第188話 うれしくない再会?


「やっぱり、いつつもあるのは珍しいんだね」


『そうとも言い切れんが……『反魂玉はんごんだま』は『転生卵』と違って何度も使えるからのう。人界に霧散した『反魂玉』が、ここのいんの気に惹かれて集まってくるのかもしれん』


 僕と『鬼丸おにまる』が話し込んでいると、曲垣まがきくんが声をかけてきた。


「おい、そろそろ移動するぞ。いつまでもこんな所に居られん」


「そうだね。——オペラ、ここから離れよう。案内をたの……」


 その時になって僕は初めてオペラの青ざめた顔に気がついた。


「どうした?」


「あ、あの……」


 震える指がさした方を振り返ると、そこには見覚えのある派手なシャツを着た男が二人立っていた。


「よう、。久しぶりじゃねえか」





 そこにいたのは以前、路頭に迷っていたオペラを利用して働かせていた二人組——派手シャツとグラサンがいた。二人とも怒りのオーラを放っている。


「どのツラ下げてここへ来やがった? さんざん世話になっておきながら、逃げやがって」


「いいコつれてんじゃん。一緒に来てもらおうか」


 二人は痛い目に合った恨みを晴らそうとニヤニヤしながら近寄って来た。


 が、その足が止まる。


 派手なオペラから視線を僕に移して、ギョッとする。そばにいたのが僕だと気がついたらしい。


「あ……」


 二人の足が震え始めた。


「あ、いや、すんません。かたなのアニキがいたとはつゆ知らず……」


『刀のアニキ』とは僕のことだろう。正確にいうと僕の中の別のなんだけど、二人はそれには気が付かない。


「えへへ……い、今のは冗談で。ちょいと久しぶりに会ったんで、懐かしくて」


 懐かしくて連れ去ろうとする奴はいないだろうに。


 僕は携えていた『鬼丸』を奴らに見えるように、ずいっと前に出した。途端に二人は後退りしてつまずき、尻餅をついた。


「や! あれから妙なことはしてませんぜ!」


「ええ、ま、真面目まじめに働いてやす!」


 ほんとかなぁ。


 とりあえずビビってくれてるので助かる。


 尻餅をついてなお逃げようとする二人を見て、僕はふと思いついた。


「ちょっと教えて欲しいんだけど——」




 つづく

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