第9章 鉱山開拓と鉱山鉄道の開発③ 第49話
第49 王弟の策謀(アリス16歳と半年)
今日は金鉱山まで繋がった鉱山鉄道の開通記念式典だ
実際には金鉱山の砦に資材等を運び人員を運ぶ為の運行は行われていたのだが、
公式には今日が運行初日となる記念式典だ
お城のセントラル駅周辺は警備の騎士や兵士で埋め尽くされていた
駅のホームも初めて見る鉄道や蒸気機関車に驚きキョロキョロしてる招待客で
混雑していた。
招待客の目玉は王都からは王家を代表して今年、12歳になるヨハン・サライラス・オルザルド第3王太子殿下と財務大臣の帝国財務相オーエン・バレンシュタイン公爵が参列していた。遠く王都から馬車に乗って来た彼等だが王太子は初めて見る蒸気機関車に興奮している様だった。勿論、叔父様の辺境伯であるラインハルトⅡ世公爵様も招待客に含まれている。
だがアリスは朝からちょっと憂鬱だった。領主の娘として式典に出なけれならなかったからだ。本来なら社交界デビューの歳でも有り王都の貴族が通う学校に通わなければならないのだが、実際問題としてキルヒアイス領の発展はアリスのアイデアに依る所が大きい。
勿論、ポーション類や缶詰等の保存食品や農産物、畜産物の売り上げだけでも領内の経営は賄えるのだが、現在進行形の鉄道然り鉱山開発然り魔法と複合した工業化然りとアリスの能力とアイデアはこれからもキルヒアイス領に必要だった。
それに貴族になってもアリスは貴族階級というモノが如何にも好きになれないのだ。実際のところアリスは前世で大学まで行っていたので、この異世界での、その知識や頭脳は天才とか賢者と呼ばれるレベルに等しいのだ
本人にしてみれば『普通の大学じゃん』となるのだが、まぁ、この異世界で貴族が通う学校は人材作りと婿候補とか花嫁候補探しの為なので純粋な研究の学徒というのは存在しない。社交界の縮図そのままの学校なのだ
魔法とか魔導具とかは、その道の賢者と言われる者とか、鍛冶屋などの職業は弟子を取る徒弟制度が在るぐらいなのだ。後は騎士になる為に騎士団に入団して見習い騎士になるぐらいだ。だからキルヒアイス領の魔法大学などを含む各種学校はこの異世界では充分に特異な存在だと言えるだろう。
それに婿取りとかお嫁に行くとか、そんな気持ちがアリスには皆無だったので
そんな貴族が通う学校には行く気が無かった
それに前世から物凄い奥手だったし、恋愛体質遺伝子が皆無だったのである
前世でも恋愛経験は無し、今世の美少女に転生したにも関わらず前世と含めて
人生44年で恋愛経験皆無というのもどうかと思うが・・・
ロマンスなんかより、街作り、城作り、自分の知識で農作物の増大(連作障害を防ぐ為の休耕田とか肥料の使い方、作付けの仕方、等々進んだ農業知識は豊穣の女神の加護が無くとも収穫量を増大させたのだが、)それに現在の彼女は魔法と科学を複合させた工業化に夢中だったのである。
『恋愛、何それ、面倒臭い』『結婚って、えっ❗️やだ‼️そんな事出来ない』
(そんな事とは何かなのかは謎である)となってしまうのである
この世界では既に結婚適齢期の彼女はこれ以上目立ちたくは無かったのである
だから社交界とかは苦手だし、貴族の通う学校とかから超逃げていた
でも豊穣の女神の加護に天龍の加護、水龍の加護と地龍の加護と色々とチートな加護のオンパレードで充分以上には目立ってはいるのだが・・・
色々ヤラカシてるとの自覚が本人にはあったかどうかは謎ではあるが
来賓のヨハン第3王太子殿下は初めて見る重厚な工業機器で有る蒸気機関車を見てその逞しさに目をキラキラさせていた。
『うん、分かるよ〜、男の子はみんなメカが好きだもんね〜』
世界が違っても男の子の好みは変わらんな〜
と側に居る弟のトールと同じ眼をしてる王子をニタリと見ていた
その瞳にはちょっと深い闇の笑みが存在している
『ほっ、ほっ、ほ、少年よ。良いだろう。好きだろう、こういうの』
『お姉いさんが、何でも、全てを、優しく教えて上げるわよ〜』
『お父様(国王)に王都まで鉄道が欲しいとおねだりしなさい。グヒヒ』
そう、この色白のぽっちゃり王子を蒸気機関車のダイナミックな動きのファンにして王都まで鉄道を通すという野望がアリスには有ったのだ、はっはっはっ〜
まぁ、大人同士の話し合いではほぼ規定路線ではあったのだが、アリスは暗黒面の変なスイッチがピシッと入ってしまっていたのだ。
試乗の際の説明役と近代化工場の案内役をアリスが仰せ使っているのでメカマニアの暗黒面にたっぷりと王子を仕立て上げるつもりの黒いアリスであった。
そんな事を考えているアリスを他所に式典は粛々と進んでいく
関係各位のとっても、なが〜い、なが〜いお話が進んでいくがアリスの好みでは無いので割愛する。
式典の終わりに帝国財務相オーエン・バレンシュタイン公爵の有難くもなが〜〜いお話が有ったのだが、アリスと第3王子と弟のトールとダベっていた
物凄い目付きで財務相のおじさんが睨んでいたがアリスと子供達はお構い無しに喋っていたのだった。それに第3王子に文句が言える訳が無い。
一応は饗応という形になるのだから。
色々と色んな長い話しが終わって、いよいよ乗車だ
今回の特別列車は装甲列車になっている。表向きの重厚な装甲列車の用途としては対モンスター用で有る。
しかし急速なキルヒアイス領の発展を良く思わない貴族達の襲撃が有る事を諜報組織であるA機関が摑まえていた。
王都より王子が来て襲撃とは大反逆罪である。影で蠢いているのは王弟派だった
もし襲撃が成功すればキルヒアイス領の大失態として突き上げるつもりなのだろう。下手をすれば責任を取らされて領地召し上げだし、後推しをしている叔父様の辺境伯も連座させられるだろう。
そんな隠謀を奇禍として王弟派の排除を一気に行うと第3王子の来訪は囮だった
これは陛下であるノルン・ウィンザー・オルザルドⅢ世と辺境伯のラインハルトⅡ世公爵との乾坤一擲の策謀だった。無論、財務相オーエン・バレンシュタイン公爵も自分が囮である事は知っている。
ウィンザー王家のお家騒動に端を発する大捕物は成功するのか❗️
アリスと第3王子の運命や如何に、風雲急を告げるオルザルド帝国の未来は
次号を待て‼️
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます