第187話 なぜ反魂玉は作られたのか

「し、死人しびと?」


『なんじゃ、気がつかんかったか? 『反魂玉はんごんだま』に何か別のモノを封じて使いよったに違いないわ』


 待て待て、『鬼丸』の話をまとめるとこうなる。


 やいばまじえたレッドは正真正銘の鬼力きりきの入った『反魂玉』で甦った『何か』で、そばにいたユウタの方はそれとは違う力を入れた『反魂玉』で甦った『死人』ということになる。


「——ってこと?」


うとるぞ、一志かずし


「そもそも『反魂玉』って何のためにあるの? 『転生卵てんせいらん』はわかるよ。自分の複製を生み出すためのものだろう?」


『うむ、そのとおりじゃ。『反魂玉』は死んだ者と対話をして心残りを消す為のものじゃな』


 そういえば美紅みくもそう言っていた。だが具体的なことはどうするんだろう?


『死んだ者との対話というたろう? 仮初かりそめの命を与えられた死者は術者の問いに答えるのじゃ。例えば死に際に食べたい物があったとかであれば、それを叶えてやる。この世に未練が無くなった死者はあとは天に昇ってゆく』


『鬼丸』はすごくわかりやすい例を言ったあと、ニヤリと笑った。


『元々はな、愛する妻が亡くなった鬼が創り出した物よ。妻に会いたいが為に秘術を使い、甦った妻としばしの間、仲良う過ごしたそうな』


 なるほど。それを聞けば納得いく。


 死んだ大事な人とあと少し共に過ごしたい人や、伝えたい言葉がある人が使うんだろう。


「じゃあ、ユウタ——子どもの死者の方は?」


『ありゃあ、『反魂玉』という器に陰の気を吹き込んだ物じゃろう。誰でも出来るわけではないが、出来ないわけでもない。それにこの街は、それに必要な邪気に溢れとるわい』


欲望の町・歌舞伎町だけあって、マイナスの気でいっぱいなのかもしれない。


「なんとなく理解したよ。それともうひとつ教えて」


『なんじゃ?』


「あの子どもは『反魂玉』が五つあると言っていた。そんなにある物なの?」


『なんと! ありる話じゃが……今の時代でよく集めた物よ』


『鬼丸』は驚嘆してはがねの目を丸くした。





つづく

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