第207話 なすべき事を
ヨウコは今までのことを的確に話した。
金髪の青年は聞き終えると、軽く口笛を鳴らして驚きを彼らしく表現する。ヨウコとの立ち話の間にもう一人の青年——黒髪にピアスの相方もやって来て、二人でヨウコの説明を聞いていた。
金髪の方がナオヤ、黒髪ピアスの方がタクミと名乗ってくれた。『
「で、君たちは僕らを退治しに来たってわけかな?」
ナオヤが苦笑混じりに聞いてくる。そんなつもりはないが、と『一志』は返した。
『そんなつもりはないが、君らが復讐を果たしたのに解放されないのが気にかかってな。解放されなければ、君らは
「さあ。そんなこと僕らにはわからないよ」
ナオヤはお手上げのポーズをしておどけて見せた。こうしているのを見ると自分を死なせた相手に復讐した人物には思えない。
「でも、あいつらに会った時、わかったよ」
『何がだ?』
「僕らを殺したのはこいつらだって」
『覚えていたということか?』
『一志』は感情を抑えて問う。彼の後ろで
「顔を覚えていた奴もいたけど、それよりも感覚だね。間違いなく僕らの死に関わったのがわかる——そんな感じ」
ナオヤは屈託なく笑う。
「お前、笑っている場合か?」
曲垣が低く唸る。
曲垣は許せないのだ。例え復讐であっても人を
ナオヤはそんな曲垣を呆れたような目で見て鼻で笑う。
「自分のことになれば、そんなこと言ってられないと思うけど?」
「……同じことが起きても、俺は人の死を笑わない」
『よせ、こいつらには君の思いは届かない。それに俺たちは裁判官ではない』
『一志』は一触即発の曲垣を止めた。言葉を選びながら慎重に話を進める。
——俺の知らない過去でしくじれば、俺のもといた時間に歪みが出る。
『俺は鬼の関係者として、君は
「だけど俺は人の死を軽く扱うことは出来ない! ……あいつだってそう言うはずだ」
——あいつ。
『一志』は曲垣が言っているのが高校生の自分のことだと気がついた。
『……そう、そうだな。高校生の俺なら、そう言ってユウタやマヤ、そしてこのナオヤの言い方には反対するだろうな』
『一志』は曲垣に向かって頷いた。
曲垣もいつもの仏頂面で頷き返す。
『俺たちはこの
『一志』の宣言がその場に響いた。
つづく
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