第179話 『反魂玉』の力とはなんなんだろう


「鬼がいるなら会ってみたいけど……」


 果たして美紅みく其角きかくさんのように僕らに対して友好的であるかどうかはわからない。


 それに『反魂玉はんこんだま』をヨウコさんに渡している点も気になった。


「ユウタって子は、この『反魂玉』をどうしろって言ってたんですか?」


「ユウタは『死にかけたら飲み込め』って言ってました。死の瀬戸際で飲んだら、命が助かるって」


「…………」


 僕は『反魂玉』を見つめながら、手帖の世界へ入り込んだ時のことと、美紅の独白のこととを思い出していた。




 ——「最後の心残り叶えるためにかりそめの命を与えてくれる物だが……そうだな、これは穴を穿うがったために力を失っておる」



 ——震える血まみれの手でそれを掴むと、要はそれを口元へ運ぶ。使い方など知らない彼女は本能のままそれを身の内に入れたのだ。



 ——障子が破られる大きな音がして、中から黒い獣の様な影が飛び出した。四つ足のそれは目にも止まらぬ速さで宙を舞うと、中庭を飛び越えて向いにいた父と客人とを一撃に引き裂いた。



 ——『転生卵』は使用すると無くなるが、『反魂玉』は鬼力さえ補充すれば何度でも使えるのだと美紅は補足する。



「………」


「どうした?」


 曲垣くんが心配そうな声をかけてきた。だけど僕の頭の中は目まぐるしく過去の映像と美紅の言葉とが入れ替わり立ち替わり動いてまとまらない。


「……つまり……この『反魂玉』は本物で……鬼力きりきが込められているから……再利用出来て……それで……」


 三人はぶつぶつとつぶやく僕をじっと見つめている。そんなことを気にせず僕は考えをまとめようと頑張った。


「……それで……それを口にしたかなめさんは化け物みたいになって……だから、死に際にそれを飲むと——」


 ——化け物として甦る。




 つづく

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