第181話 いったい誰が鬼なのか

金糸雀カナリヤ』に案内してくれるヨウコさんとオペラの後ろをついていきながら、僕は曲垣まがきくんと話をしていた。


「僕、一つ気が付いたんだけど」


「なんだ?」


「レッドって呼ばれてた赤いコートの人のことなんだけど、もしかしてその人が鬼なんじゃないかな?」


「どうしてそう思う?」


「ヨウコさんが目撃してたでしょ。手に大きな刃物みたいなのが五本あったって。あれは美紅みく蒼牙そうがって技と同じだと思う」


「なるほど」


 それならなんとなく辻褄つじつまが合って来る。


 性別不明の赤いダッフルコートの人物が、鬼なら、手元にあった『反魂玉』に鬼力を込めてヨウコさんに渡すように出来る。


 目的はよくわからないけど、危険な街に暮らす新入りに『御守り』として持たせたのかもしれない。


 よくわからないと言えばもう一人、ユウタの存在だ。


 本人の話を信じるなら二十年前から姿を変えずに復讐のためにこの街にいることになる。


「着いたよ」


 オペラが僕らに声をかけて来た。


 立ち止まった僕らの前に古びた雑居ビルが静かに建っていた。まだ昼間だから騒がしくないのだろう。


「と、とりあえずお店の前まで行こう」


 僕らはヨウコさんの話に出て来た『金糸雀』に様子を見に行くことにしたのだ。


 ゴミが散らかった階段を登りながら、僕はオペラの背中に話しかける。


紫堂しどうは鬼が関わってるって知ってて僕らを巻き込んだの?」


「うーん、そこまでは考えてなかったけど、ヨウちゃんから送られて来た画像の——ハンゴンダマだっけ? それがピーちゃんの持ち物にぶら下がっていたのに似てたから、かなぁ?」


「おい、それは俺のことか?」


「持ってたでしょ? ピーちゃん」


 へらへらと喋るオペラは背中を向けているけど、曲垣くんからものすごい怒りのオーラが出ているのに気が付いているだろうか?


 背後から斬られても文句は言えないぞ。




 つづく

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