第10章 帝国動乱① 50話

第50話 装甲列車 (アリス16歳と半年)


 式典の色々な挨拶が終わりいよいよ装甲列車への乗り込みが始まる

旧国鉄C62似の機関車の周囲を防弾装甲板で覆った装甲蒸気機関車が物々しい


 その装甲蒸気機関車は機関車が二両が並べて繋がれている

所謂二重連だ。何故二重連かと言えば後述する理由で編成車両が重いからだ。


 スグルト川沿いに上流へ走る鉱山鉄道、当然だが行きは緩い登り坂だ

帰りは楽なんだけどね、ブレーキが熱持つぐらいで、勿論、冷却用の水の魔法陣も抜かり無い。


 そしてその装甲機関車の前には護衛用の先頭警戒車両が繋がれている

 護衛用貨車とは兵員や銃座を設けた車両だ。段差を設けて二段式になった銃座は前後に有り、合計四つ程の銃座がある

 そしてその銃座には防楯の付いた中型のバリスタが設置されている。


 装甲列車の表面は木材が貼られて美しく塗装がされている。が、コレは偽装だ

 下には甲鉄の装甲板が仕込まれているのをカモフラージュしている

だから見掛け以上に防御力が高い。しかも、その装甲板には耐衝撃と耐火の魔法陣が描かれていて防備は万全だ。


 機関車の後ろには客車が二両、続いて二階建ての展望車が繋がれている

前の客車二両は護衛の騎士達や随行員が詰めている車両とキッチン専用車だ

展望車には王子と財務相と辺境伯とキルヒアイス領の関係者が乗り込んでいる。


 二階建ての展望車の高くなった先頭部分には広さが150㎡の展望室になっており

眺望が素晴らしい。その展望室のガラスには特殊な強化ガラスが使われている。

 二重の硬化ガラスの間に弾性クッションとしてのスライムを利用した充填剤が満たされて衝撃耐剛性を上げている。


 衝撃耐性以外には火焔耐性の魔法陣も仕込んであるんだ

 弓矢や新しく開発した銃弾程度では貫け無い、それ程の防弾性能を誇っている高性能の魔法陣も入れたキルヒアイス領特製の特殊防弾ガラスだ。


 こちらの車体も先頭の装甲武装車両と同じく化粧用の木材で隠してあるが甲鉄製の装甲が仕込まれている特殊車両だ。だから重たくて機関車の二重連なんだ。

 二重連は男のロマンだと前世でお兄ちゃんが良く言ってたわ〜

女の娘でも分かるわ〜、その感覚、なんか男性的で惹かれるのよね〜


 ドラゴン程度の火炎ブレスなんかは防せいじゃう様な性能の特殊車両だ

 そんな車体は紫紺に美しく塗装されて王家の紋章が大きく描かれる、隣には控えめにキルヒアイス家の紋章が描かれている (だって相手王家だしね)


 オルザルド帝国の国旗は赤の縁取りで青地と白地の二色旗に金の縁取りのしてある白と青の双頭の鷲が下地の逆の色合いで描かれているのさ

 キルヒアイス家の紋章は紫地にクロスした剣と杖の中央にポーションの瓶を模したイラストが銀色の徽章で描かれている

 紫紺に紫地だから国旗の縁取りをしてこれは銀色だよ (なかなかだよね)


 高気密の車内には魔石発電を利用した照明と空気清浄装置を備えて、冷暖房も完備している快適性もバッチリな仕上がりの客車だよ。


 展望台はラウンジも兼ねていて食事も取れるんだ。クッションの効いた座席はたっぷりとスペースを取って座席の定員は約20名程度だ。


 前の車両の内の一両は警備の騎士達が詰める車両なんだ

 もう一両が調理車で、調理車両には随行員等の詰め所も完備

その二両で高貴な貴族を持て成して警備をする様な仕組みになっている。

 コレは後続の車両との入り口は閉鎖されて通行は出来ないよん。


 何故、別の車両に警備の兵員が詰める様になっているかと言うと、

 この二階建ての展望車の下部には隠し銃座が仕込まれているからだ

華麗な装飾を施されている、この展望車は凶悪な戦闘車両でも有ったのだ。

 

