浮気の残り香『完結』〜消えたその香り〜その8or0


「ピンポーン」

(インターフォンの音)


 音を聞いて誰かがドアを開く。出てきたのはこの家の奥さんだった。


「あの、どちら様…って湧希くん?どうしたの?家族揃って…」


 付き合っていた頃、元カノを家に送って帰った時良く玄関で元カノの母と会っていて覚えられていた。ただ家には一度も入れてもらったことはない。


「実は今日は僕の母が用です!」


 俺がそう言った後、母は軽く会釈して口を開く。


「あの、奥さんのおっとに関する話があります」


母の顔は真剣だった。


 母の言葉に奥さんは勘付いたのか「とりあえず中へ入って」と言い家の中に入れてくれた。


 ここでハハ鉄拳制裁ヒッサツのパンチを繰り出さないのは騒ぎにさせたいためだろう。


 俺達はリビングのソファーに案内され座る。


「・・・・・・」


 ソファーについて一息、母は直ぐに今までの事情を話した。話しの途中、俺は軽く奥さんの顔を見ると今にも人を殺そうな表情でとにかく怖かった。


「ごめんなさい、私本当に子供バカです!」

「勝手に捨てられたと勝手に勘違いして、家族や奥様にご迷惑をおかけしました。」

「本当にすみません、許してくれなくていい。何でもします、お金も払います、勿論私一人でです。」


 母はその場で頭を擦り付けるように地面に付き土下座をしながら謝罪をした。


「・・・・・・」


 。そして直ぐに母に目線を戻し、奥さんも母同様真剣な顔付きで言う。


「貴方のことは後にします」

「今は私の夫からで」


「は、はい…」


 母は申し訳ない感じでペコペコと頭を下げながら言った。


 奥さんは俺達を連れ、家の二階に上がる。そして夫婦の寝室と思わしき部屋に足を踏み入れる。



 部屋に入ると端の方には何故か金属バットやメリケンがあり、そしてベットの方には男が居た。


「コォォォッ」と男はいびきをかきながら気持ち良さそうに寝ている。顔は少しニヤニヤとして、多分良い夢を見ているのであろう。


「起きんかい、何豚みてぇに寝とんじゃボケ!」と奥さんはさっきまでの丁寧な言葉遣いでなく粗い言葉になっていた。


 奥さんはそう言って布団を引き剥がす。そして奥さんの大きな声で男は意識が覚めた。



「んっ、大きくて柔らかいおっぱいは?」


 男の開幕一言目がそれだった。まだ目を閉じている。男は奥さんと俺達が居ることにはまだ気づいていない。


 男は手を伸ばしおっぱいを探る、そして…


「プニッ」

(奥さんの胸に手が当たる)


「あー、あったあったおっぱい」


 男は目を開け、顔をおっぱいにうずめる。


「やっぱおっぱいはええなぁ〜、尻も良いがやっぱ胸だなぁ〜!」


 男は乱雑に胸を揉みまくる。(モミモミ)


