第253話 さあ、助けに行こう

 立ち上がって、腕組みしながら僕を睨んでいた二人は、月河げつがさんの話を聞いているうちに、次第に態度を軟化させてくれた。


 一本角の方が北辰ほくしんさんで、二本角の方が南冥なんめいさんだと紹介された。正直言って二人とも顔がイイ。


「月河がおらんかったら、信じられぬ話だ」


「うむ。あの鬼姫が其方そなたつのをつかわすとは」


 頭のてっぺんから足の先までジロジロと眺めれて恥ずかしくなる。鬼の戦士である皆は背も高くがっしりとした体躯だからそれと比較したら、僕なんて小さくてヒョロイ子どもだ。


 いかにも頼りなさそうなんだろう。


 すると月河さんが僕の背中をバンバンと勢いよく叩いた。僕は前に吹っ飛びそうになりながらもこらえて踏ん張る。


「おぬしらの心配はよくわかる! しかし今一度の生命を授けてくれた一志かずしをわしは信じる」


 ありがとう月河さん、と思ったけど、途中まで僕を疑ってたよね。しかし今はそんな時ではない。


「お願いします。美紅みくを助けてください!」


 僕は頭を下げて頼んだ。


 美紅の名前に北辰さんと南冥さんはハッとして頷いた。


「そうじゃ、姫を助けるのが先じゃ!」


「行くぞ!」


 月河さんが再び僕を小脇に抱えて屋根の上まで飛び上がった。双子の鬼がその後に続く。


「うわー!」


「静かにせい」


 そうは言われても、急に抱えられたら驚くでしょー!






 つづく

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る