第239話 僕の相棒って言ってもいいのかな



 結局、ごちゃごちゃ言っていた曲垣まがきくんは僕のうちに泊まることになった。僕らとふざけていたのが楽しかったみたいで、さらに帰りたくなくなったそうだ。


 駅前でお泊まりセットを買った後、曲垣くんは自宅に電話していた。


「……わかってる。ちゃんと挨拶するって」


 親にOKをもらったらしい。


 僕は曲垣くんの変化に感動しながら、サムズアップして褒めてやる。からかわれたと思ったのか、彼は一瞬表情を硬くしたが、思い直したように親指を立ててマネして返して来た。


「無表情なのが怖いな」


まがピーらしくていいじゃん」


 オペラも僕の隣で曲垣くんに向けて「イイね」している。


『くっ、わしも混ざりたいのぅ!』


 僕の手の中で黒い布に包まれた——職質されないように隠しているのだ——『鬼丸』がジタジタと動く。


 すぐに参加したがるのが『鬼丸』だ。


 だけどコイツに出会っていなかったら——?


「……この三人が知り合ったのはお前のおかげだよな」


『そうじゃろ? わしも混ぜよ』


「うちに帰ったらね」


『なぬー?』


 僕は『鬼丸』を抱き抱えながら、そっと心の中で感謝した。


 蔵のなかで見つけた黒鞘の刀。


 不思議な縁を繋いでくれた刀。


 コイツが居なかったら、美紅みくにも美羽みうにも会えなかった。曲垣くんやオペラ、それから其角きかくさんや刀鍛冶のみんな——。今になればかけがえのない仲間たちだ。


 そういえば、一番助けてくれたのに直接会えてない人がいる。


 僕の中に現れる『僕』だ。


 他人のような気がしないから僕にまつわる誰かなんだろうけど、はっきりとはわからない。


 わかっているのは僕らの危機に助けてくれる強いヤツってこと。


「頼れるよなぁ」


『わしか? ふふん、そうじゃろ!』


「違うよ」


 ガクッと『鬼丸』がコケる。


「ほら、僕の中にノリ移る人のこと」


『ああー……』


 それだけつぶやくと、『鬼丸』はモニョモニョ言って静かになった。『鬼丸』もきっと僕の代わりに戦ってくれるあの人のことをすごいと思っているのだろう。


 僕が根拠のない自信を持って鼻高々になっていると、曲垣くんが思い出したように口を開いた。


「そういえば、はもう現れないぞ」





 つづく

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