第10章 帝国動乱② 第51話

第51話  帝国の策謀(アリス16歳と半年)


 まぁ金持ちが妬まられるのは世の常だ。だからこその色々な賄賂が必要だったんだけどねぇ。


 オルザルド帝国辺境ズワルド公爵領の領主のラインハルトⅡ世公爵様はウチの親戚筋だ。エルフのお姫様の祖母様が嫁いだ先でもある

 駆け落ちした、お母様がズワルド公爵家の第二婦人の第三令嬢だったのよ

だからエルフ王国の王様とも親戚筋なわけだ。


 そして皇帝のウィンザー家とラインハルトⅡ世公爵様も親戚なんだよ

だからオルザルド帝国王家とも遠い親戚筋になるのかなぁ。


 だからという訳では無いが異例の陞爵の早さも王弟派の妬みを簡単に買った

 まぁ、王弟派の貴族にはポーションの代金で子爵を買った商人貴族と蔑視されたけど金持ち喧嘩せずの精神なんだ、ウチはねっ!


 そんな喧嘩してる暇など無いのがおウチの本当の事情なんだし

 急速に工業化が進む領地に其れに伴い急激に増える人口

 新しい住宅や新しい工房や新規の工場やらだけでも大変なのに

 でっかいお城迄を作ちゃう私という子爵令嬢が居るし

 まぁ私一人じゃ出来無いんだけどね。


 しかも子爵令嬢であるアリス・キルヒアイスは成人(この異世界では15歳)になっても王都の学校には通わないし。王弟派も取り込みようが無いのよね〜

 まぁそれが王都には行きたく無い理由の一つなんだけどねぇ

 だって私、凄く忙しいし魔道工房に魔法大学やら、お城作りだもんね。


 取り込め無いのなら潰してしまえは高位貴族の論理なのよねぇ

それに王妃様に送っている、お肌にとっても良い高級な化粧品はね

 中身よりも入れ物にお金が掛かっているというヤツなんだけど、

中身は化粧品というよりも、お肌に特化したポーションなのよ。

 

 これって非売品だし特許品なのよね。王妃様よりの御下賜でしか手に入らない

という仕組みのヤツなんだ。

 だからその高級感漂よう瓶にはわざわざ王家の紋章入りなんだからね


 そりゃ王弟派の旦那様達は大変よ

 だって王妃様の御下賜の品だから王弟派には中々、手に入らないじゃないの

手に入れろって奥方様達が声高に叫んで王都は大変な騒ぎになったらしいの

 皇帝派は勿論の事、それを中立派に配ったから中立派から皇帝派に鞍替えする貴族も出たんだってぇ〜  女の美に賭ける情熱は恐るべし。


 世の中、お偉方でも奥様に頭の上がらない旦那さんは多いのよ。大変ねぇw

この異世界は酷い男尊女卑だけど、それなりに貴族世界では女性の地位は高い。

 

 だって貴族の場合の結婚相手には貴族が多いもんね

それに跡継ぎを産まなきゃいけない奥方様には、それなりの権力があるし

 奥様の方が高位だとね、そりゃぁ、まぁねぇ大変よ

貴族家の家庭内闘争は常に大変らしいの。


 良くウチの父ちゃん、それで浮気したな。お姫様と駆け落ちした癖に

 まぁそれでキルヒアイス家のウチでのお父ちゃんの地位は浮気してから、

ずっと最下位のままなんだけど。一応、父ちゃん子爵様なんだけどねw

 これはキルヒアイス家の秘密だよ。


 まぁ、高級回春ポーションと王妃様の御下賜の高級化粧品類で王弟派の旗色がだいぶ悪いらしいの。それを狙ってやっているんだから、それはそうよね。


 出る杭は打たれるの諺通りに王弟派の怨みを一身に背負ったのがキルヒアイス領だった訳だけど、実質は辺境の東の外れだし、王弟派の北のアグスタ領しか接して無いしね (嫌がらせは数々あれど)


 王都からは遠いしで直接的な影響や妨害は初めの頃は無かったんだ。

でも王弟派の暗部はそれなりに暗躍してたよ。

 だから子爵領にしては大きめの暗部、諜報機関のA機関が誕生した

伯爵領や王都並み、か、それ以上だと言う噂は聴いた事は有るな

 まぁ、ちょいちょい嫌がらせは受けていたからカウンターインテリジェンスで

豊富な資金を元にA機関が発達したという理由も、ありますけどね。

 

 だけれども工業化に伴う資源探索で金脈が見つかったとなると王弟派もさすがに黙って居られない。しかも開発はウチで収入の半分以上を王家に献上ときた。


 お金はモロ、権力だよね。


 今までは王弟派の方が有利となっていた宮廷の勢力図が皇帝派へと旗色が変わちゃったのよねぇ

 それで堪らなくなってキルヒアイス領をお取り潰しか乗っ取りを狙った訳だ。


 王弟派の起死回生の策、それが第三王子の襲撃作戦だった訳さ。


 王弟派にとって幸いな事に鉱山鉄道の開通式がキルヒアイス領で行われる

そこで招待されている王太子一行を殺害狙いで襲い、上手くいけばキルヒアイス家をも滅ぼす

 王太子が殺害された。その責任を問いキルヒアイス領の取り潰しとか乗っ取りを企めば良いし

 北隣のアグスタ領が王弟派だったから襲撃兵を集めて潜め易い。


 アグスタ領にはスグルト川の西岸10km迄をウチの領内に組み込まれた怨みがあるし。元々放置してた癖にね。後になって難癖付けるのよ、貧乏人は

 特に金鉱脈がスグルト川の西岸、アグスタ領側に見つかった時の騒ぎようは

酷かった。ちゃんと領地として開発許可と開発命令が皇帝の名で出されている

んだから、後から騒いでも、それこそ後の祭りだよ。

 

 まぁ、王家から発表されるまで極秘扱いになっていたのも有るけど。


 スクルド川は海から遡り両岸10kmの幅で上流のカグツチ火山までウチの領地という事で定められてるんだから、ねっ!


 王太子の暗殺が成功すれば、当然、皇帝派の派閥で寄親の辺境伯も連座責任で追い込める。そんな甘い絵図を王弟派は描いた訳なのさ。


 それらの対策は高級回春ポーションやら王妃様下賜の高級化粧品を王都に送り込んでる時点で、もう既に対策済みなんだよ。A機関の創設もそうだし。


 警備計画の詳しい配置と兵力など嘘の情報はそれとなく王弟派に流しているし

装甲列車の防御性能も王弟派に流しているのは大嘘なんだよ。


 王弟派の襲撃場所の特定と兵力量も把握済みだ

 襲撃が始まると共にアグスタ領に侵攻するのは王都の第一親衛騎士団の精鋭と辺境伯の騎士団だ

 アグスタ領との関所になっている砦に隠れている

 アグスタ領内には既にスパイトフル傭兵団の精鋭が潜んでいる

 彼等は猫獣人が多数所属している為に隠密行動には最適だった。


 それに五大神の神殿を王都より分殿させて新たにこの地に建立をしたし

光の教団にすれば潰すべき憎き土地なのである。


 光の教団の敵と言うべき土地、また王弟派の他領にとっては垂涎の農工業や

金鉱等に裏打ちされる強大な経済力が王弟派をクーデターへと狂わせた。


 だがこれは皇帝派のカウンタークーデターとも言うべき物だったのである。


 第三皇太子のヨハン・サライラス・オルザルドと帝国財務相オーエン・バレンシュタイン公爵は帝室暗部と辺境領ラインハルトⅡ世公爵とキルヒアイス家のA機関が共謀して蒔いた大いなる餌だったのである

 勿論、財務相も計画の事は知っている。文官だけど肝の太い人だ。


 


 だから、この華美な見掛けながら実は重武装の重装甲の列車だったのである。


 



 


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