第191話 ひとつ乗ってみようじゃないの


「——どうする? あいつらの話にのるのか?」


 元ボクサーの黒木くろきに護衛された中年の男性——的場まとばという——の後をつけながら僕と曲垣まがきくんは作戦を練っていた。


 ちなみに僕らの少し後ろをオペラとヨウコさんが腕を組んで恋人同士のフリして歩いてくる。


 ヨウコさんが相手役に選んだのが自分の友達のオペラというのはわかるが、贔屓目ひいきめに見ても女の子同士が歩いているようにしか見えない。


 しかしこれは僕らにも都合がいい。


 いざとなったら二人にはすぐに離脱してもらえるからだ。僕はともかく、他のみんなを危険な目に合わせられない。


 曲垣くんにもレッドとユウタが来たら逃げるように言ってある。彼は不服そうな顔で渋々頷いた。


 そして冒頭の「どうする?」に戻るわけだが、話に乗るも何も、僕は目の前で人が死ぬのは見たくないぞ。


「とはいえ、いつまでも後をつけていくわけにも行かないしなぁ」


 ユウタとレッドが出て来るのがいつになるかわからない以上、無闇にウロウロしても仕方ない。


 それに狙われているという的場も家に帰ったりするだろう。


『良い方法があるぞい』


 僕の手元で『鬼丸おにまる』が喋り出した。


「なんだよ?」


『うむ、こうすりゃ良いのじゃ』


 そう言ったかと思うと、『鬼丸』は突然光った。




 つづく

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