誤解が広がっとる】

【メアちゃん…?】

【メアちゃんもまぁオンライブだからな…】

【ちょっと可愛いものに目がないだけだろ!】

【敬語取れちゃったメアちゃん可愛すぎる】


 何かを考えこむかのように真剣な表情を浮かべるメアちゃん先輩。おそらく仄ちゃんに近いタイプの人なのだろうとこの短いやり取りの間でオレは察しつつあった。つまり、こんな顔して思考はあらぬ方向に飛んで行っているに違いない…!


『こらこら、メア』


 が、さすがにこれは幽世先輩も見過ごせなかったらしい。よ、よかった、これでメアちゃん先輩の誤解を解いて――


『君が考えていることはよく分かるけど、もううちには白兎がいるだろう?』

『ひえっ!?』


 ――くれなかった。なんならこの状況を一番面白がってるのはこの人だろうし、なんとなく分かってたけども! しかも因幡先輩にまで飛び火してしまう始末。申し訳ねぇ…。


『ちゃ、ちゃんとお世話しますから! 飼わせてください…!』

『ええ…』


【ええ…?】

【飼 わ せ て く だ さ い】

【因幡と初対面の時も飼おうとしてた実績があるメアちゃん】

【こういうところの感覚はやっぱちゃんと悪魔なんだよな…】


 しかし飼うって。…でもしっかりお世話してくれて優しくて美人な人になら飼われてもいいかもしれない。あれ? よくよく考えたら…


『飼われるのも普通にアリなのでは…?』


【こら!!】

【あのさぁ…】

【乗り気になるな】

【ツッコミに戻れ】

【そういえばこういうやつだった】

【やっとらしくなってきたな】


『…! 幽世先輩!』

『だーめ。そもそもあかりさんには獣王さんやあかつきさんという保護者…いや、三期生の人達みんなが保護者かな…が付いてるんだから、きちんと許可を取らないと。また今度、獣王さん達がいる時にね』

『うう…分かりました…』


 よく分からないがメアちゃん先輩は諦めてくれたようだ。ちょっと残念…じゃなくて、よかったよかった。…これあとで本当に百々ちゃ達に許可取りに行ったりしないよね…?

 まぁともかく、次は向こうのペースに乗せられないようにこちらから仕掛けるべきだろう。こんな思考をできるようになっただけマジでめちゃめちゃ成長していると思うのでたくさん褒めてもらいたい。えーと、今日の天気は…おっけー、いくぞ…!


『あ、あの!』

『あのっ…!』


 あっ因幡先輩と被った!?

 しかもさっきまで黙ってたのによりによってタイミングで!? い、いや、もしかしたら因幡先輩とオレと同じように考えたのかもしれない…あるいは次に無茶振りが飛んでくるのは自分だと思ったのか。どちらもありえる…!


『そ、その…い、因幡先輩からどうぞ…』


 こういう時は先輩に譲るべきだよね。…少なくとも因幡先輩が話している間にオレにヤバいモノが飛んでくることはないだろうし…。オレが喋りたかったけど仕方ないなー相手は先輩だもんな!


『い、いえ、よ、宵さんから…』


 やはり思考回路が似通っているのだろう、両者譲り合う展開になってしまった。空かさず『せ、先輩! 因幡先輩の方が先輩ですから…!』と先輩後輩なら先輩に優先権があることをアピールするという、超高等技を披露する。因幡先輩を困らせてしまうのは申し訳ないが、ここはもはや戦場だ。そんな綺麗事は言ってられない。


『あ、えーと…それは…』


 言い淀む因幡先輩にガハハ、勝ったな! と勝ちを確信したその瞬間だった。


『もういっそのこと二人でいっせーのでで言えばいいんじゃない?』

『えっ』

『あ…』


 か、幽世先輩!?

 その言葉に因幡先輩はそうしましょう! とさっきまでの追い詰められぶりが嘘のように言い放つ。く、クソぉ…これが先輩方の洗礼というやつなのか…!? てか同時にってなんだよ!? しかし乗らなかったら乗らなかったで何か別の、下手するともっと面倒な事を言い出しかねない。や、やるしかない…!


