第214話 オペラの腕の見せ所



「じゃーん! なけなしの資金で用意した機材でーす!」


 ギターを探しに行ったオペラ達は大荷物を抱えて戻って来た。


 タクミは四角い箱のようなものを抱え、オペラは黒くて細い金属で出来た道具を持ち、肝心のギターはヨウコが肩にかけて運んで来た。


「まるでヨウコちゃんのバンドみたいだな。黒髪ロングで前髪ぱっつんに真っ赤な唇。いけるよ」


「冗談でしょ。嬉しいけど」


 ナオヤの感想にヨウコもまんざらではないようだ。


『ギターを買いに行ったんじゃないのか?』


一志かずし』の疑問にオペラが人差し指を左右に揺らしながら答える。


「チッチッチ。たかむら君、ライブに必要なものはいろいろあるんだよ。もちろんフツーのギターでもいけるけど、タクミンのはアコースティックギター。アンプもいるの」


『……何を言っているのかわからんから任せる』


 オペラが持っていたのはマイクスタンドだった。


「深夜の路上ライブなら使わないんだけど、すぐにでも歌いたいからこっちにしたんだ」


 ナオヤはタクミと連絡しながら機材を用意させてたらしい。


『金は間に合ったのか?』


 中古でも予算オーバーに見える。


「チッチッチ。篁君、この世にはね、レンタルって概念もあるのだよ」


 オペラ達はライブの機材をレンタルして来たらしい。


『場所は?』


「大丈夫そうだった。許可は取ってないからスピード勝負だ」


 ナオヤはいたずらっ子のように笑い、そして急に真面目な顔になる。


「いつもあそこで歌ってたんだ。……あの夜も、ね」


 不意に見せた真面目な表情に胸が痛む。彼らはあの夜の続きをするつもりなのだ。


『一志』も曲垣まがきに場所と時間、それから一言『彼らの結末を見に来い』と付け加えてメッセージを送った。


まがピー、来るかな」


『来る』


 そうだよね、とオペラは小さくつぶやいた。



 つづく

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る