第8章 キルヒアイス領開拓記⑧第42話

第42話 光の宝珠の秘密②(アリス15歳)


私ことアリス・キルヒアイスが光の宝珠の材質の秘密を探る事になった

他の人達で鑑定をして貰ったら材質構成に水晶8割と魔石2割が判明したけど残りの1割が分からないとの事だった。それで私の出番って訳なのよ。


手をかざした結果は最悪だった。他の人では分からない材質だった事だろう

アナウンスさんが事実だけを冷静な言葉で述べていく

いつもなら親しみを覚える言葉なのに今回はヤケに冷たく頭に響く

私の頭に響いてきた言葉の内容は次の通りだった


『解析、これは精霊獣の心臓に存在する精霊石です』


『心臓に存在する精霊石⁉️』・・・『心臓に存在する精霊石⁉️』・・・・

何度も、何度も、同じ言葉のリフレインが頭の中を駆け巡る


理解できない、理解できない・・・理解した途端に、崩れる様に床の上に

四つん這いなり膝と手を付いた。


そして私は胃の中のモノを床にぶち撒けた。身体を屈めて、何度も、何度も、

それ程の衝撃だった『心臓に存在する精霊石‼️』とはどういう事なの⁉️


私、アリスやキルヒアイス領には仲間達と言っていい存在

精霊獣から天龍へ昇格したスグルト様、水の精霊獣の水龍であるクリハシくん

そして土の精霊獣のシブ・ウルルちゃん、彼等と同じ精霊獣の精霊石だと‼️


そんな・・・そんな・・・人とはなんと残酷な生き物なのだろう・・・・

心臓に存在する精霊石を取られた精霊獣はどうなるのか・・・

それは人の死と一緒だろう、そんな精霊獣達は魔物と違い人を襲わない

自然の中に存在する精霊として、そこに確かに存在し共存している。


この異世界には自然信仰に近い形で幾多の神々が存在して居ます

自然のその力に対して畏怖しながらも憧憬し崇拝する人々がいて、天と地、水と火と風などの様々な自然現象に神という存在を人々は身近に感じて古来より崇拝され信仰の対象とされて来た神様達。


この異世界の大陸では自然の精霊神として信仰されている神様達が居ます

其々の名は次の通りです。


天(光)の神様は男の神様でアル・バハドルスの名で呼ばれています

地(土)の神様は女神様でシブ・ウルーラの名前で呼ばれています

水の神様も女神様でミズメノ・ミコの名前で呼ばれています

それに火の神様も女神様でヒノカ・ルビヤの名前で呼ばれています

最後に風の神様も女神様でアオス・ヤシンの名前で呼ばれています。


他には天の神様の眷属神としての、闇の男の神様ヤン・ミーカラー様と、

雷の女神様イン・ドーラー様が居ます

そして、それぞれの力の属性を具現化する眷族としての精霊獣達が居る異世界。


そして信仰の見返りとして精霊達は様々な自然の恵みをくれる

或る者は豊かな水、或る者は豊かな地、或る者は爽やかな風、或る者は温かな火

そして天の光等のあまねく自然の恵み、人類に仇なす存在などでは決して無い

それ等、神々の眷族達の精霊石を奪う、なんという悍まい行為‼️


自然信仰と対抗して自然の摂理とは理りを異とする宗教である光の教団

開祖を人とする一神教の光の教団はそれ以外の神を認めていない。


今から1000年前の光の教団の開祖達はなんと悍ましい行為をしたのだろうか

自分達の利益の為、自分達が人々から集金するシステムを作る為に罪の無い

精霊獣達を殺戮して心臓の精霊石を奪い取り出したのだった。


彼等の教義は人種以外の者達を下等な存在として認めないという教えなのだ

根底には多種族への傲慢な蔑視が有り、その差別は邪教の廃止と邪教徒の撲滅という殺戮に繋がる。それはエルフ族、ドワーフ族と獣人族などと多岐に及ぶ

過去に何度も他種族への侵略戦争を邪教徒撲滅の聖戦の名の元に繰り返した国は

光の教団の総本山とも言うべき国のユーンベルト皇国はそんな国だった。


邪教撲滅という彼等にとっての正義の名の元に殺戮戦争を繰り返した国

彼等の教えの手は人種の国の上層部に及び支配層を広げ固めている

蔑視する所以の奴隷狩と称して様々な種族を不幸に堕とした国

彼奴等は敵だ、アリスの脳内では完全にそう認識された。


そんな想いを抱いている間に私はお母様のたわわな胸に何も言わずに抱き締められて介抱されていた、優しくお母様の手が背中を摩ってくれている。


お母様と眼が合った『いったい何が分かったの?』その眼はそう尋ねていた

私は事実をこの部屋に居る皆んなに話そうと決意した


「残りの一割は精霊獣達の心臓に在る精霊石です・・・」

驚きの騒めきが静かな波紋の様に室内に広がる

「彼等は何らかの方法を用いて精霊獣達を捕らえて・・・」

「その心臓石と呼ばれる物を奪ったものと考えられます」

室内を支配するのは沈黙のみだった。


そんな事をされれば『相手は死ぬ』それを理解した沈黙だった。







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