第227話 蒼牙VS鬼丸


 ギィン!!


 蒼牙そうがと『鬼丸』がぶつかり合う。


『やめろ! 俺はこんなことのために鬼力きりきを与えたんじゃない!』


「——鬼の刀を持つきみよ。私はどうしてもユウタの希望を叶えなくてはならない。それが私の責務だ。だが——」


 レッドは蒼牙をギリギリと噛み合わせながら目前の『一志かずし』に語りかける。


「——貴方あなたを騙したことは、私が償う。暫し付き合ってくれ」


『やめろ、これ以上彼に罪を重ねさせるな……!』


 一合、二合と切り結ぶ『一志』とレッド。


 深窓の令嬢だった彼女が、こうも巧みに蒼牙を操るのを目にして、『一志』は驚いた。


 これなら自我を失っていたレッドの方が、まだ扱いやすい。ただ暴れるだけのレッドよりも、さらに怜悧れいりで的確な攻撃をしてくる。


 ——それが化け物として生き抜いて来た百年近い年月がもたらしたものか。


 時間にしてわずか数秒。


 その間に『一志』とレッドは何合も切り結ぶ。


 ひときわ大きな音を立ててぶつかり合い、二人は空中でやいばを交える。


 それでいて『一志』はユウタの動向をも気にかけた。その気配をレッドは読み取って薄く笑った。


「優しいのね」


 口調とは裏腹に蒼牙を押し出して『一志』を圧倒し始める。


『今のは優しくはない』


 そう言いながら、刃を滑らせて鍔で受けて弾き返す。弾かれたレッドは空中でくるりと一回転して見せる。


 その一瞬に、『一志』はユウタの元へ走った。





 つづく

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