第189話 この街の怪談
「黒い野球帽の子どもと赤いフード付きコートのヤツ?」
「うん、何か知らないかな?」
いつの間にか派手シャツとグラサンの二人は僕の前で正座して僕の話を聞いてくれていた。少し罪悪感。
「そういや、聞いたことがありますぜ。赤いコートの方……一年中あのコートを着てうろついているらしいんですが」
「え? 一年中、あの格好なの?」
「へい。ただうろうろしているだけなんで、ウチの組——じゃねえ、会社とは関わりはねえんですけど」
派手シャツがそう答えると、ちょっと首を傾げたグラサンが、それを否定するような話を始めた。
「いや、ついこの前、ウチの会社に助けてくれって飛び込んで来た野郎がいただろ? ソイツが言うには子どもと赤いコートの奴に狙われてるとかなんとかって」
「ああ! いやしたね、うちのアニキに泣きついて来た奴!」
二人の話をまとめると、小学生くらいの子どもと赤いコートを着た二人組に追われてる男がいるらしい。
「その二人組はユウタとレッドで間違いないな」
「ただ、ねえ……」
グラサンが言い
「なに? なんでもいいから教えて」
「いやぁ、なんて言うか……その二人組とは関係ないと思うんですけどね、赤いコートの幽霊と子どもの幽霊の話ってのもこの街にはあるんですよ」
「どういうこと?」
「この街に長く住んでると耳にするんですよ。昼となく夜となくどこかしらで赤いコートの野郎を目にするんです。同じようにガキの幽霊を見たってのも聞くんですよ」
「それって……怪談?」
「まるで生きてるみたいなんですけどね、何十年も姿が変わらないってのが妙でしょ?」
それは——。
『反魂玉』のせいだろう。レッドとユウタはそのせいで姿が変わらない。ユウタ本人も「二十年前の復讐」と話をしていたのをヨウコさんが聞いている。
狙われている人がいるなら、その人から話を聞けるかもしれない。
「その泣きついて来たって人に会わせて欲しいんだけど、出来る?」
「へ? そいつはちょっと……」
兄貴分への気兼ねから躊躇するグラサンに向かって、オペラが調子良く頼み込む。
「紹介してくれなくていいよ。教えてもらえれば勝手に声をかけるから」
「それくらいならかまわねぇけどよ」
グラサン達は気前よく請け負ってくれた。
つづく
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