第226話 追跡


『急げ! 鬼丸!』


『そう言うても、わしゃあおぬしの元へは飛べるが、知らん奴の所へは飛べんわい!』


 怒鳴り合う一人と一振りは、『一志かずし』の目視できる範囲を瞬間移動しながら進んでいた。


 とりあえずスマホで目的の街を表示して方向を確認し、目に入るビルの屋上を目指して移動——そこからまた見える遠くのビルへ移動。


『——待てよ。鬼丸、お前は美紅みくの気配は知っているな?』


『なんじゃい、知っとるわ!!』


『ユウタの反魂玉には美紅の鬼力きりきが入っている。追え!』


『ぬうおおおお——そうじゃったかー!!』


 刀を携えた青年の姿はビルの屋上から飛び立つやいなや、フッと姿を消した。





「おい、いい加減に僕に気付けよ」


 子どもの声にハッとして振り返ると、いつの間にいたのか、黒いキャップをかぶった小学生がいた。


 昼間の襲撃を思い出して、的場まとぼは喉の奥をヒュッと鳴らす。血の気が引いていくのがわかったが、手足は動こうとしてくれない。


 前には赤いコートの死神。


 後ろには黒い帽子の悪魔。


 的場は悪魔の方を凝視した。いや、視線がもう動かせない。やけにゆっくりとした動きで、彼は黒いキャップに隠していたナイフを取り出した。


 エントランスの明かりにギラっと光ると、ナイフの刃は真っ直ぐに的場の腹部へと吸い込まれて行く——。


『やめろぉぉぉぉ!!』


 真上から聞き覚えのある声が落ちて来た。


『一志』だ。


 空中に突然現れた彼はユウタめがけて降下してくる。


「レッド!」


 ユウタが叫ぶのよりも早く、レッドは『一志』に向かって飛んで行く。


 鋼鉄の刃——蒼牙そうがを出して。





 つづく

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る