第219話 ナオヤとタクミの反魂玉


『これは……ナオヤとタクミの反魂玉はんごんだまか?』


 つまみあげると、艶やかな表面がキラリと光った。


 二人の身体が消えた事で、魂の代わりをしていた反魂玉だけ残ったらしい。


『もう一つあるはずだ』


 街灯やネオンの灯りで探そうと、二人が立っていたあたりを見まわす。その視界に、見慣れた運動靴が映った。


 顔を上げると、そこには曲垣まがきが気まずそうな顔で立っていた。


「……」


 無言で手を差し出してくる。


 何かと思えば、彼が押し付けて来たのは反魂玉だった。


 消えた二人の反魂玉が揃ったことになる。


『一志』はそれを受け取りながら、曲垣に尋ねた。


『最期のライブは聴いてくれたか?』


「……ええ、はい」


『そうか、よかった』


「……二人が光になって消えていくのを見ました。あの二人が心残りにしてたことって、歌う事だったんですね」


『そうだな。ナオヤとタクミが願っていたことは復讐じゃなかった』


 今更ながら、もっと早く彼等と出会いたかったと痛切に思う。


「あっ、マガピー! どこにいたの?」


 オペラだ。


 そう言いながら、重いアンプを曲垣に押し付ける。


「お前、オレを荷物持ちにする気か?」


「違うよー、みんなで片付けるだけじゃん」


 ぎゃーぎゃー騒ぐ二人を、少し微笑ましそうに見た後、『一志』は手の中の二つの反魂玉を見た。


 ——これは、鬼力きりきが無いものには必要ない。


 そう思いながら、これがあれば美紅みくと会えるのではないかという考えが一瞬脳裏をよぎる。


『一志』は頭を振ってその考えを追い出すと、反魂玉をポケットにしまった。





 つづく

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