第209話 鬼丸が気付いたもの

 ——鬼力きりき


 いわゆる、鬼の持つ力だ。その力は鬼によって多岐にわたる。


 その身を硬化させ刃物のようにする。


 青い雷撃を放つ。


 空を飛ぶ。


 姿を消す——。


 そして鬼の誰もがその身に宿す不可思議な力、能力の源——それが鬼力だ。




『さて、今の世に鬼はいるのか?』


一志かずし』が知る限り、最後の鬼が其角きかくだ。その他に知る鬼はもはやいない。鬼ヶ島が閉ざされる前に島を出ていた鬼もいるはずだが、行方は知れない。


『……君はどうだ?』


『一志』は曲垣まがきに向かって尋ねる。曲垣はなんのことか分からずに戸惑う。


「?」


『君の祖先には鬼がいたはずだ。子どもの頃から不思議なことがあったとか、そんな経験はないか?』


「なっ、無い! 俺は至って普通の人間だ」


「普通かなぁ?」


 オペラの呟きにすかさずツッコミを入れる曲垣だが、オペラは器用にかわす。


『鬼丸はどう思う?』


『やや! わしに期待しとるのか! 嬉しいのう』


『いいから。お前にも鬼力はあるのか?』


 頼られた『鬼丸』嬉しそうに喋り出す。


『わしは生体ではないからのう。この身に宿る鬼力を分ける力は無いのじゃ』


 そこへ曲垣が提案する。


「鎌倉時代から呼んではどうだ? あの人……其角さんなら鬼力があるだろう?」


 すると『鬼丸』は鋼の顔をくしゃっと潰して申し訳なさそうな顔をした。


『むう……すまんのう。わしは空間移動は出来るが、時を越えるのはわしの意志では無いのじゃ……』


 時を越えるのは『鬼丸』を抜いた者にとって必要な時である。そしてそれは『鬼丸』の判断では無い。


『しゃが! わしは気づいたのじゃ!』


『鬼丸』はクワっと目を見開くと突然強気に

 なった。周りにいた皆が驚いてビクッと飛び上がる。


『今の時代で鬼力を蓄えている物があるという事に気づいたのじゃ!』





 つづく

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