第233話 その身に宿る血縁の


金糸雀かなりあ』の店の真ん中に、レッドは立っていた。正面には腕組みして俯いた『一志かずし』。


「さあ、刀のきみよ。私の反魂玉を壊してください」


『……そうだな。そういう約束だったな』


『一志』は顔を上げると、レッドの後ろで窓の外を見つめ続ける曲垣まがきを呼んだ。


「え?」


『いいからここに来い』


 曲垣は『一志』には弱い。その太刀筋に惚れ込んでいるからだ。


「俺は、この人やユウタのやったことに納得していませんよ」


『わかっている。ただここにいてくれればいい』


『一志』は曲垣をレッドの前に連れて来た。


 それからレッドに話しかける。


佐和さわ曾孫ひまごだ』


 レッドの瞳が大きく見開かれた。


「——佐和の?」


 曲垣は気まずそうに目線を逸らした。


 そのままボソボソと答える。


「……ええ、まあ……」


「では、あなたのお祖母様ばあさまが佐和の娘なのね?」


「……そうなるかと」


「似ているわ」


「どこが!?」


 曲垣が思わずレッドに顔を向けると、彼女は柔らかに微笑んでみせた。


「真っ直ぐなところよ」


 その答えに曲垣は少し頬を染めると、再びそっぽを向く。それさえも微笑ましげに見つめると、『一志』に向かって頷いた。


「友との別れも済ませ、血縁の者とも会えた。もう満足です」


『もう一つ、あるだろう?』


「?」


『本当に君が望んだ別れがもう一つ』




 つづく

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