第16話 十二単を着た者

高島は有島を追って走っていた。

「おい……ちょっと待って……」

「うひゃょょょょょょょッッッッッッッッ!!!!!!」

「う、うひゃょ?どういう発音?」

高島か呆れていると、突然誰かの声が聞こえた。

「止まりなさい」

有島は立ち止まって辺りを見た。高島はまさか有島が急に立ち止まるとは思わなかったので、有島の背中にぶつかってしまった。

「おい急ブレーキするな!人間は急に止まれないんだぞ!!!!!!」

「僕人間じゃないのかよ…」

「そういうことじゃないんだよなぁ」

「あの……話して良いd「そういうことだろ。人間は止まらないっつうから僕人間じゃないのかって話」」

「ちょ、話して良いのk「例えだよ………」」

声の主は痺れを切らして、姿を現した。

「人が喋っているときは話すなよ?」

女性が出てきた。

「地球人どもよ、よく聞け……姫が貴様らを案内しろとおっしゃっていた。ついて来い」

「まず名前を名乗ったらどう?」

高島が聞いた。

「地球人に名乗る名前は持ち合わせてないもんでね。お前らは?」

「………………………………」

「………………………………」

「…とにかく来い!!!!!!」

女性は高島たちを連れて、歩いていった。














やがて、部屋の前で止まると…。

「失礼します姫。地球人を2人連れて参りました」

「入ってどうぞ」

襖の奥から声が聞こえた。女性は襖を開けた。

「まだ子供ですが………これでよろしいのですか?」

「いいよ。また見つけたら連れてきて」

声の主はまた女性だった。すごく大きな着物を着ている。

「……………人違いだね…………」

「なんかすごそうなのが来たな」

「……あれってもしかして」

有島は何かに気づいた。

「どうした?」

「あの人の着てる服……十二単じゃね?」

「⁉︎」

「あら、十二単を知ってるの。賢いねぇ」

女性はココアシガレットを取り出すと、口に咥えた。

「1本どうぞ」

「何それ」

「ココアシガレット。本物の煙草じゃなくてお菓子だよお菓子」

「へぇ、月にはそんなお菓子があるのか」

「いやこれ地球のやつ」

「え、そんなお菓子あったんだ」

「いつ頃の?」

「ああそう……まあいらない」

「へぇ、まあいいか」

女性がココアシガレットの先端についている粉を小皿に落としている。有島は今がチャンスと、高島に話しかけた。

「おい、こいつが不士稔が言ってた因縁の敵じゃないの?」

「え、この人が⁉︎でも結構良い人っぽいけど」

「一応不士稔に伝えた方がいいんじゃないか?」

「まあ念のため……しかし勝手に部屋から出ていいのかな?」

「なんの話してるの?」

「いやなんでもない………そうだ、有島、魔法で仲間を召喚できたりしない?」

「…できる」

有島は呪文を唱えた。すると近くに青色のこけしのような体型をした妖精が出てきた。

「不士稔を見つけたらここに来いと伝えて」

妖精は頷くと部屋を出ていった。

「ん?なんかいた?」

「いやなんでもない……………」

「……………………………………何か隠している?」

「いやぁ別にぃぃぃぃぃぃぃぃぃ??????」

「??????????????????」









やがて妖精が帰ってきた。

「お、来た。うん……………わかった」

「どうなの?」

「着くまでに瀕死ひんしにしといてだって」

「いくらなんでも無理だろそれは……」

「とにかくやれだってよ。とりあえず戦うことになるのか?……」

「しょうがない……………か?」

有島は女性に話しかけた。

「すみません……」

「何?」

「…………喰らってください!!!!!!」

有島は手から魔法弾を飛ばした。しかし、女性は軽々と避け、こう言った。

「あら、戦う気かな?別にいいけど……負けて悔しくなっても知りませんよっ」

十二単を着た女性はココアシガレットを吸って吐きながら、扇子せんすを取り出して広げた。

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