第213話 二人に必要なものは


「えーっ? ギター?」


 オペラが素っ頓狂な声を上げる。


 ナオヤとタクミが欲しいものがあると言うので聞いてみたら、タクミが使うギターが欲しのだそうだ。


「僕たち路上ライブしてたんだよね。僕がボーカルで、タクミがギター」


「いつの間にか僕……ギターなくしてた……」


 おそらく襲撃にあった時に持ち去られたか壊されたのだろう。


『オペラ、この辺で手に入るか?』


「そりゃあ、基本なんでもある街だからね。こだわりなければすぐにでも」


『頼む』


 するとオペラが手のひらを開いて、差し出して来た。


「お金」


『……あると思うか?』


「ボクだって無いよ」


 見つめ合う二人。


 するとヨウコがバッグからブランド物の長財布を取り出して、二人の間に割って入った。


「みんなで出しましょう!」


 鶴の一言でそれぞれ——ナオヤとタクミも——所持金を出す。


 合計一万八千四円。


 ちなみに一番多く出したのはヨウコである。


『これで購入出来るのか?』


「安い物ならなんとか……」


 タクミが苦笑いしながら答えた。タクミが持っていたのはもっと高価なギターだったのだろう。


 そこは我慢してもらうしかない。


 ヨウコとオペラ、それとギターを選ぶためにタクミ。その三人がダプトのあるビルから出て行った。


 残ったのは『一志かずし』とナオヤ。


 ついでに『鬼丸』。


「ねえ、君」


 ナオヤが口を開いた。


『なんだ?』


「あの無愛想なヤツに——僕たちの歌を聴きに来てって伝えてよ。今日の夕方、この近くの路上でライブするから」


『今日?』


「うん。僕は今、歌いたくて仕方ない。きっとこれだったんじゃないかな? 僕たちが心残りにしちゃったものって」


『そうだな』


『一志』は上着の上から美紅みくツノの感触を確かめながら、心の中で彼女に話しかける。


 ——そうだよな、美紅。





 つづく

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