『い、いいお天気ですね…?』

『き、今日はいいお天気で…』


 み、ミラーマッチ…!?


【そんなことある??】

【そうはならんやろ】

【なっとるやろがい!!】

【争いは、同じレベルの者同士でしか】

【スターターデッキ戦じゃん】

【配布デッキでランクマッチに来るな】


『ま、まだまだ暑いですよね…!』

『そ、そうですね…い、いつまで暑いんでしょうか…』

『えっ!? えっと…た、たぶん今月はずっと暑いんじゃ…ないでしょうか…?』

『そ、そうなんですね…』

『は、はい…』

『………』

『………』

『そ、その…』

『は、はい…』

『た、ターンエンドで…』

『あっ、は、はい…』


【ターンエンドで草生えた】

【会話のターンエンドってなんだよ】

【勝手に終わるな】

【因幡もはいじゃないが??】

【ちゃんとミュートしてるけどいざなクソ笑ってて草】

【メアちゃんのとりあえず笑顔しとこ感よ】


 そ、壮絶な戦いだった…。しかしこれまでで一番しっかりお互いに会話できていた感じがある。お天気デッキでミラーマッチするとは思っていなかったが、お互い一歩も譲らぬ戦いだった。特に、いつまで暑いのかという部分に対してどっかで見た今月中は基本暑い、という情報をとっさに返せたのはデカかった。このアドリブぢから…きっと百々ちゃもすごいと褒めてくれることだろう!


『ふ、二人とも…フフ…ゴホッ…ん、んん゛! 二人とも、会話が弾んでいたようで何よりだ。ね、メア』

『えっ!? あ、は、はい! そうですね、二人ともやり遂げたって感じの表情がとっても可愛いと思います!』


【最大限の配慮を感じるコメント】

【いや実際めっちゃ二人とも頑張ってたと思う】

【いざないつまでツボってんだ】

【ドヤ宵とドヤ因幡】

【ようやく互角の相手に巡り会えたんやなって…】


『さて、打ち解けてきたところで…せっかくだし一つゲームでもしないかい?』

『げ、ゲームですか…?』

『と言っても、レクリエーションみたいなものだよ。全員一致ゲームは知ってるかな?』


 名前の通りだけど、と幽世先輩が全員一致ゲームなるものについて説明してくれる。他の呼び方だと「以心伝心ゲーム」や「意志疎通ゲーム」などと呼ばれるパーティーゲーム…用意されたお題に対して全員が同じ回答をすることを目指す…らしい。はえ~。


『今回はちょっと変わったお題にしようか。オンライブのメンバーの中から一人選んで、その人の印象…イメージをみんなで一致させてみよう』

『例えば永遠先輩だったら歌がすっごく上手、みたいな感じですか?』

『そうそう。とは言え、今回はお題がお題だからあまり気負わずにね。けど賞品はあった方がやる気が出るか…そうだな、もし一致したら…うん、ワタシをあげよう!』


 意気揚々とそう言い放つと、幽世先輩は以前配信で制作していた自分のフィギュアを配信画面に映し出した。前見た時は白一色だったはずだが、今見えている物はきちんと色が付いて、より一層フィギュア感が増している。え、すご…。


『どうだい?? 彩色作業中に強度不足からか何度か足の部分が折れて心まで折れそうになったが、そのおかげで積層方向により工夫を加えることが…』

『いらないです』

『わ、私もあんまり…』

『……あかりさんはどうかな?』

『えっ!? お、オレは…普通に欲しいかも…』

『さすがあかりさん! もう無条件でプレゼントしたいくらいだが勝ち取ってこそ価値のあるものもあるからね』


 正直パーティゲームってだけでとっつきにくく感じるが、ゲーム自体は単純なもののようだし……ちょっとだけ頑張ってみるとしよう。フィギュアも欲しいし!


『じゃあ早速始めようか! まずは――』

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