第198話 赤いフードの下の顔


 一方、残った曲垣まがきは、的場まとざを追おうとしたユウタの前に立ちふさがる。行手ゆくてを阻まれたユウタは怒りをあらわにした。


「邪魔をするな!」


「言ったはずだ。お前のやる事をとめたいと」


「くそっ! レッド、こいつもやってしまえ!」


 曲垣に飛びかかろうとしたレッドの脚を、今度は『一志かずし』が『鬼丸』を差し込んで後ろから絡めとる。足元をすくわれたレッドは地面に打ち付けられて、転がった。


 その拍子にフードが外れる。


 長い黒髪がこぼれ、初めてレッドの顔があらわになった。瓜実顔の涼やかな顔。形の良い眉が切れ長の目を際立たせている。ただ瞳の色が輝く琥珀色で、人外の——例えるなら鬼のようであった。


『女……?』


「あの顔は……」


『一志』と曲垣が同時に呟く。


 長い黒髪に縁取られたその顔は、二人の記憶にある女性の顔であった。


 ——かなめさん。


 それはかつて手帖の中に引き込まれた時に目にした、天目石あまめいし家の長女、かなめの顔だった。




 つづく

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