第256話 僕らがお前を倒すんだ



 白髪の鬼、心眼を使う月河げつがさん。


 双子の鬼、一本角で雷を使う北辰ほくしんさん。


 同じく、二本角で風を操る南冥なんめいさん。


 赤銅色の肌を持つ大鬼、怪力の太歳たいさいさん。


 そして、ただの高校生の僕。


 僕はなぜか美紅みくの代わりに鬼達の真ん中に立ち、空に悠然と浮かぶ雪牙丸と対峙していた。


 立ち並ぶ歴戦の鬼達に囲まれてなお、僕は恐れよりももっと燃え立つ気持ちを抱えて彼を見つめた。


 ——雪牙丸。


 その彼が口を開いた。


如何いかなる術か知らぬが、首を落とした者まで生き返るとは流石さすがに驚きじゃ。その秘術と引き換えに見逃してやろうぞ」


 上から目線の言葉に僕らは怒った。


「嘘をつけ! お前の口約束なぞ信じるものか!」


「おうよ、教えた所で術を奪うは必至じゃ!」


 月河さん、太歳さんが罵ると、雪牙丸はニヤリと笑った。


「語るに落ちたな鬼めら。つのの力をではなくてやはり術か」


 雪牙丸は蒼く色の変わった爪で僕を指差した。


「鬼では無いお前が施したな? 生き返りの秘術、われがもらうぞ!」


 その言葉が終わるか終わらないかのうちに、蒼い爪がギラっと光ってやじりのような刃物になって飛んで来た。


 身構えた僕の前に太歳さんが出て右腕の一振りでそれらを振り払う。蒼い爪はバラバラと地面に散って、ジュワッと蒸発する。


「誰が渡すか! それよりも速くお前の首を落としてくれる!」


 いきり立つ太歳さんを見て、雪牙丸は再び笑った。


「かかって来るが良い、雑魚ざこども」


「ぬかしおったな!」


 太歳さんの怒号をきっかけに、彼と双子鬼が飛び出した。





 つづく

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