閑話 エイムとサーカス団の出会い

 第1部完了&ハート獲得記念&次は星も欲しいよ祈念にエイムの入団のきっかけを書いてみました(理由が雑念だらけで申し訳ありません……)。


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「そういえばエイムの家族はどんな人たちなの?」

 サーカス団の旅の途中、野営中に一緒に不寝番をしていたルナがふと思い出したようにエイムに聞いた。

 焚き火をぼんやりと見つめている振りをしつつ、ルナの横顔を見つめていたエイムは慌てて視線を夜空へ向けてから思い出そうとした。

 エイムが転生した記憶を取り戻したのは12歳頃のことだった。その後の人生のはっきりとした記憶に残っているが、その前の人生は前世と混在しているせいか、急速にあやふやになりつつあった。もちろん話せるのはこの世界での人生だ。

「そうだね。八百屋の両親と兄がいてね……」


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 エイムの生い立ちはたいへん平凡なものだった。

 家は小さな町の八百屋の次男だった。両親は近くの村の農家の出身で結婚を機にこの町へ移り住んでいた。村で採れた野菜を売り歩いていた父親が店を構えたという形だった。

 長男はさほど賢い方ではないが外交的で八百屋を継ぐのに適していた。それは周囲も認めていたし家族も同じだった。

 次男であったエイムは12歳までは兄と外見も性格もそっくりだったが、ある時を境に大きく性格が変わった。

 音楽に目覚めたのか一日中歌っていることが多くなったかと思えば、店の経営について突飛な意見――だが取り入れてみれば売り上げが急上昇した――を言うようになったりした。

 またときどき誰に借りたのかわからない楽器を手にしていることもあった。

 音楽の天才、ということはなかったが練習を続けているおかげか徐々に演奏も歌もそれなりに上手くなっていた。

 八百屋の経営は盤石で兄を手伝って二人でそれぞれ家族を養って食べていくことも容易だと思われたが当のエイムがこの様子では層はならないのだろう、と皆が思っていた。

 だからといって家族関係は至って平穏だった。

 次男だということもあるが、それ以前にそれぞれの人生はそれぞれが決めれば良い、両親も兄もそう思っていたのだ。

 とはいえエイムが家を出ると言い正したとき、家族はとても驚いたものだ。


 エイムがもうすぐ17歳になろうかというころ。町へサーカス団がやってきた。

 ときどき巡回のサーカス団がやってくるのだが、小さな町にとってそれは一大イベントだった。

「サーカス団が来たんだってな」

 夕食を食べながら父親が言った。

「今日、食堂のマールさんが言っていたよ」

「サーカスが?」兄とエイムは声を揃えていった。

 父親やその様子に微笑んで、「あぁ。明日から公演だそうだ。お前たちも時間をとっていいぞ。できれば店のこともあるんで別々にしてもらえると助かるがな」

「もちろん」二人は揃ってうなずいた。

「日にちをずらすよ」兄が続けて言う。

「そりゃそうだろうさ」エイムはふざけて言う。「兄さんはポーラさんを連れて行きたいんだから。お邪魔虫は連れて行かないさ」

 兄は顔を赤らめた。「お邪魔虫なんていわないぞ」

「冗談だよ。でも当てつけられても困るしね。明日は先に俺。兄さんは明日にでもポーラに約束を取り付けてくればいいじゃない?」

「仕方ないな。それがいいだろう」兄もうなずいた。

「エイムは誰を連れて行くの?」母親が興味深そうに言う。

 年齢的にはそろそろ特定の、結婚を前提とした相手がいて当然なのだが、エイムにはそういったそぶりは見られていなかったので両親はちょっと心配していたのだ。

「一人で行くよ」

 エイムはそんな両親の心配を知ってか知らずか平然と答えた。

「サーカス団でも音楽流すよね。楽しみだなぁ」


 前世の記憶のあるエイムはサーカスには場を盛り上げる様々な音楽があるに違いないと思っていた。

 確かにサーカスはとても面白く観客も沸いていた。

 だがそこには場を盛り上げる音楽はなかった。


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「……とこんな感じですかね。このサーカス団に入れてもらうまでの人生は」

 エイムは話してみて思っていたよりもいろいろと覚えていたことに自分で驚いた。

「多くを忘れていたと思いましたが、話してみたらけっこう覚えてましたね」

「よい家族だったからじゃないかしら?」ルナは微笑んだ。

(「新しい家族になってもらえませんか?」なんて言えたらと思い、顔が火照るのを感じながらエイムは言った)

「そうですね。良い家族です。いつか帰省してサーカス団での旅の話を土産にしますよ。きっと喜んでもらえると思います。今までそんなこと考えなかったけれど。ルナのおかげですね」

「どういたしまして。そろそろ交代しなくちゃね。団長を起こしてきてくれる?」


 エイムは2つのことを言えなかった。

 一つはそうして見物に行ったサーカス団で美しくも気高いルナにほとんど一目惚れだったことが入団の強いきっかけになったことだ。もちろん音楽も理由だったが、それだけならこのサーカス団あるいはそもそもサーカス団でない道も考えられた。


 もう一つはもう一つの人生、転生前の話。これはいつか正直に話したいと思った。


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 どうでしたでしょうか? 第1部完了&ハート獲得記念&次は星も欲しいよ祈念ということで閑話としてエイムの入団のきっかけを書いてみました。こういった閑話的なものを書くのは初めてなのでなんとなく書き足りないような気もします。

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