第13話 怨高童夢

しばらく海を渡っていると、遠くの方に明かりが見えた。そして、微かにサイレンの音が聞こえた。

「見えてきた。あれが月の都だ」

有島たちは感心した。

「なんだ、意外と発展してんじゃん」

「それな。もうちょっと昔っぽい街かと思ってたけど……東京ぐらいかな?あの感じだと」

「もしかするとそれ以上かもしれないぞ」

「ってか、何でサイレン鳴ってるの?」

有島が聞いた。

「もうすぐわかる」

不士稔が小声で言った。












岸にボートを止めた不士稔たちは、目の前の丘を登った。

「わぁ………」

目の前には、煌びやかに輝いている都市が広がっていた。

「ここが……月の都……」

「ああそうだよ。あ、先行ってて。僕の上司が入り口で待ってるらしいから。あとこの餅持ってけ」

不士稔は高島に餅の入った袋を渡した。

「(おやつの餅かな?)いやでも、君の上司の名前も顔も知らないんだけど」

「名前は伝えておいたからさ、向こうから話しかけてくると思うよ。んじゃ、また後で」

不士稔はボートに乗ってまた海を渡っていった。





「どうする?とりあえず行ってみるか?」

鑰匙間が聞いた。

「えーめんど。勇者ウナギやってたんだけど。帰りたい〜」

高島は行きたくないようだ。

「僕らも行きたくない。何で月まで来たのかも教えてくれないし。ねぇ栩義、そうだろ?」

有島は栩義に聞いた…答えは……。

「行きます行きます行きます行きます行きます」

「⁉︎」

「ちょ、な、何でよ…」

高島は驚いた。まさか栩義が行くと言うとは思わなかったからだ。

「え?なんかあの街発展してんじゃん?もしかするとすごいものが見られるかもしれない!」

「え……(困惑)」

「行こう行こう行こう行こう行こう行こう行こう行こう行こう行こう行こう行こう行こう行こう行こう行こう行こう行こう」

「なんか栩義、鑰匙間化してません?」

「き、気のせいだろう!行くんだったら行くぞ!」

高島はがっかりした。月の都に行くことになったことよりも。

「僕が主人公なのに、影が薄い………」
















4人は都の入り口に着いた。

「近くで見るともっとすごいな」

「入り口に誰かいるぞ。門番かな?」

有島は門番と思わしき人に気づいた。

「すいませ〜ん。なんかこいつがこの街に入りたいって言うんで〜仕方なく来たんですけど〜入れますかね〜」

高島は栩義に指を指しながら門番と思わしき人に言った。

「こんな時に………もう釣られないよ?」

門番と思わしき人は目を細めて笑った。

「釣られる?どういうこと?」

「餅」

「?」

高島たちはわけのわからないことを言う門番に若干引いていた。

「俺は怨高童夢おんだかどうむ。月の都を守るバリア[夢幻壁むげんへき]の主なんだよ」

怨高はそう言うと、餅の入った袋を見せた。

「俺は月の都のつきたての餅で契約してるんだけど、俺自身騙されやすいんだよね。だから部外者でも餅を渡されると、ついつい都に入れちゃうんだよ」

「はぁ、んで今度こそは釣られないと」

「え、つまり入れてくれないの?月の都に」

「そういうこと。じゃあとっととお帰り」

有島たちが困惑してる中、高島はポケットから餅の入った袋を出した。

「そうなのか……可哀想に……僕もよく騙されるんだよね。そのせいでこの餅を貰ってしまったんだ………でもこの餅を食べたら、僕は何もかもおしまいなんだ。君さえ良ければ、この餅食べてくれるか?僕を騙した奴は月の都の中にいるんだ。そいつに復讐しにここへ来たんだ。頼む、通してくれ!!!!!!」

高島は涙を流しながら、餅の入った袋を前に差し出した。

「……そうだったのか……よろしい、ここを通す。復讐できることを願ってるよ」

怨高は餅の入った袋を手に取ると、バリアに穴を開けた。

「さあ、いってらっしゃい。月の都へようこそ」







「よっしゃあ(笑)。うまく騙せたよ(笑)。あの餅はこのためだったのか(笑)」

月の都の中に入った途端、高島は涙を流すのをやめ、入り口で餅を食べている怨高を見て嘲笑った。

高島を見た3人や読者はこう思ったに違いない。

(こいつ性格悪ッッッッッッッッッッッッッッッッ)

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