第212話 よみがえる衝動
何かが胸の中にある。それは躍動感のある動悸——誰もが心の中に持つ衝動。
その様子を見た『
『次は君だ』
タクミはこくんと頷くと彼の前に立った。
同じように光の粒がタクミの中に流れ込んでいく。
「……わ!」
タクミが声を上げる。久々に湧き上がる熱量に驚いたのだ。
「ナオヤ! 僕……」
「わかるよ、タクミ」
「僕、わくわくしてる!」
ナオヤとタクミは手を取り合って喜ぶ。
「やべー、生きてるって感じがすんなぁ」
喜ぶ二人を見ながら、『一志』はほっと一息つく。手の中の
『
『無くなりゃせんわい! 鬼姫のあの強さの
ふふん、と鼻を鳴らすと『鬼丸』はまた得意気になる。『一志』は『鬼丸』の話を聞いて安心したように上着の内ポケットに美紅の
一方、正しい力を注がれたナオヤとタクミは手を取り合って喜んでいる。
「ああ、ヤバい。なんで忘れてたんだろ」
「僕らバカみたい。ギターの事さえ忘れてた!」
ヨウコがその二人を見て、少し頬を緩めた。
「どうやらナオヤさん達は心残りを思い出したみたいね」
「うん、良かったよね」
オペラもほっこりした顔で二人を見ていたが、
「
「俺は納得してない」
曲垣は人を殺めた事を軽く話していたナオヤとタクミに対して不機嫌になっていた。そのまま踵を返すと階下へ降りようとする。
「
「うるさい。俺は認めんし、アイツらに付き合う気もない」
引き止めようとしたオペラにそう言い放つと、曲垣は立ち去ってしまった。オペラはオロオロとして『一志』に助けを求めた。
「
『俺はアイツの気持ちもわかる。放っておけ』
多分、曲垣も高校生の自分も、まだ曖昧な世界を許せないのだ。一度怒りを覚えたものを許すには時間がかかる。
——きっと彼も頭ではわかっている。
正しく使われなかった『反魂玉』のせいでナオヤとタクミの感情や倫理観がおかしくなっているという事に、曲垣も気がついているはずだと思いながら、『一志』は立ち去る彼の背中を見送った。
つづく
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