第229話 レッドの護り



『くそっ! 間に合わなかったか!』


『きゅうきゅうしゃとやらを呼べばどうにかなるのではないか?』


一志かずし』の手の中で『鬼丸』が提案する。


『んなことはわかっている!』


『一志』は捕まえたユウタを追ってくるレッドめがけて放り投げた。レッドは驚いてユウタを受け止めた後、もんどり打ってそのままユウタを抱えて後ろに転がった。


『一志』が周りを見回すと、遠巻きにこちらを見ている人々が目に入った。


『誰か! 救急車を!』


『一志』の呼びかけに数人が慌ててスマホを操作し始めるのを見て、『一志』はその場を離れる。余計な映像まで撮られてはこの時代のに迷惑がかかってしまう。


 街灯の光を避けるように移動しつつ、『一志』は『鬼丸』と連携してユウタの気配を追う。


『あっちじゃ!』


『鬼丸』は気配を見つけると同時に『一志』ごと瞬間移動する。


 しかし——!


 移動した先で、鼻先を掠めるように振り下ろされたレッドの蒼牙に襲われて、『一志』は足をもつれさせて転倒した。


『……!』


「この先、ユウタを追わせるわけにはいかない」


 レッドが繰り出す蒼牙の突きを、『鬼丸』を抜いて受け止める一志。不利な体勢からもなんとか蒼牙を弾き返すと、すぐに起き上がる。


『——なぜだ?』


「なぜ、とは?」


『俺を騙してあの街を離れたのだろう? ユウタの目的は果たされたはずだ』


 目的を果たしたユウタは消えるしかない。それなのに後を追わせない理由とは何なのか?


『一志』の疑問に対して、レッドは意外にも優しく微笑んだ。微笑みながら蒼牙を構える。


「今しばらく、ここは通さない……!」


『……推し通る!』


『一志』の身体から本気の気合いが放たれた。




 つづく

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