「ん?これはEだな、今まで沢山の女抱いてきたから分かる、Eカップと書いて、良いカップと読む!」

「なぁ〜んちって!」


 男は胸に夢中になっていた。


「でもこれ大きいけど硬いんよな、まるであいつの…」


 男は顔を少し上に上げる。その目に捉えたのは黙ったまま不敵な笑みを浮かべた奥さん。それを見て怖くなって目を逸らす男の目に映ったのは俺たち家族だった。


「……あいつ…の…」


 彼は直ぐに全てがバレたことを理解した。

 瞬間男は顔の形が一瞬にして崩れた。

 彼はぶん殴られたのだ。

 彼はもう駄目だと奥義どげざを繰り出す。


「ごめん、今までごめん!もうしないから!金ならある!だから許して!」


 男の言葉に奥さんは携帯を取り出していた。そして写真フォルダーを開き男に見せる。


「お前ドMやろ!」

「この画像、会社に送ったらどうなんか…わかるよなぁ?」

「上司として、この画像がバレるとやべぇよな」


 その画像は手足首を縛られ、口には猿ぐつわをくわえた男の画像だった。


「お前脅しかよ!力なら男の方が強いんだ!今からおかしてやろうか?!」


「私を犯すだって?」

「お前のロマンチック過ぎる告白に私は結婚してあげたろ、あの言葉忘れたのか?」


「え?」


「『お前がヤンキーだからどうした?ずっと一緒にいるよ!どんな事でも俺は受け入れるよ!』って告ってきたじゃねぇか!口だけ一流のクズだな!」


 話を聞き、男は思い出した。奥さんが昔ヤンキーの中でも最強だってことを…


「女と遊んでたから忘れたんか?」

「前した時もうしないって、次したら何でもするからって言ったよな」

「あんたは女を落として人としての価値も落とすクソ野郎だな!お前に惚れた私が恥ずいわ!」



 それから暫く奥さんの説教が続く。そして段々と男はモヤシみたいに体がしぼんでいた。


 そして浮気をした罰の話になる。


「罰が賠償金じゃ甘い!お前の人生ドン底に突き落としてやっから覚悟しな!」

「罰は離婚とお前の金でお前の額と股間に………っだ!」


「え?」

 男は予想外の内容の罰に驚いていた。


「知り合いにそういう店あっから行くぞ!」


 奥さんはそう言って罰の内容で呆けている夫を連れて外に出る。


 そして奥さんは母に向かって言った。


「私から罰はなし」

その一言だけだった。



 後日、俺はもう一度家に訪ねて、奥さんにどうしてかと訊いた。そしたら彼女はこう答えた。


「私の娘が君を傷付けたからってのもあるけど、罰を与えようと思った時、君を見たら少し悲しい顔をしてたからってのが一番の理由かな」

「あと罰は君達がしてくれるだろ、一回目の罰は与える側がスッキリするもんじゃなく受ける側に成長を促すもんだ!私のおっとは何回もしている。でも君の母は初めてじゃない?」

「まだやり直せるよ!」


 彼女は微笑みながら優しい口調で言った。


「まぁその代わり、私の息子の面倒を見てよ!浮気の事であの子塞ぎ込んじゃってるのよ!」


 そう言って奥さんは子供部屋のドアを開けると、塞ぎ込んで泣いている男の子が部屋の端にいた。


 俺はどうしてか不思議とその子に声をかけた。同じ境遇同士なのだろうかは分からない。思わず体と口が動いてしまった。


「ねぇ僕、強く生きるんだ!困ったらお兄さんに相談してね…」

「お兄さんはずーと君の

 

俺はそう言って歩いてその泣いている子の所に行く。


(父さん、今度は俺がこの子を助けるよ…)

   

俺は膝をつき、同じ目線でその子の頭を優しく撫でてやった。


(ありがとう、父さん…、今まで沢山…助けてくれて…)


 俺はその子の目の前で、自分でもわかるくらい、幸せそうに、そして笑顔で泣いていた。





    〜あれから17年が経つ〜


 俺は今34歳。あの後高校をやめて高卒認定を取って同い年のクラスメイトと同じ年に受験して無事第一志望に合格できた。


 仕事は最近出来た企業『グルグル』という所で働いている。それとボランティアで浮気で悩んでいる人達の相談に乗っている。


 結婚もして子供もいる。産まれた時は本当に嬉しかった。俺が生まれた時父さんや母さんもこんな気持ちなのだろうか。


 父が母に与えた罰は実家で9年間過せと言う内容だった。その間携帯やテレビなども使わせず実家が所有している畑で毎日無給で農作業をやらせていた。


 後々母から聞いたがまるで監獄のような生活だったらしい。


 他にも正しい大人になれるように大学にも通わせた。大学の出費は父が2倍にして返すように約束をした。それが賠償金とのことだった。


 賠償金と9年間の農家生活の罰と大学に通わせ更正、そして実家の爺ちゃん婆ちゃんと幸せに過ごせなかった小中学校の9年間、父はそれを母にこなしてこいと命令した。



 んで今俺は奏汰くんの結婚式から帰っている最中だ…


「僕は身体を洗っていただけなんです!」


 ある男が言う。彼は全身裸の状態で警察に捕まっていた。警察に聞くと近所の公園で裸で体を洗っている人がいたとの事で通報を受けて来たということらしい。


 彼の額には『ロリ命』、股間付近に『性病持ち』のタトゥーが刻まれており、何処かしら浮気男に輪郭が似ていた。


 聞いた話、あの後浮気男はドM画像がバレ退社し、タトゥーのせいでどこも再就職できなくなっている。


 可哀想に…


 まぁ所詮だ。家族ではない。そう思いながら俺はまた帰路についた。





       〜家にて〜


「今日母さんママ友と旅行から帰ってくる日じゃない?」


 母さんの初めてにして唯一のママ友、それはあの奥さんだ。


 あれから賠償金の話とかしているうちに仲良くなって今では家に遊びに来る仲になっていた。


 元カノは退学になってから家出をし、今は消息不明だ。


「あー確かに今日やったのぉ」


 父は随分歳をとっていて、既に定年過ぎていた。


「ちょっと電話してみるわぁ!」

「・・・・・・」


「どうだった?父さん」

       

「あー、母さん!」

「わぁ〜ハッハッハッハ!」


 シーーーン


辺りは凍りついた。


 父はギャグで孫達の関心を引くために練習したものの、いざお披露目したところ、関心ではなく『寒心』を引くことになった。


「母さん電話でないのかよ、何してんだよ」


 昔までだったら浮気相手と今絶賛ヒートアップ中なんだろうって考えていた。


 が今ではそんなことは考えることはもう無い。


 何故なら……


「たっだいま~!」

(玄関のドアが開く)


「母さんお帰り!」

「え?何この荷物?」


「お土産よ!」


 そう言って母は俺の隣を通りリビングに足を踏み入れて父親や嫁さん、孫達にプレゼントを渡す。


 『嘘は過ちを作る。そしてその過ちに真摯に向き合った時、初めて過ちを正せる』


 隣を通る母親からはもう『浮気の残り香』

臭い香水の匂いがもうしなかったからだ。



  この話はフィクション…だと良いですね

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

浮気の残り香 FP(フライング・ピーナッツ) @N9768HP

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画