 尚、前部の装甲警戒車、二重連の機関車、展望車をキッチン車両を含む三両編成と、その他、大勢の招待客を乗せる八両の普通客車で最後に後方警戒車の先頭と同じ装甲警戒車が付属している。合計15輌編成の列車だ。もっと繋げるけど警備上の都合で、この編成になっている。


 本来なら王太子一行以外は警備上の都合で禁止でも良かったんだけど、まぁ大人の都合ってヤツだね。

 

 勿論、各車両にはトイレも完備してスライムタンクで汚水処理もバッチリだ。

 八輌編成の客車にもA機関員が招待客に混じって警備している。見掛け以上に防備と警備の硬い15輌編成の列車だった。


 


 何故コレだけの物騒な車両を用意した理由は帝国第3王子ヨハンと帝国財務相のオーエン・バレンシュタイン公爵を囮に使った帝国皇帝の策謀が有ったからだ。


 古くは皇帝ノルン・ウィンザー・オルザルドⅢ世を拝したウインザー家と王弟ヨハン・サウザー・オルザルド公爵とのウインザー家、サウザー両公爵家の確執とそれを取り巻く貴族達の帝国宮廷の権力闘争なのよね

 種族融和政策を取るウィンザー家と人種を全種族の頂点にと捉えるサウザー家ではオルザルド帝国成立時代から仲が悪かった、というお話。


 だからエルフのお姫様だったウチの祖母がお嫁入りしたのはウィンザー家だった訳よ。まぁ、そんなこんなで陰でウチに嫌がらせしてくるのはサウザー家とその一派の王弟派なんだよね。北隣のアグスタ領も王弟派だし。


 王弟を推す貴族の一派に光の教会が支援を与え始めたのが今から20年以上も前の事だった。コレが問題を必要以上に大きくして騒動の元となり権力闘争を複雑にしているのよ。


 そんな情勢の中で出来た新規貴族のキルヒアイス領は経済発展が著しい

天龍、水龍と地龍の巫女がそれぞれ居る祝福された土地

 今までは魔の大森林しか無くて開発のされてこなかった辺境の痩せた土地。


 それが領主の娘が光の儀式で土の女神のシブ・ウルーラの加護が発現してから

大きく変貌した辺境の地。小さな娘が畑仕事を手伝えば大豊作となり。娘の土魔法のレベルも上がって運河まで作っちゃう始末だし、

 前世の知識を利用したアイデア商品がまた馬鹿売れなんだよ

 おまけに水龍の加護まで貰って水の宝珠まで貰ったのが我がキルヒアイス家の大躍進の始まりだったのは皆さんもご存知の通り。


 魔の森の秘密の泉の水(大嘘だしw)を使って作られるという奇跡のポーションが売りに出されて、その販売代金や数々のアイデア商品の特許料や土の女神の加護の有る土地での農業畜産の著しい発展。それらの売り上げで人を募集し瞬く間に村から街への開発は進む。


 親戚筋だった辺境伯とワインベルグ商会の策謀で機能回復ポーション(要は回春剤だ)が品薄の高値吊り上げとなり、入手の困難さと、その高額さも相まって賄賂としての価値を生む。


 何せ高い地位の貴族程、スケベ爺が多い。この異世界では下手に魔法とかポーション等と云う不思議物質が有る為に医学が進んでいない。だから乳児の死亡率が高い、それで高位貴族程、一族繁栄の為に一夫多妻制の普通に子沢山なのだ

(その分、お家騒動も多いけれどもねぇ)

 

 その為の男性機能回復ポーションの需要は高い

ただ単にスケベ爺が多いのよ、とも言うがねwww


 あれやコレやで男爵位を与えられ、直ぐに異例の陞爵をして子爵領へとなったキルヒアイス家、陞爵のついでに魔の大森林の開発を命じられたのよね。


 工業化をする予定だったので鉱物資源を求めて鉱山鉄道を作ってスグルト川の上流を開発したら、そこにあらなんと金鉱脈が発見されたというオチまで、



 今まで辺境だった土地。妬みを買うよね〜 やっぱし




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 大変に更新が遅れてすいません。暫く読み専になってました。

異世界って本当に面白いですねぇ〜


 作者の数程、異世界が在る

 百億の昼と千億の夜が在る様に


 



 




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