第208話 一条の光


『さて、本題だ。ナオヤとタクミはどうしたいのだ?』


一志かずし』に尋ねられた青年二人は顔を見合わせる。正直なところ、二人には目標が無かった。


 生前は何か熱い何かを身体の中に抱えていたはずなのに、生き返った今ではそれが何かわからなかった。


「僕らは——復讐を果たしたら『反魂玉はんこんだま』から解放されるって聞いていたんだ。でも結果は違った」


 ナオヤの横でタクミはうんうんと頷いている。ナオヤは続けた。


「結果は違ったけど、僕らはその事を恨んでるわけじゃない。でもわざわざ街を出て、ゆっくり死んでいくってのも選びたくない」


 少なくとも今はね、とタクミが付け足す。


『どう思う?』


『一志』は振り返って皆に聞いてみた。


 曲垣、オペラ、ヨウコはそれぞれ首を傾げて考え込む。


 やがてそれぞれが口を開いて、それぞれの考えを述べる。


「やはり『反魂玉』の破壊ではないか?」


『物騒なのは駄目だ』


「えーとぉ、やりたい事をやってみる」


『それを彼らは忘れている』


 曲垣とオペラが一蹴されて不貞腐れる。特に不満顔のオペラは頬を膨らませて怒り顔だ。


 ヨウコがそのふくれっつらを両手で挟んでつぶす。


「ナニすんのさ!」


「いいこと思いつきました!」


 ヨウコがオペラの頬を挟んだまま『一志』に顔を向ける。その瞳はキラキラと輝いていた。


「『反魂玉』には本来入るはずの不思議な力が入っていないと言っていましたね?」


『ああ、鬼力きりきという』


「では、宝玉の中の間違った力を抜いて、本物の正しい力を入れてあげたらどうでしょう? 正しく機能すれば、記憶も戻るのではないでしょうか?」


 ——それは。


『試す価値はあるな』


 出口の無い迷路の中を抜け出す道を見つけたかのように、その場にいた皆が目を輝かせた。





 つづく

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